hiroto(ヒロト)/地蔵通り(広島市)

中国四国地方の西洋料理としては唯一の2ツ星を有する「hiroto(ヒロト)」。旨いもの屋が集まる地蔵通りに店を構えます。
店内はカウンター席が3-4席にテーブルが4-5卓。トータルでは20席ほどでしょうか。テーブルクロスは張られておらず、所謂ネオビストロ系の温かくもスタイリッシュな内装です(写真は食べログ公式ページより)。

廣戸良幸シェフは「リーガロイヤルホテル広島」や西麻布「ザ・ジョージアンクラブ」、「パークハイアット東京」や「六本木ヒルズクラブ」で経験を積み、イギリスの1ツ星「ハイビスカス(Hibiscus)」でも活躍。帰国後の2005年に当店を開業し、2012年に移転リニューアルを果たし業態をガラリと変えました。現在はJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の食事も監修されているそうです。
ワインは高い。リストは無く何本か持って来てもらってからのチョイスなのですが、一番安いボトルで税サ込1.5万円を超え、メインに合わせてもらったグラスワインも1杯3千円ほどでした。ワインに罪はありませんが、食事の代金に比べるとバランスが悪い気がします。

ところで年配の給仕のおっちゃんに妙な安定感があって、素敵なサービスだなあと岡惚れしていたのですが、その正体は中国地方の最重鎮ソムリエであり、なるほどこれが隠し切れない達人の匂いかと勝手に納得しました。
乾杯するとササっと用意されるアミューズ。このあたりのスピード感とタイミングは素晴らしいですねえ。料理はカリフラワーのパンナコッタであり、カリフラワーの滋味あふれる味わいにコンソメジュレの旨味、ウニのパンチのあるコクと、のっけから胃識の高い逸品です。
フォアグラのパテをカカオと融合させたひと品。相当にヘヴィな見た目ですが、口当たりは思いのほか軽く、流れるような味覚です。イチヂクとの組み合わせもピッタリで、センスの感じるひと品でした。
パイにトマトや生ハムを組み込み、ヨーグルトのムース(?)をトッピング。こちらも先のフォアグラとは逆に、意外にも塩気や旨味が強く酒の進む味わいです。ヨーグルトの酸味で余韻を上手く整理しているのにも好感が持てます。
温かいサラダ。種々のハーブに泉州なす。旨味の強いチーズを溶かし込んだソースの主張が強く、素朴なサラダながら記憶に残るひと皿です。
パンもシンプルですが噛みしめるほどに味わいが感じられる、底の深い逸品です。
チャウダーにはフランス産のムール貝。小粒ながら凝縮感があり美味。細かくカットされたレンコンの食感も心地よいアクセントです。
スカモルツァとジャガイモのパンケーキ。パスタフィラータ特有のキュムキュムといった食感が心地よく、ジャガイモの大地の味わいも王道の美味しさ。しかしながら、先のチャウダーも含めて間違いなく美味しいものの、ミシュラン2ツ星のガストロノミーでわざわざ食べる必然性は無いかもしれません。
クエ。底には焼きリゾットが敷かれており、スプーンで崩しながら魚介のスープを吸わせてもう絶品。
ハモとマツタケ。マツタケをエリンギのように大胆に使用し、恐れ多く感じてしまいます。
続く魚料理はサワラ。ジューシーなサワラにドライトマトの旨味と酸味が響き、キョーイチのお料理です。こういうのに限って写真撮り忘れちゃんだよな。
メインは「榊山牛(さかきやまぎゅう)」。水やエサに拘り長期肥育で生み出した広島の最高級ブランド和牛です。なるほど和牛特有の香りが良く、脂はたっぷりなのですがサラリとした口あたり。肉そのものの味も濃く、うめえうめえとパクパク食べ切ってしまいました。
デザートはココナッツのブランマンジェに山羊のミルクを用いたアイスクリーム。山羊乳独特の淡い酸味がアイスクリームとするにピッタリで、心に残ったデザートです。
紅茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上の料理が税サ込17,325円。松茸や榊山牛などの高級食材をたっぷりと用いていることを考えればお値打ちでしょう。前述の通りワインはお高めなので、結果行って来いでトントンといったところでしょうか。

加えて、これは好みでしかないのですが、個人的には皿数が多すぎるように感じました。シェフはその昔、前菜とメインの2皿を食べたらお腹いっぱいというオールドスクールなフレンチを提供するスタイルで見事に失敗したそうですが、是非ともそのスタイルをセカンドラインとして復活させて欲しいところ。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。広島は日の出を待っている。

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