広尾駅すぐの商店街入り口に開業した「EAT PLAY WORKS」。インスタグラマーを始めとするインフルエンサーたちが事務所を構えるシェアオフィスとして人気であり、1-2階がレストランフロア、3-4階が会員制ラウンジ、5-6階がオフィスという構造です。ちなみに私の知人は「フォロワー数が少ない」という理由でハブられ、すぐに引き払っていました。
「名店のセカンドラインが集結!」のような触れ込みの横丁であり、前回は広尾の人気イタリアン「メログラーノ(Melograno)」の姉妹店「Taratatà(タラタタ)」にお邪魔しましたが、この日は「レフェルヴェソンス(L'Effervescence)」の弟分である「ビストロ ネモ (Bistro Némot)」にお邪魔しました(写真は公式ウェブサイトより)。
あくまで飲食モールであり数多くの店舗がひしめき合っているため、例えば当店からはオシャレなBGMが流れているのにすぐ後ろの焼鳥屋からは懐かしのJ-POPがバリバリで、独特の雰囲気です。
小瓶のハートランドが800円、グラスワインは千円前後から始まり、このあたりの酒場の相場からすれば妥当でしょう。
根本憲仁シェフは前述の「レフェルヴェソンス(L'Effervescence)」のスーシェフを務めた方であり、運営会社の独立支援制度を活用して当店を開業したそうです。店名の通り当店はあくまでビストロで、良くも悪くもレフェル感は全くありません。
まずはパテアンクルート。この規模のビストロで、このような七面倒臭い料理をアラカルトで用意するとは見上げた根性です。肉は鹿肉主体で中にはフォアグラも。力強い鹿肉とフォアグラのコッテリ感が良く合います。ウフマヨのクレープ包み。ウフマヨとはウフ(卵)のマヨネーズ和えでありビストロでの定番料理なのですが、それをクレープで包んでお洒落なソースと共にモダンに仕上げました。濃厚な卵黄の味覚と力強い酸味のソースの対比が心地よく、シンプルな料理ながら隠し切れないプロの香りを堪能できるひと皿です。
メインはブイヤベースをお願いしました。オーソドックスなそれとは一味違って、何と山椒を強くきかせています。ピリっとした爽やかな辛味が意外に良く合う。具材はヒラメにエビにホタテにイカ。いずれも主役を張れるほどのクオリティであり、とりわけ厚切りのヒラメの旨味には心を打たれました。デザートはテリーヌドショコラにジャージー牛のアイスクリームをトッピング。こってりと濃厚なチョコケーキにうっとり。散らしてあるカカオニブの食感もアクセントとなりリズムが生まれます。アイスクリームはショコラに負けず劣らず濃厚で、これまたアクセントに塩を散らすなど心憎い演出です。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は1万円を切りました。おおー、この料理のクオリティでこの支払い金額は実にお値打ち。「雰囲気やサービスはどうでも良くて、とにかく料理だ!」みたいな価値観の方にはベストなフランス料理店と言えるかもしれません。個人的には上質なフランス料理をサラっと居酒屋感覚で楽しめるのが嬉しい。
「レフェルヴェソンス(L'Effervescence)」は開業当時は大好きなレストランのうちのひとつだったのですが、年を重ねるにつれこねくりまわしすぎて迷走しているように感じ、すっかり足が遠のいていたので、つまり何が言いたいのかというと、きっと私はクラシックなフランス料理が好きなんだと再認識しました。
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広尾は初デートに良い街です。謎にハイセンスな雰囲気と下町的な親しみやすさが同居する。飲食店も都内トップクラスの名店が比較的リーズナブルな価格設定に落ち着いています。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ) ←この迫力はやはりフランス料理でないと到達できない。
- ア・ニュ Shohei Shimono ←フレンチをベースとした旨いもの屋。
- Alternative (オルタナティヴ) ←おもろくておいしい料理。
- レストラン アラジン ←記憶がハッキリと残る料理。
- レストランひらまつ ←何度も何度も訪れているのに美味しい。
- マルゴット エ バッチャーレ(Margotto e Baciare) ←あれだけのトリュフ料理とキャビアを食べてこの価格というのはリーズナブル。
- おでこ(au deco) ←フランス料理を食べ込んだ仲間たちでどうぞ。
- コントワール ミサゴ(Comptoir Missago) ←とにかく融通のきく旨いもの屋。
- ヨシダ ハウス(YOSHIDA HOUSE) ←日常に寄り添う究極の普通。
- ポンテ デル ピアット (PONTE DEL PIATTO) ←抜群に旨くてそんなに高くない。
- リストランテ ペガソ(PEGASO) ←接待や綺麗なデートにうってつけ。
- ラ トラットリアッチャ(La Trattoriaccia) ←令和のビスボッチャ。
「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。