目黒の人気イタリアン「アンティカ・ブラチェリア・ベッリターリア(Antica Braceria Bell'italia)」が三田へ移転。不動前にも関連店舗がありましたが、レストランの移転に合わせて統合。加えてワインの醸造所「ワインマン ファクトリー」も併設するという面白い試みです。
8,500円のプリフィクスコースをお願いしたのですが、食前酒にツマミの生ハム、ミネラルウォーター、食後のコーヒー、税サ全てが込みという明朗会計。ダマであがりに千円課金する鮨屋に見習って欲しいところです。
井上裕一シェフは渡伊中にゴージャス系からカジュアル系まで様々なタイプのお店で経験を積み、帰国後は品川「アロマクラシコ(Aroma Classico)」でシェフを務め、2012年に目黒で独立開業。現在に至ります。
プリフィクスコースなので、何を食べようかと連れと相談するのですが、その間に食前酒と生ハム、グリッシーニが供されます。何この仕組み最高やんか。しかも食前酒にはシャンパーニュも選ぶことができ、何て気前の良いお店なのだろう。「甘海老とブッラータ スパイスとビーツ味噌」。甘海老の甘味とストラッチャテッラ(ブッラータのクリーム部分)のコクが良く合い、味噌の風味とも調和します。さっそくお酒の進む逸品です。
パンがめちゃんこ美味しいですねえ。自家培養の発酵種を用いており、素朴なのにしみじみ旨い。噛みしめる程に複雑な味覚が湧き出てきます。
「活け〆穴子のフリット 蕗の薹とバルサミコのマルメッラータ」はザクっと肉厚な穴子の食感が印象的。蕗の薹とバルサミコと合わせるセンスも素晴らしい。こちらは注文はしていませんが、オマケでお出し頂けました。ヒラメとアンキモを和えた逸品で、日本酒が欲しくなる味わいです。土台にはシイタケのフリットも置かれており、和のニュアンスを感じさせるひと品です。
「聖護院カブと地蛤のスープ 春菊のニョッキ」につき、こちらも和食のような方向性なのが面白い。カブの柔らかい甘味にハマグリの旨味が響きます。
こちらもオマケでお出し頂けました。カモを藁焼きしたもので、スモーキーな香りにガチっとタフな鴨の噛み応えがグッド。京人参とミントを用いたサラダも洒落ており、店内の明るさが増す美味しさです。
こちらもオマケで、、、ってオマケが多すぎて嬉しい悲鳴。プリフィックスと言いつつ全種類が出てくる勢いで、最初からたくさんワインを注文しているのが功を奏したのかもしれません。燻製したメカジキの食欲をそそる味わいに、小麦と卵の風味豊かなタリオリーニが良く合う。
「真鱈白子のタイアリン トリュフバターソース」が絶品。バターの屈託のないコクが細麺のタヤリンに良く絡む。白子のトロリとした舌ざわりに芳醇なトリュフの香り。本日一番のお皿です。
エゾシカが入っているとのことで、メインディッシュとしてお出し頂けました。真っ赤なお肉でパワフルな噛み応え、と思いきや思いのほか繊細な食感であり味わいもエレガント。脂の部分はこちらが主役かと思うほど主張のある味覚であり、楽しみは尽きません。
ワインのボトルに余裕があったので、チーズの盛り合わせをお願いしました。フルムダンベールにコンテ、マンステールとフランス特集で、イタリアのチーズを一切出さないところが面白い。
デザートにつき、私はティラミスを注文。これでもかというほどのチーズの量が印象的で、これは飲めるティラミスだ。乳脂肪たっぷり背徳的な味わいです。
連れはブリュレなのですが、生地の部分にたっぷりとカカオを導入しておりチョコプリンな装い。ジェラートにはレーズンが組み込まれており、何とも豊かな甘味です。
食後の飲み物にはハーブティーをチョイス。お茶菓子としてフィナンシェも付いて来、このフィナンシェが実に旨い。料理全般は当然に美味しいとして、こういった焼き物までもレベルが高いのが素晴らしいですね。
以上を食べ、さんざん飲んでお会計はひとりあたり2万円弱。一般的な飲食量であれば1万円強あたりに着地する見込みであり、良心的な支払金額です。
今回は1階のカウンター席でコース料理を楽しみましたが、2階席であればアラカルト注文も可能であり、バル使いとしても活躍しそう。次回は2階で旨いツマミを楽しみながら、当店で醸造しているワインを愉しみたいと思います。
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日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。