中目黒から歩いて10分ほどの住宅街にある「BISTRO INOCCHI(ビストロ イノッチ)」。店名は恐らく猪口玄洋シェフの苗字から来ているのでしょう。パリのビストロ「Le Beaujolais d’auteuil」で腕を磨き、「タテル・ヨシノ」や「ラ・トルチュ」を経て2018年に当店を開業。
コンクリート打ちっぱなしながら不思議と温かみのある内装です。しかしながら、たまたまかもしれませんが客層がイマイチですね。手を叩いてゲラゲラ笑うグループが2組もおり、店からの注意は特になし。ビストロだから仕方がないと言われればそれまでですが、つまりそういうお店です。
カヴァが1杯付く「熊本天草特選ディナーコース」を注文しました。グラスワインは千円前後から用意されており、良心的な価格設定です。グラスワイン用にボトルが結構開いており、クラシックなものからモダンなものまで充実したラインナップなので、グラスで色々楽しむと良いでしょう。
アミューズは毛ガニ。甲殻類特有の強い旨味が酒を呼びます。トップのジュレやソースにもカニのエキスが活きており、存在感のあるひと品です。マグロとお野菜のミルフィーユ。マグロをナスやキュウリ(だっけ?)と共に層に組み合わせたひと品。なのですが、全体としてまとまりがないというか、ミルフィーユ状になってはいるもののバランバランな印象を受けたのが残念。
パンはフォカッチャとバゲットの2種。いずれもシンプルな仕様であり、ジュワっとしたフォカッチャが私好み。
スペシャリテの「50種の季節野菜と穀物のテリーヌ」。見目麗しく撮影会が始まること間違いなし。なのですが味は中くらい。先のミルフィーユと似たような方向性であり、色々と組み込まれているものの一体感は感じられませんでした。例えば「新華(しんか)」のアレなどは気の遠くなるような種類の食材を用いながら完璧な調和を感じさせるので、ついつい比べてしまいます。
お魚料理はイサキ。このイサキは美味しいですねえ。表面はバリっと思い切りよく焼いた食感で、身そのものはムッチムチの弾力。付け合わせも凝っていて、本日一番のお皿です。肉はあかうし。こちらもパワフルな素材であり、赤身の逞しさ脂身のリッチさいずれも楽しむことができる逸品です。濃厚な赤ワインソースも負けず劣らずパワフルです。
デザートはタンカンやレモンなどのテリーヌにバニラアイスクリーム。執拗にジュレ状のものをテリーヌ型で固めるという芸風で、シェフは心底こういった調理が好きなのかもしれません。
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デザートはタンカンやレモンなどのテリーヌにバニラアイスクリーム。執拗にジュレ状のものをテリーヌ型で固めるという芸風で、シェフは心底こういった調理が好きなのかもしれません。
紅茶で〆てごちそうさまでした。以上を食べ、グラスワインを軽く飲んでお会計はひとりあたり12,000円。イサキや赤牛などの素材の良さを考えればリーズナブル。
ただ、ネット上の口コミに「コスパ」という表記が頻出しており、冒頭の客層の悪さ含めてコスパ厨が集まるお店になってしまっているのが残念。であれば3千円のランチで良かったかなあというお気持ちです。まずはランチでどうぞ。
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目黒は焼鳥やトンカツ、カレーにラーメンと生活に密着した飲食店が多く、そのいずれのレベルも高い。地味ですが豊かな食生活が約束されている街です。
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- レストランユニック(restaurant unique) ←ジビエが自慢。
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- 鳥しき ←焼鳥界のレジェンド。
- LAND(ランド) ←目黒のカレーはコチラでキマリ。
- 薬膳スープカレーシャナイア(Shania) ←でもスープカレーならこっち。
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- とんき ←80年の歴史は伊達じゃない。
- タイ料理 みもっと ←ここはガチでやばたにえん。
市や区など狭い範囲で深い情報を紹介する街ラブ本シリーズ。2015年の『目黒本』発売から約4年の年月を経て、最新版が登場!本誌は目黒に住んでいる人や働いている人に向けて、DEEPな目線で街を紹介するガイドブックです。