相変わらずピカピカのキッチン。厨房が片付いている店は大抵美味しい。10人を超えるゲストをワンオペで捌きつつ、この清潔度を保つのは並大抵の仕事量ではありません。
いつも通り香港のクラフトビールで乾杯。このあと白ワインを1本に赤ワインを1本頂き、つまり散々飲みました。私は和食や中国料理にワインを合わせるのをあまり好まないのですが、当店の料理には不思議とフィットします。
ゲストが揃うとバババと調味を開始するシェフ。当店はこのライブ感が堪らないですね。ホテル系の中華はバリ高いくせに前菜は作り置きということが多いので、やはり当店は素晴らしい店なのだ。シャッキリとしたレンコンに複雑味のある干し肉。酒が進むツマミです。
揚げたての春巻き。まさに揚げたてで発火しそうなほどに熱い。中にはキノコがたっぷりで、そのエキスに満ちており実にジューシー。ハフハフごっくん美味しいよう。
カブと白菜のスープ。シンプルな食材からは考えられないほど複雑な味覚であり、筆舌に尽くしがたい旨さです。おや、牡蠣も入っているぞ。でも牡蠣のエキスだけでこんなに味覚が豊かになるのかなあ。
アズキハタ。私にとってあまり馴染みの無いお魚ですが、むっちりとした弾力がありつつ実にジューシー。シャキシャキとしたネギとも良く合い、ソース(?)についても曖昧なところが全くありません。
ゴハンもお出し頂けるのですが、いわゆるコシヒカリ的ベクトルとは全く異なり、程よく水分が抜けておりサクサクとした食感。香りも高く示唆的で、先のソースを優しく受け止めます。
広東白菜のニンニク炒め。ごくごくシンプルな料理ですが、シャッキリと心地よい仕上がりで心地よい箸休めです。
ハムユイと干しエビを用いた豆腐料理。ハムユイ(咸魚)とは塩漬けにして発酵させた魚のことで、アンチョビ的な塩気と旨味が楽しめるブツです。なんともややこしく込み入った味覚であり病的な快感。日本人が普通に日本で暮らしていたら絶対に楽しむことができない味覚でしょう。
豚の三枚肉をバーガー的に頂きます。コッテリとした豚の脂に良く行き届いた味付け。一緒に挟むお野菜もたっぷりで、手づかみでガブリむしゃむしゃと楽しいひと品です。
熊野地鶏をぶった切り。入店時に天井から吊るされていた丸鶏を、中華鍋の中でジャージャーと油をぶっかけコンガリと仕上げます。全く奇をてらわない真っ直ぐな味覚です。
漬物チャーハン。スープも豆腐料理もそうですが、やはり複雑で奥深い味わいです。こんなに素朴な料理なのにどうしてこんなにも旨いのだろうか。
もう少しお腹に余裕があったので、担々麺も頂きました。コリオリの力が作用しているのか旨そうなスープが程よく渦巻いており、そして実際に旨いです。先のチャーハンと担々麺の専門店としてスピンオフしても大成功間違いなしでしょう。
カボチャのココナッツプリンに紹興酒風味のアイスクリームでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上を食べ、かなり飲んでお会計はひとりあたり2万円。終始チャクラが開きっぱなしであり、それでいて全てがさり気なく自然。客層も上手くコントロールされておりまさに紳士淑女が集う店。好き嫌いの枠におさまらない、私にとって必要なお店です。
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