日本一高いビル「あべのハルカス」のお膝元にある「焼肉はんべゑ」。焼肉店としては日本初のミシュラン星付き店を目指すと宣言しており、星を獲得するまでは「スターゲット割」なる値引きを実施するとして話題となりました。
阿倍野の路地裏にある雑居ビル2階なのですが、店内は思いのほか(失礼)高級感があり、また入ってすぐの肉の詰まったショーケースにテンションがあげぽよです。カップルであれば厨房を囲んだカウンター席へ、半個室のテーブル席もいくつかあって、様々な用途に活用できそうです(写真は公式ウェブサイトより)。
まずはキムチ。白菜にキュウリにチャンジャにと選り取り見取り。写真は1人前で、グループで訪れても1人前づつ丁寧に盛り付けてくれます。酸味よりも甘味が支配的であり、後続の焼肉のタレ含め全体的に甘味に寄せたお店なのかもしれません。
肉刺しは3種から選択することができ、私はハラミ肉の刺しでお願いしました。筋肉質で鉄分を感じる力強さがあり、ああ、やっぱ生肉はうめえなあと思わずため息が出ます。
サラダにはケールなど味が強く苦味が感じられる葉物野菜を起用しており大人の味わい。コッテリとしたドレッシングがタップリとかかっており、酒が進むサラダです。
特上黒タン。エレガントな味わいながら程よく厚みもあって旨いタンです。
タン、続く。昆布締めにして熟成させたタンにタレのタン。昆布締めは面白い試みですねえ。何もつけなくとも程よく旨味が感じられ、焼肉の可能性を広げる逸品です。
こちらはハラミにサシたっぷりの何だっけな。同じジャンルの食材とは思えぬ味覚の対比であり、宇宙人にブラインドで食べさせても、どちらも同じビーフだとは信じてもらえないでしょう。
季節の焼き野菜。なのですが、いったん蒸してくれているので、セルフで軽く焼き目を付ける程度でOKです。焼肉における焼き野菜は火を通すのが難しく黒焦げになってしまうことが多いので、この工夫は大いにアリですね。
ホルモン盛り合せ。きちんと1人前づつに盛り付けてくれ、部位ごとに丁寧に説明してくれるのが有難い。焼肉の終盤のホルモンって、ごっちゃに盛り付けられて味付けもぐっちゃりしてて何やわからんパターンが多いですが、その課題を鮮やかに解決してくれました。
コムタンスープが美味しい。牛のエキスが溶け込んだスープだけでも美味しいのに、ホロホロと崩れゆく柔らかな肉塊が堪りません。これにライスをぶち込んでも旨そうである。
〆のお食事は牛丼もしくは冷麺からの選択式で、私は牛丼を注文。これまでの焼肉とは調理のベクトルが全く異なり、煮詰めたすき焼きと言うべきか牛しぐれ煮というべきか、いずれにせよ美味。濃いめの味付けに卵黄のトロリとした甘味が良く合います。
デザートはパインシャーベット。シャーベットと言いつつも口当たりは滑らかで、上質なジェラートのような品の良さが感じられました。
以上のコース料理が1万円ポッキリ。酒も千円を切る飲み物が殆どなので、つまり大変素晴らしいお店です。これだけの質および量の焼肉料理を食べて、「よろにく」のような今風焼肉よりも全然安いとは悪い冗談としか思えません。ハルカスのマリオットに泊まった際のディナーの候補としてどうぞ。
- ろばたやき山ろく/山鹿市(熊本) ←熊本の奇跡
- 炭火焼肉 久(きゅう)/秋田駅 ←秋田の奇跡
- 焼肉江畑(えばた)/ 北野白梅町(京都) ←牛肉文化圏京都における代表的焼肉屋
- 静龍苑(せいりゅうえん)/清澄白河 ←ベスト・ヤキニク・レストラン
- 焼肉いぶさな/参宮橋 ←味も値段も最高峰
- カウンター焼肉専門 焼肉おおにし/恵比寿 ←核心を突きっぱなし
- 肉匠堀越/西麻布 ←世界で最も白トリュフを食べた漢
- 王十里(オージュリ)/銀座 ←銀座で焼肉ならいつもココ
- 炭火焼肉 やまもと/石垣島 ←個人的に世界で最もリーズナブルな焼肉屋
- 牛蔵/富士見台 ←個人的に世界で2番目にリーズナブルな焼肉屋
- やさい村大地/赤坂 ←胃の8割方を占めるのは野菜
- 金竜山/白金高輪 ←食べログ焼肉1位4.37、その座席は数ヶ月先まで争奪戦
- 龍苑(りゅうえん)/川崎 ←普段使いの焼肉という意味では最高峰の美味しさ並びに費用対効果
寺門ジモン監督の焼肉映画。焼肉文化についてここまでシリアスに描けているのは監督の焼肉に対する並々ならぬ拘りに因るのでしょう。焼肉業界の有名店や有名人も沢山登場するので、焼肉通を標榜するのであれば必修科目の1本です。