恵比寿 えんどう

恵比寿駅の西口を出て坂を上がったビルの最上階にある「恵比寿えんどう」。キムチの美味しい「韓国食堂 入ル 坂上ル(いる さかあがる)」と同じビルです。訪れるのは2年ぶりで、いつの間にやら食べログの百名店に選出されていました。
カウンター8席のみの小さなお店です。大箱のフランス料理と違ってきちんとした鮨屋はシェフがきちんと全ての料理に関与してもらえるのがいいですな。

遠藤記史シェフはご実家がお鮨屋さんで、18歳から25歳にかけてはイギリスにサッカー留学し、現地のクラブチームでもプレーしたという興味深い経歴。帰国後は銀座「鮨 水谷」六本木「鮨さいとう」広尾「長谷川稔」などの超有名店で経験を積んだそうです。
乾杯はビールで、その後の日本酒は店主にお任せ。新政酒造のものを中心に組み立てて下さり、こんなに多種多様な新政を揃えるのは日本でも当店ぐらいでしょう。というか、新政ってこんなに色んな種類のお酒を造っていたんだと驚愕するラインナップでした、
アンキモは濃厚と思いきや、意外にも口当たりが軽く、クリームチーズのような食感です。味もクドクドしくなく、バゲットに塗ってシャンパーニュと一緒に楽しみたいくらいです。
お凌ぎ的な位置づけでしょうか、蕎麦がやってきました。これが、旨い。有名な蕎麦屋と同等かそれ以上の味わいであり、コース料理のうちのひと品が専門店のレベルを超えちゃうってどうなの。
鰻。思いきりの良い炙りでありクリスピーな食感。ハイパー鰻せんべい的な魔力があり、少量ながらお酒が良く進みました。
キュウリは神経症的に細かく包丁が入っており、柑橘主体で調味されています。こういった匠の技術を堪能できるは外食の美点であり、キャビアとウニを爆盛りしてインスタ映え、みたいな鮨屋は反省するように。
のれそれ。アナゴの稚魚であり、ポン酢や酢味噌などで食べることの多い食材ですが、当店では何とうどんのように仕立てて楽しむという、楽しい試みです。
にぎりに入ります。早速マグロと潔く、赤身の旨味たっぷりに鮨の本懐を楽しみます。
続いて中トロ。先の赤身に比べると旨味や酸味がまろやかになり、品の良い脂を堪能できました。
ガリは歯ごたえを残すタイプであり私好み。シャリはお米それぞれの粒を感じつつも、ほどよくしっとりとした弾力があり、強く印象に残りました。
じっとりとした旨味を湛えるコハダ。酸味はトゲトゲしくなく円みのある味わいです。
キンメダイ。このにぎりは美味しいですねえ。煮付けで食べることの多い魚であり、それはそれで大好きなのですが、こういったエレガントな食べ方は高級鮨店ならではの愉しみです。
エビ。バカみたいなサイズではありませんが凝縮感があり、濃厚な甘味と旨味に満ちています。
カニあんかけ丼的なひと品。シャリよりもカニのほうが多いという嬉しい状況であり、反則級の美味しさです。甲殻類アレルギーじゃなくて本当に良かった。
イワシはジュブジュブとした脂を湛えつつ、メタリックな味わいで目の覚める美味しさです。どうしてイワシは安魚扱いされているのだろう、こんなに美味しいのに。
イカ。さらりとした舌触りにエレガントな味わい。細かく細かく包丁が入っており、するすると食道におちていく滑らかさです。
赤貝。こちらも上品なサイズ感ですが、王道の味わい。貝って鼻から抜けて香りが良いですよね。
アナゴは口中でサラリとほどけていきます。存在感のある味覚ながらも決してくどくない、バランス感覚のあるアナゴでした。
マグロをミンチにしてたっぷりの海苔と共に手巻きで頂きます。シャリ少な目タネ多め海苔もっと多めという贅沢な配合。
カンピョウ。こちらもしっかりとしたカンピョウ量であり、時折ズバっとワサビがきいているのが心地よい。しみじみとした心地でフィニッシュです。
ハマグリのお椀で〆。ごちそうさまでした。

2年ぶりの訪問でしたが、やはり美味しい。にぎりが美味しい。SNS全盛の今、ここまで真っ当で、ややもすると地味なにぎりを出すお店は珍しく、味に自信がある証左なのかもしれません。ウニやキャビアを山のように盛り付ける幼稚なトレンドに辟易している方は是非どうぞ。間違いなく美味しいです。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。