サムズセーラーイン 国際通り店(SAM'S SAILOR INN)/牧志(那覇)

2022年11月に「サムズアンカーイン イーアス沖縄豊崎店」という鉄板焼専門店でパフォーマンスの炎が客に燃え移り、大火傷させてしまうという事故が起こりました。可燃性のある液体(酒?油?)を定められた容器を用いて管理しなかった点や、技量が未熟なアルバイト店員が調理を担当していたことが原因として挙げられているようです。
運営元企業の親会社(?詳しい資本関係は知らん)である「株式会社フジオフードグループ本社」は公式ウェブサイトにお詫びに言葉を掲載した上で、「この度の原因となりましたフランベにつきまして、長年サムズで実施しておりましたが再発防止の観点から中止し、二度と行わないことといたしました」と宣言しています。
さて、事故の現場となった「サムズアンカーイン イーアス沖縄豊崎店」は何日かは休業したようですが、同じサムズレストラングループの他店舗は全く変わらず営業を続けていました。私の感覚だと一旦は全店舗を休業し安全点検を行い、安全が確保されたと認められた店舗から順次営業を再開するものだと考えていただけに、かなり神経が図太い企業体のようです。
一体どういうつもりで営業しているのだろう、と、怖いもの見たさで「サムズセーラーイン 国際通り店(SAM'S SAILOR INN)」にお邪魔してみます。

客船を模した内装はクオリティの低いディズニーシーのよう。ソファはビリビリに破れスポンジが剥き出しになっており、なるほど意識低い系であることを隠そうともしていません。
従業員の殆どは外国人であり日本語があまり通じず、ハワイの「田中オブ東京」に来たかのような異国感を覚えます。衛生状態が心配なので瓶ビールを注文するのですが、「瓶ビールハ無イ、ボトルビアーシカ無イ!」と謎かけのようなセリフを浴びせられ面喰らいます。じゃあそのボトルビアーをお願いします、グラスは2つでとオーダーすると、ボトルが2本・グラスが2つでやって来ました。
さて何を食べようかとメニューを開くのですが、メニュー表がボロボロに破れ油が跳ねており、なるほどこういうところだなと得心します。事件となった炎のパフォーマンスについてはマジックで黒塗りされているものの、何とも雑な検閲です。どうせ黒塗りするなら火柱の部分もそうするべきだと思うのだけれど。
コースに付随する「東インド風カレースープ」。たしかにスパイスの風味は感じるのですが、全体的にモッタリとした口当たりであり、全然美味しくありません。クノールのカップスープのほうが余程上質でしょう。
サラダも付帯しドレッシングを4種から選ぶことができるのですが、日本語での説明が覚束ないため、いったい何味がやって来るのかヒヤヒヤものです。なお、サラダの品質については写真から察して下さい。
そうこうしているうちに調理担当のニイチャンがやって来ました。入れ墨が首までバリバリです。やはり日本語が不確かで注文内容も間違って把握しており、改めてメニュー表を用いて指差し確認する必要があります。

途中、フレアバーテンディングよろしくコショウを放ったり回転させたりするのですが、何度も何度も失敗しガチャガチャと床に落としたりするので衛生的とは言えません。またこのニイチャンだけが下手というわけではなく、他のテーブルの調理担当も似たり寄ったりの技術なので、冒頭の事故も起こるべくして起こったと妙に納得してしまいました。
覚悟していた通り調理技術もゴチャゴチャで、タマネギは黒焦げでした。ただし黒焦げ部分を選抜して私のほうに寄越してきてたので、レディファーストの理念は浸透しているようです。
私は衛生面を心配して「ミディアム」を要求したのですが、連れは攻めて「ミディアムレア」でオーダー。2人分をごちゃ混ぜに焼き始め、先に盛り付ける側を「ミディアムレア」、後に盛り付ける側を「ミディアム」とする管理のようで、ラーメン屋で麺カタメを注文する感覚に似ています。
肝腎の味わいですが、これが結構イケます。スープとサラダと焼き野菜、エビが5匹にステーキが150グラムで5千円程度という価格設定からすればリーズナブル。都心のホテルの鉄板焼は客単価数万円があたりまえということを考えると悪くないディールかもしれません。
さて冒頭の事故現場であるガーリックライス。「火山焼き」については「二度と行わない」と宣言されていたので、鉄板の上でグズグズと混ぜ合わせるだけです。出来損ないのガーリックピラフですが、ニンニクの風味と肉汁を吸ってそこそこ美味しい。まあ、ニンニクを多用した料理は何でもそれなりに美味しくなるものです。
衛生面や日本語が通じにくい点など不安を抱えながらの食事でしたが、5千円かそこらの食事としては悪くないクオリティに感じました。少なくとも観光客を相手にする一度きりの関係としては良心的とも言える食材選びでしょう。

残るは安全性ですね。冒頭に記した事件につき、責任を負うべきなのは店舗ひいては運営会社であることは議論の余地はありません。しかしながらSNS全盛の現代、もっと派手な料理を、もっと過激なパフォーマンスを、もっと刺激的な絵面を、という風潮が強まっていることも否定できないことも確かです。スカイダイビングやバンジージャンプのように、食事前に一筆書かせるレストランが出現する日も近いかもしれません。

もうインスタ映えとかやめようぜ。プレゼンテーションも大切だけど、美味しいことには敵わないのだから。

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