宮古空港から車で15分ほど。さとうきび畑を抜けた先、砂山ビーチほど近くにある「Grand Bleu Gamin(グランブルーギャマン)」。言わずと知れたギャマングループが手掛けるオーベルジュであり、木下威征シェフは月の半分以上を当店で腕をふるっているそうです。
私はギャマングループのレストランを白金時代から愛用しており、現在の本店である恵比寿「AU GAMIN DE TOKIO(オーギャマンドトキオ)」で宮古島への出店の話を伺ってからお邪魔することを心待ちにしていました。土台はフランス料理ですが、目の前の鉄板でライブ感あふれる調理を進めるがギャマン流(写真は公式ウェブサイトより)。なお、当館は5室のみのスモールラグジュアリーホテルであり、ゲストは宿泊客が主力ではありますが、ビジターでの利用も可能です。我々は他所に泊まっており車でお邪魔したためアルコールは楽しめませんでしたが、グラスワインは千円台~と、お店の格を考えれば良心的な価格設定でしょう。
前菜はカニ。カニの身はもちろんのことカニミソがこれでもかと投入されており、やはり当館に宿泊しお酒と共に楽しまなかったことを後悔しました。焼茄子も加わっているのか香ばしい風味も見受けられ、何なら日本酒が欲しくなる味覚です。
地元の野菜を一旦グリルしマリネしたもの。目を瞠るのは中央に鎮座するブッラータ。ストラッチャテッラ(中のクリーム)の濃厚な乳脂肪と野菜の逞しい味わいがよく合います。
パンはシンプルなバケットにオリーブ、ライ麦。いずれも都心のグランメゾンで食べるそれと同等のクオリティであり、私は宮古のパン事情に明るくはありませんが、きっと宮古で一番レベルが高いのではなかろうか。またボルディエのバターは2人で1パッケージで残った分は持ち帰りOKというイカれた気前の良さ。移動の関係上、今回は持ち帰りが叶いませんでしたが、宮古在住者は上質なバターを入手するために当店を定期的に訪れても良いかもしれません。
タラとその白子、アワビ、紅芋のフリット。米粉でカラっと揚げており、サクサクと軽い口当たりです。沖縄のその辺の天ぷらやぁーとは立ち位置がまるで異なる料理です。
豚肉のコンフィをクレープに包み、北京ダックのようにして楽しみます。豚肉の独特の風味が強く、またソースは思いのほかスパイシーであり、フランス料理というよりもアジアのストリートフードのようなニュアンスを感じます。
お口直しはキウイのコンポートにお茶の風味。お口直しながら構成要素が多く、複雑な味覚です。
メインは北海道産黒毛和牛のフィレ。序盤から目の前の鉄板で丁寧に丁寧に調理されており、ついに自分たちへと提供され胸熱。ひとりあたり200グラム近くあるのではないかと思う程の特大サイズではありますが、ギトギトした脂は一切なく、また酸味の効いた冷製のソースがたっぷりのせられており、スイスイと食べすすめることができました。
〆の炭水化物にカーチョエペペ風のリングイネ。チーズのシンプルな旨味に黒コショウの爽やかな風味。イベリコ豚の生ハムのシュっとした塩気と、心安らかな締めくくりです。デザートは5種類からのチョイスであり、我々は別々のものを選んで途中で交換こしました。こちらは地元の黒糖を用いたレーズンバターサンド。いわゆるお土産のレーズンサンドぐらいのサイズかなと考えていたのですが、サンドイッチ級のポーションでびっくらこきました。バターは冒頭のボルディエを使っているのかなあ、ミルク由来の豊潤な脂の風味が強く、お腹いっぱいスイッチがガチンと入った瞬間です。
こちらはスペシャリテのフォンダンショコラ。仄かに温かくジュワーとした舌ざわりであり、カカオの風味はどこまでも濃厚。
以上のコース料理が税サ込で1.8万円で、お酒を飲んでも2.5万円に収まるという寸法で、バカ高い割にパっとしないホテルばかりの宮古島においては大変良心的であり、この支払金額でこのクオリティの食材をお腹いっぱい食べることができることを考えればお値打ちです。
一方で、「6 (six、シス)」のように海が見えるわけでもなく、宮古島の食材を多用しているというわけでもないので、恵比寿の店をそのまま宮古島に持ってきたという印象を受けました。「レヴォ(L'evo)」の海版みたいなのを期待している方は少し違うかもしれません。あくまでギャマン流のギャマン料理です。
次回はお酒とバッチリ合わせてキメたいので、宿泊で訪れたいと思います。宿泊者限定の朝食も興味深い。
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