「Pan Mee(パンミー)」という料理をご存じでしょうか。漢字で書くと「板面」であり、その名の通り麺を板状に伸ばしてカットする中国南方の麺料理です。その「板面」がマレー半島に渡って魔改造され、なんやかんやでクアラルンプールのB級グルメの代表格にまで成長してしまいました。
今回は「板面」の人気チェーンのうちのひとつ、「Jojo Little Kitchen」へとお邪魔します。クアラルンプールにおいては「KINKIN」というチェーンが最も有名ですが、この「Jojo Little Kitchen」はクアラルンプールの中心地には無く、郊外にいくとチラホラ見かけるという、駐在員の中でも知る人ぞ知るパンミ―グループです。パンミ―グループって何?
メニューの数は非常に多く、フレーバーだけでも数十種類であり、それぞれに汁そばか混ぜそばか、麺の種類は3種類あって、それに加えてサイドメニューと、恐らく1兆通り以上の注文の組み合わせが考えられます。ちなみに食材に豚肉を使用しているためマレー系(イスラム教)のゲストは見かけず、中華系や外国人系が多い気がしました。
いずれの麺も1杯300円程度であり、気が大きくなって2人で3杯も注文してしまいました。お金持ちです。お椀のスープが2杯付いてきたので、汁そばには別皿でスープが付随するという仕組みなのでしょう。
こちらは「Fried Pork」フレーバー。かなりの量のチャーシューがトッピングされており、頭の部分だけで酒が飲めてしまいそうです。汁なしの「Thick(粗面)」を注文したので、きしめんとまぜそばが悪魔合体しての登場です。麺にグニグニとコシがあり、讃岐うどんに通じる力強さがあります。タレはやや人工的な塩辛さを感じますが、まあ、1杯300円のジャンクフードと考えれば悪くありません。一番人気の「辣椒板面」。その名の通り辛い辛い麺であり、このメニューに限っては汁なししか選択肢が無く拘りが感じられます。麺は「Tear」という刀削麺的なタイプを選び、これが大正解。口当たりはツルツルながらもちもちムチムチとした噛み応えで、とにかく麺が美味しい。かなりの辛さなので、半熟卵を混ぜ込みながらセルフでマイルドに仕上げていきましょう。
こちらは「伝統板面」で、その名の通り当店のスタンダードナンバーでしょう。こちらは汁ありで注文したのですが、日本語では何とも表現し辛い奥行きのある複雑性が感じられ、人種のるつぼであるクアラルンプールの懐の深さを感じました。
汁なしに付随するスープは恐らく魚介類がベースとなっており、発酵系のテクニックもテクっているのか、和食に方向性は近いけれども決して和食では表現できない何かを感じます。オマケのチリソースは結構辛く、また煮干の唐揚げ的なブツも興味深い試みです。以上の麺がそれぞれ1杯300円程度であり、これはちょっと大変素晴らしい費用対効果です。チェーン店ながらこの味わいの深みとラインナップの豊かさには舌を巻く。仮に当グループが日本に進出した際、日本のラーメンチェーンは太刀打ちできるのかと深く考え込んだランチでした。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。