江戸前を標榜する「江戸前芝浜(えどまえしばはま)」。以前は「太華」という店名でしたが、2021年に移転リブランドし百名店に選出。場所は芝公園駅から徒歩5分ほどで、私の愛するハンバーガー専門店「マンチズ バーガー シャック」のすぐ近くです。
店内はテーブル席が2卓にカウンターが7席。カウンターといってもシェフが内側で調理しているわけではなく、風変わりなレイアウトです。
海原大シェフは東京都出身。「日影茶屋」や「心米」「米福」など東京の和食店での経験が長く、古い文献をもとに江戸料理を研究されているそうです。ところで江戸料理って何?
江戸前と主張するだけあって東京の日本酒が置かれています。いずれも1合千円強といったところで、この手の和食店としては一般的な値付けでしょう。
まずは豆。お味噌が江戸の何とかというやつだった気がしますが、豆でした。鮎をザっと揚げ、南蛮漬けテイストで頂きます。おつゆの塩気と鮎に苦味が心地よく溶け合い、ビールが進みます。
カツオは銀皮造りで。身の溌剌とした味わいだけでなく、皮の食感やその近くの脂も楽しむことができます。これは日本酒ですな。マコガレイとサザエのお造りは煎り酒で頂きます。「煎り酒」とは醤油が流行する前に使われていた江戸の調味料なのですが、醤油で育った私としては少々物足りなく感じました。
鮎の塩焼きは2匹。外食の多い人生を送っているため、この時期は鮎を食べる機会が多く、やや食傷気味です。もちろんこれはお店に責任はなく私のライフスタイルに起因する問題です。
ナスはシンプルな調理および調味であり清澄な味わい。こういう料理をおうちに常備しておきたいものです。
これまでの軽やかな料理から一転、重量級の揚げ物です。具材は鴨であり力強い味わい。他方、揚げがディープフライすぎるきらいがあり、若干の胸焼けを覚えました。お食事は白ゴハンにおかずがいくつか。白米は硬めに炊かれておりサクサクとした食感でとても美味しい。左上のお魚(スズキ?)をバラしたオカズはサッパリとしつつも不思議と味が濃くゴハンが進みます。
デザートは寒天にスグリ。これは何でだろう、私の口には合いませんでした。
以上のコースが16,500円で、それなりに飲んでお会計は2万円強といったところ。暴騰に暴騰を重ねる東京の和食店の中ではお値段控えめではありますが、何とも地味な芸風であり説得力に欠けています。なんだかんだいって私のマインドはギャルなので、味も盛りつけもある程度の華やかさは欲しいなあ。
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日本料理は支払金額が高くなりがち。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- 乃木坂しん ←肝臓を整えてからどうぞ。
- かどわき/麻布十番 ←トリュフ!トリュフ!トリュフ!
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 割烹 新多久(しんたく)/村上(新潟) ←魚は新鮮さが全てではない。
- 一本杉 川嶋(いっぽんすぎ かわしま)/七尾(石川) ←能登半島にゴールデンルーキー現る。
- 御料理 一燈(いっとう)/福井 ←福井に来る機会があれば必ず予約を入れましょう。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 馳走 卒啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵/藤沢 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?