カンパニリズモを標榜し、地産地消を通り越して自給自足100%を目指す「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ (OSTERIA ENOTECA DA SASINO)」。その取り組み姿勢が脚光を浴び「情熱大陸」でも取り上げられ、食べログでは百名店に選出されています。
店内はテーブル席が20席ほど。この手のレストランで子連れOKというのはかなり珍しいほうでしょう。
笹森通彰シェフは弘前出身。東京やイタリアの名店で腕を磨いたのち、2003年に当店を開業。当店だけでなくピッツェリアやガレッテリア(ガレット専門店)も順次オープンし、現在は鶏を飼い野菜を育てチーズやワインまで造り、もはや料理人という枠組みを超えて活躍しています。
せっかくなので自家製ワインのペアリングでお願いしました。日本産のワインとしては中々の出来栄えですが、1万円というのは割高に感じました。例えばカーブドッチの「TRAVIGNE」ではワインペアリングが4千円であり、いち消費者としては色々と考え込んでしまいます。
アミューズは焼き茄子のタルトにトウモロコシのスープ、自家製の生ハム。焼いた茄子特有の香りがとても良い。トウモロコシも驚くほど糖度が高く、生ハムの穏やかな塩味も日本人の味覚にフィットします。
自家製のブッラータ風チーズを用いたカプレーゼ。チーズが美味しいのはもちろんのこと、トマトの鮮やかな甘味にバジルの爽やかな香りが心に残ります。
真イカ。透き通るような甘味が味蕾に心地よく、生クリームのコクやムール貝由来の旨味も食欲をそそります。ラルド(脂身の生ハム)のコッテリ感溢れるアクセントも楽しい。
シェフが釣ってきたブリをスモークしたひと品。これはもう、文句なしに美味しいですね。脂が乗りつつも身の味わいはしっかりとしており、このまま丼にしてガツガツ食べたいくらいです。アマダイに白ナス。一転して上品な料理であり、タイのエレガントな風味に白ナスのトロっとした舌触りが良く合います。美味しいだけにもう少し量を食べたかった。
サザエは冷製のパスタで頂きます。冷製にしては珍しく麺太目であり、冷製パスタとしての新機軸を見た気がしました。サザエのコリっとした食感も楽しい。
牛頬肉と舞茸を用いたリゾット。米よりも肉のゴロっと感が強く、上質なビーフシチューを食べているかのような気分です。
メインは馬肉のカイノミ。馬肉と言えば熊本の専売特許と考えられがちですが、青森県も古くから馬産地として発展してきた経緯があって、馬肉を口にする機会が多い。馬肉特有のガッシリとした風味があって、なんとも頼もしい逸品です。
デザートは和栗を用いたモンブラン。中にはアーモンドを用いたアイスが組み込まれて品の良い甘さに思わず笑みがこぼれます。名産の白イチヂクも添えられており、本日一番のお皿でした。
しっかりとしたお茶菓子とお茶を楽しんでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコースにワインのペアリングと炭酸水をお願いしてひとりあたり3万円弱。うーん、ちょっと高いなあ。味については申し分ないのですが、現在に至る経緯や自給自足を目指しているストーリーなどを知らないまま臨むと割高に感じるかもしれません。
もちろん私はこういった世界観や取り組み姿勢に価値を認める人種なので楽しめましたが、あまり食に興味がないものの何かの機会でたまたま弘前を訪れ、せっかくだから街いちばんのレストランを、みたいな方には割高に感じるでしょう。情報も食事の一部として捉え、しっかりと予習してから臨むとより楽しめるお店です。グルメに理解のあるお友達と共にどうぞ。
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