ゴーシェ(Gaucher)/六本木

地下鉄の六本木駅と六本木一丁目駅の間にある「ゴーシェ(Gaucher)」。大通り沿いの雑居ビル地階にあり、程よい隠れ家感があります。ちなみにお店のすぐそばでドラマか何かの撮影がって、休憩中のマダム松村沙友理に対して連れが手を振ったら満面の笑みで応じてくれたので、彼女はとても良い子です。私が保証します。
閑話休題。店内は奇抜というかなんというか、かなり攻めた内装です。テーブルが4-5卓でマックス20名といったところでしょうか。過剰にキメキメでもないので、ちょっと贅沢カジュアルなデートに最適です。ちょっと贅沢カジュアルなデートって何?
齋藤勉シェフはリヨン郊外とフレンチバスクで経験を積んだそうで、日本で活躍するフランス料理人としては珍しい部類に入る経歴ではないでしょうか。ワインはペアリングがオススメで、5杯と7杯コースがあるのですが、それぞれたっぷり注いでくれるので、普通のアルコール耐性の方は5杯で充分でしょう。
アミューズはフォアグラのフランにイチヂクのムース。フォアグラのコクとイチヂクの濃密な甘味が良く合い美味しい。一方で、かなり重く甘いので、冒頭じゃなくても良かったかもしれません。
続いアスパラにホタテ。アスパラの茹で加減が完璧で、シャッキリと食感と豊かな甘味が感じられとても美味しい。ホタテも生の部分と焼き目の部分で味覚の対比が感じられます。
スペシャリテの野菜のテリーヌ。パーフェクトな造形で色鮮やか。このまま置物にして居間に飾りたいくらいです。野菜ごとに調理を変えつつキッチリと取りまとめる見事な手技。こういう料理が常に家にあるような生活を送りたい。
温前菜としてクレープがやって来ました。中にはズワイガニがたっぷり詰まっており、グリュイエールチーズの旨味も強く、アグレッシブな美味しさです。白ワインのソースも絶妙。この日わたしは大阪から移動してきたのですが、彼の地で食べた粉モンとのレベルの違いを見せつけられました。
お魚料理はアンコウのムニエル。豊かな脂が感じられ、重ねて焦がしバターのソースも旨い。ごくごくシンプルな調味であるものの粘り強い美味しさです。
リンゴのグラニテでお口直し。全てが氷菓というわけでなく、ところどころ果肉が感じられるのが嬉しいです。
メインは黒毛和牛のロティ。部位はシンタマであり、和牛と言えどもクドクドしい脂は感じられず、赤身の肉そのものの美味しさを楽しむお皿です。濃厚なマディラソースにトリュフの香りと、まさに王道のメインディッシュと言えるでしょう。
デザートが素晴らしい。栗のシュークリームにほうじ茶のアイスと興味深い組み合わせであり、ややもすると和のニュアンスを感じさせる味覚です。おかわりしたい。
小菓子もたっぷりで、色とりどりの野菜使いに甘味の質の高さと、パティシエ的な思想を強く感じました。こういった脇役まできちんと美味しいお店は大概良いお店です。
ハーブティーで〆。ごちそうさまでした。以上を食べ、フルフルのペアリングを付けて3万円でお釣りが来ました。この界隈のフランス料理店では非常に良心的な価格設定であり、お食事だけであれば1.5万円程度というのはミラクルです。過剰にキメキメでもないので、ちょっと贅沢カジュアルなデートに是非どうぞ。ちょっと贅沢カジュアルなデートって何?

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六本木は難しい街です。おっと思えるリーズナブルな店から、高くてギラギラしてるだけのハリボテのようなお店も多い。私が好きなお店は下記の通りです。
レストランの在り方に迫るというよりは、六本木の今にクローズアップした特集。ラグジュアリーで儚い夜の街へと誘うガイドブック。紙媒体は売り切れちゃうのでお早めに。

中国料理 桃花林(とうかりん)/栄(名古屋)

名古屋は栄、東海放送会館(通称テレピア)の14-15階に入居する「中国料理 桃花林(とうかりん)」。ホテルオークラ運営の広東料理店であり、食べログでは百名店に選出されています。
店内はクラシックな内装で、ほとんど因襲的と言って良い雰囲気です(写真は食べログ公式ページより)。接客につき、メートル・ドテルの方は大変素晴らしいのですが、他の従業員のレベルは中くらいであり、サービスって難しいなあ。
3種冷菜の盛り合わせ。左からエビ、クラゲ、鶏肉ネギ塩的な。一般的な中華料理店で良く出るアレです。
「上海蟹肉・味噌入り肉団子と干し豆腐のスープ」なのですが、これがちょっとびっくりするぐらい美味しいですね。旨味・塩気・コク・複雑性すべてにおいてが一級品で、無制限に美味しい。この日わたしは重度の二日酔いに罹患していたのですが、一発で目が覚めました。
点心にはふたつとも海老が入っており私得。右はプレーンな味わいで純粋に美味しい。左側の緑のやつは、エビに加えギョーザの餡的なものも入っており、ビールが欲しくなります。
「海老と秋野菜の塩炒め」も美味しい。シャキっと瑞々しく仕上がっており、味付けもズバッと決まっています。ホテルの運営らしくシェフの顔は見えない(名前も不明)のですが、凄腕であることは確かです。
「牛肉のピリ辛中国黒豆ソース」も明快な味付けで、非常に分かりやすくあるものの素人は決して真似のできない味覚。白ゴハンが欲しくなる。
〆のお食事に「広東風白粥」か「葱つゆそば」を選ぶことができるのですが、私は後者を選択。キラキラと黄金色に輝くスープには華があり、永遠に飲んでいたいくらいです。
デザートは杏仁豆腐にライチ。これはまあ、普通ですね。冒頭の一般的な中華料理店で良く出るアレに方向性は同じです。

以上のランチコースが4,400円。支払金額からは考えられないほどの充実度であり、正直なところ恵比寿の客単価5万円の中華料理よりも全然美味しい。平日ランチは千円かそこらの担々麺セットみたいなのもあるようですが、それだと当店の魅力に気づけないかもしれないので、ここはひとつしっかりしたコースを注文することをオススメします。

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仕事の都合で年間名古屋に200泊していたことがあり、その間は常に外食でした。中でも印象的なお店をまとめました。

食通たちが鰻の魅力とこだわりを語り尽くす一冊。よしもとばなな、沢木耕太郎、さくらももこ、椎名誠、村上龍、村上春樹、島田雅彦、五木寛之、遠藤周作、群ようこ、などなど最強の布陣が送るアンソロジー。

Bijan Bar & Restaurant/ブキッ ビンタン(クアラルンプール)

クアラルンプール屈指の繁華街「ブキッ・ビンタン」にある「Bijan Bar & Restaurant」。レストランやバーなどが立ち並ぶChangkat通りの外れにあるマレー料理の名店であり、とりわけ日本人を含む外国人に人気です。
かなりの大箱で、ある一画では貸切でのパーティーを開催しており、また別のエリアはスーツをバリっと着こなした欧米系のビジネスパーソンで埋め尽くされており、なるほどマレー料理店の中でも特別感のあるお店のようです。
ちなみにマレー料理とはマレーシア料理のうちの1ジャンルだそうで、和食における日本料理のような取り扱いなのでしょうか。当然のように食事はハラル対応なのですが、お酒を提供するのはマレー料理のお店としては珍しいそうです。
マンゴーのサラダ。いわゆる日本人が想像する完熟したマンゴーではなく、パパイヤサラダのように若々しい個体を用いているようです。仄かな辛味にピーナッツの甘味、ショウガの爽やかさ、ライムの酸味など色んな味がするサラダです。
エビと野菜のかき揚げ的な料理。思いのほかエビがゴロゴロと入っており嬉しい誤算。衣が厚くモッタリとしており、沖縄の天ぷら的な腹持ちの良さが感じられます。
エビの炒め物ですが、想像以上に辛く体中の毛穴が開いて汗が噴き出して来ます。空豆や玉ねぎだと辛味を中和させる成分もあるにはあるのですが、チリソースっぽいやつが心から辛く、エビを味わうどころではありませんでした。
こちらはラム肉なのですが、トッピングされたソース(?)が思いのほか辛く、何なんマレー料理って全般的に辛い料理なん全然聞いてへんねんけど。私はフランス料理愛好家のひとりとして割にラムを食べる機会は多いほうなのですが、ラムを辛く調味して食べるのは生まれて初めてかもしれません。
辛くて話にならなかったので、ローカーボを断念しライスを注文。スパイスと一緒に炊き込んでいるそうで、これまでの料理と一緒に食べるととてもよく合う。エビにせよラムにせよ妙に味付けが濃かったので、そもそもこういったライスに合わせて食べるように設計されているのかもしれませんマレー料理とは。
以上を食べて、軽く飲んでお会計はひとりあたり4-5千円といったところ。外国人向けにアレンジはされているのかもしれませんが、れっきとしたマレー料理を試すことができて大満足。マレー料理とは思いのほか辛く、ライスと合わせて食べるように設計されているのかもしれない、という気づきのあったディナーでした。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

プルニエ(RESTAURANT PRUNIER)/丸の内

1922年に「民間初の社交場」として皇居前に建てられた東京會舘の建て替えが完了し、メインダイニング「プルニエ(RESTAURANT PRUNIER)」の営業が再開しました。東京會舘は大政翼賛会の本部が置かれたりGHQの将校クラブとして営業したりと、その数奇な運命を辿るだけでも面白い。ちなみに「パレスホテル」は東京會舘から分離独立したホテルですこれ豆な。
店内はバリバリのグランメゾン。丸の内は日比谷通り沿いであり、窓から皇居のお堀が目の前に見えます。内装には価値が感じられ、サービス陣の一糸乱れぬ動きにはサービス料15%の重みが感じられました。

松本浩之シェフはフランスの星付きレストランなどで経験を積み、帰国後は「レ・ザンジュ」「Restaurant FEU」などの名店でシェフを務めたのち、2019年より当店の厨房を預かります。ミシュラン2023では1ツ星を獲得。
ワインはバカみたいに高いですねえ。外資系ラグジュアリーホテルと同等かそれ以上の値付けであり、サービス料の15%がボディブローのようにきいてきます。我々は苦労してワインリストからお値打ちなボトルを引っ張り出してきましたが、そもそも一休などからワインペアリング付きの税サ込プランで予約したほうが精神衛生上良かったかもしれません。
アミューズはスモークサーモンをペースト状にしたものなのですが、何とも食欲をそそる薫香に誘われ、口に含むと旨味が爆発。見た目以上に凝縮感のある味覚です。
赤貝をフランス料理店で食べるのは珍しい。トマトの酸味を上手く取り入れており、鮨屋で食べるそれとはまた違った魅力のあるひと品です。
パンは2種。カヌレをひっくり返したようなパンにはトリュフがきいており、これが信じられないほど美味しい。瞬で食べ切りおかわりだ!と期待したのですが、パンを持って来てくれたのはただの一度きりであり、ソースを拭うこともできず普通に不便でした。
お魚料理はヒラメ。しっとりと蒸しあがっており滋味あふれる味わいです。ソースには豚足を用いており相当にコッテリしているのですが、ヒラメに不思議と良く合います。黒トリュフの風味の使い分けも見事です。
メインはエゾジカか和牛かのチョイスで、和牛だと4,070円の追加料金(サービス料は別途15%だ)とのことだったので、心の平穏のためにエゾジカを選択しました。しかしながらこの選択は大正解で、官能的な鹿肉のローストに濃厚なソースとトリュフの香りが完璧に調和しています。ピュレなど様々な形に変えた菊芋もお洒落な味わいで、まさに傑作と呼んで良いひと皿でしょう。
メインのデザートに入る前にちょっとした甘味でお口直し。メレンゲの口当たりがどこまでも優しい。
デザートが見事。ドイツの伝統菓子「フォレノワール」を再構築したもので、重みのあるカカオの風味にチェリーをたっぷりと組み込みます。赤ワインのアイスの味覚も洒落ており、まさに大人に向けたスイーツです。
ミニャルディーズも凝っていて、名前はどこにも出ていませんが当店のシェフパティシエは日本トップクラスの腕前に違いありません。一体、誰なんだ。
以上を食べ、控えめに控えめにワインを飲んで水やら何やら含めてお会計はひとりあたり3万円弱。お店の格からすれば思いのほか安くついたなという印象ですが、それでもやっぱり高いです。

また、ただ高いだけでなく、妙に小金せびってくる感が半端ないのが全くロマンチックじゃないですね。何とか1円でも多く課金させようという姿勢が見え見えでかなり萎えます。極めつきは帰り際。若いスタッフが「本日のパンを~」と袋に入れて持ってくるのですが、これが何と別料金の1つ1,480円で、われわれ一同キレイにズッコケました。ケチ臭え。

もちろんこれらのセコい振る舞いにつき現場スタッフたちに非はなく、会社の断固とした営業方針なのだから仕方ないでしょう。シェフをはじめ現場のみんなたちは良い仕事してるのに印象が悪いのは可哀相。細かい金額を気にする貧乏人は来るなと言われればそれまでですが、何とも後味の悪い締めくくりでした。自腹ではなく、接待などのオゴリで訪れるべきお店なのかもしれません。お疲れさまでした。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

隠岐プラザホテル(OKIPLAZA HOTEL・宿泊)/隠岐(島根)

隠岐諸島で一番の宿泊施設「隠岐プラザホテル(OKIPLAZA HOTEL)」。交通の要所・西郷港から歩いて数分に位置し、皇族なども利用することのある歴史あるホテルです。
ロビーは地方の古くからある旅館のそれといった風情。チェックイン開始時刻は16時と遅く、またその時間になるまでは絶対にチェックインさせない(ロビーの電灯すら消えている)という徹底した運用です。
我々は角部屋に予約を入れました。角というか端というか、部屋の3面がガラス窓であり採光が抜群です。
畳のお部屋の他にベッドルームも用意されているのが良いですね。常に寝具が用意されているため、朝食から戻ると布団が片付けられておりゴロゴロできない、みたいな悲劇は待ち受けていません。
一方で、様式の寝具の取り扱いは苦手なのか、足元のシーツの長さが足りていません。足を伸ばすとベッドパットひいてはマットレスまで生足で触れてしまうのが気持ち悪いです。
ライティングデスクなのか化粧台なのか、一応机らしきものも用意されています。しかしながら私の長い長い脚を収納することは難しく座り心地は悪かった。
クローゼット。こちら側からはシティビューが広がります。ちなみに当館は全35室と客室数が少なく、その全てがオーシャンビュー。見方に拠ってはスモールラグジュアリーと呼べるかもしれません。
ウェットエリアは場末のビジネスホテル感が強い。下水臭も強く、何故か便座も曲がっている。私ちょっと無理かもしれません。
お風呂は大浴場を利用するゲストが殆どだと思いますが、そちらも特に温泉といったわけではなく、スポーツクラブのお風呂と大差ないので、お湯を目当てに当館を訪れるのは避けた方が良さそうです。
夕食は地の利を生かした生魚は大変美味しいですが、その他の料理は地方の温泉旅館の団体料理と大差ありませんでした。またキッチンとホールスタッフの連携が上手くいっておらず、目に余るボーンヘッドが散見されたのもまじ許すまじ。詳細は別記事にて
朝食もやはり地方の温泉旅館の団体料理と大差ありません。ビジネスホテルのビュッフェを丁寧に盛り付けた味覚です。
スペシャリテの「もずく雑炊」も供されるのですが別に普通です。加えて白ゴハンまで用意するあたり、炭水化物では負けないぞという決意めいたものを感じました。
2日目の朝食はコチラ。前日と多少はラインナップを変えていますが、やはりビジネスホテルと大差ありません。素泊まりで夜は地元の居酒屋に行けば良かったかなあ。
隠岐では一番のホテルであり、それなりに金額も張るので期待して訪れましたが、設備やサービスのレベルを勘案すると割高に思えました。このあたり、「Ryokan浦島」と同じく離島特有の限界なのかもしれません。

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