一(はじめ)/指宿(鹿児島)

指宿のスモールラグジュアリーリゾート「別邸 天降る丘(あまふるおか)」のダイニングは鉄板焼きかフレンチか日本料理から選択することができるのですが、我々は事前に日本料理を選択していたので、「一(はじめ)」へとご案内頂きました。
2回転制というか、波動を避けるためゲストをバラけさせて案内しているようで、週末であるにもかかわらず非常に広々とした空間使いです。

北野祐之シェフは日本各地の料理店で経験を積んできたそうで、厨房では大忙しながら客席まできちんと気を配る感じの良いおっちゃんです。若手のスタッフたちからは一生懸命さが伝わって来、魅力的なチームワークに映りました。
お酒は宿泊代や宿泊代に比べるとリーズナブルな価格設定なのですが、ラインナップが超微妙で、これだと思った日本酒が欠品していたりとグダグダな運用です。肉料理にはグラスワインの赤をお願いしたのですが、こちらも冷蔵庫でキンキンに冷やされており温度管理がなってません。当店ではワインを注文しないよう気を付けましょう。けっきょく焼酎だ。
付き出しが完全に酒のツマミでわろてまう。シェフは絶対に酒飲みだ、賭けてもいい。キモのソースがたっぷりのアワビにアンキモとキモキモ祭りです。湯葉にはウニもトッピングされており気前が良い。
お椀は指宿名物の鰹節をたっぷりと用いており、骨格のしっかりした素晴らしいスープです。一呼吸香っただけでこれは旨いぞとわかるレベル。具材にはフカヒレ・太刀魚・花びら茸と面白い組み合わせであり、興味深い逸品です。
お造りの旨さも抜群で、ただ驚嘆するしかない品質の良さです。左からイセエビ、ゴマアラ、カンパチ、アオリイカ。とりわけ伊勢海老がお気に入り。アオリイカには適量のキャビアもトッピングされており、貴族的な多面性が感じられる生魚たちでした。
黒豚のしゃぶしゃぶ。そのへんの旅館であれば固形燃料でセルフ調理のところ、きちんと厨房でまめやかに調理されて出て来ます。豚肉の美味しさはもちろんのこと、スープの隅々まで旨さが行き届いていました。あわび茸・九条ネギ・粟麩といったトッピングもお洒落です。
黒毛和牛のフィレ肉を朴葉焼きで。調味料は単なる味噌ではなくアンキモの美味しいところを練り込んであり、肉よりもソースのほうがその存在を主張するひと品です。そのコッテリソースをカブや舞茸、レンコン、百合根などと共に味わい楽しさといったらない。
かぶら蒸し。餡には蟹肉が導入されており贅沢な味わい。サトイモやクリもたっぷりと入っており、ホクホクほっこり頬が緩む味わいです。
ホタテとタカエビ、焼き茄子にスナップエンドウを黄身酢やリンゴ酢で頂きます。酸味と甘味が主体なのですが、色んな酸っぱさが感じられ面白い。
お食事はちりめんじゃこと山椒の炊き込みご飯。かなり派手な食材が続いていたので、これぐらいの地味さがちょうど良い。他方、お椀には先のイセエビの味噌がたっぷりと溶け込んでおり、まさに和風アメリケーヌソースといった旨さです。
お茶菓子のレベルが高く、シェフの美意識を感じる締めくくりでした。

地方の高級ホテルの欧米系料理はヤバいことが多いので消去法的に当店を選びましたが、そんな選び方をして申し訳ありませんでしたがと謝罪したいほど素晴らしい料理の数々。何かの記事でビジターは19,800円との記述があったのですが、仮にそれが本当だとすると大変にお値打ち。「別邸 天降る丘(あまふるおか)」そのものは正直イケてない宿泊施設なので、指宿に滞在する際はどこは他の所に宿を取り、当店まで食べに出かけると良いかもしれません。美味しかった。

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