四万十市は中村の高台にある孤高の一軒宿「なごみ宿安住庵(あんじゅあん)」。全9室のみの、日帰り温泉や未就学の利用は断る小さな宿です。もともとは1964年に「ホテル中村」として創業し、2003年に現在の形へとリブランドオープンしました。
食事はロビー階のダイニングで頂きます。大広間ではありますがグループごとに襖で仕切ってくれ、また、テーブルとイスでの食事なので現代人にとって使い勝手は良いです。酒は安く、居酒屋とそう変わらない価格設定です。地元の日本酒や焼酎も豊富に取りそろえられており、せっかくの機会なのでどぶろくにチャレンジ。味は好きなのですが、食事には全然合いませんね。もちろんこのミスチョイスはこのような選択をした私の責任です。
名物の「めおと⽫鉢」。高知名物の大皿郷土料理「皿鉢」を少人数向けにアレンジしたものであり、おひとり様向けの仕様もあるそうです。ただしネーミングについてはポリコレ的に突き上げられる余地があります。
全ての料理を紹介するには私の睡眠時間が足りないので、ポイントを絞ってお伝えします。まずは代表選手のカツオのたたき。高知県民のソウルフードであり、議論の余地のない美味しさです。うなぎ蒲焼。「四万十川優化イオンうなぎ」という、四万十川で特殊な技術を用いて養殖したブツだそうです。ただ、調理法は私好みではありません。高知特有のベタっとした食感に仕上げるタイプであり、甘味もコッテリと強い。まあこのあたりの好みは人それぞれでしょう。
お造りはタイ・カンパチ・アマエビ。いずれも歯を弾き返す弾力があり、素材の味が濃い。脂もムチムチでナイスカロリーです。
追加料金プラン(?)でお願いした四万十牛ステーキ。年間70頭ほどしか生産されない希少な和牛だそうで、四万十川支流の清らかな水と地元の稲わらでスクスクと育っているそうです。しかしながら、こちらも鰻と同じくベタっとした調味であり、好みが分かれるところでしょう。連れは美味しい美味しいと瞬食していましたが、私は炭火で網焼きして塩コショウとワサビで食べたいなと思いました。
なぜか先のステーキのと同タイミングで鮎の塩焼きが出て来ました。四万十川で育った鮎だそうで間違いなく美味しいのですが、なぜこれらエース級の食材を同時に出すのだろう。冒頭の皿鉢料理の揚げ物などが冷めてしまうのはプレゼンテーションの特性上、仕方ない面もありますが、主役級の肉と魚を同時に提供する意図がわかりかねました。
自家製の白ゴマプリンで〆。ごちそうさまでした。
色々と書きましたが、宿泊代金から逆算するにこのコース料理はひとりあたり1万円強~1.5万円ほどであり、その価格設定を考えれば大変お値打ちです。何より冒頭の皿鉢のプレゼンテーションは圧巻であり盛り上がること間違いなし。いずれは本気の、30人ぐらいの宴会で出てくるような皿鉢料理にチャレンジしてみたいなと思わせてくれるディナーでした。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。