エクアトゥール(l'equateur)/麻布十番

元麻布の店舗を閉め(後進に譲る?詳しいことは知らん)、バンコクで再スタートを切ることが決まった「エクアトゥール(l'equateur)」。
基本はフランス料理なのですが、中国料理の要素などを取り入れる意欲的な試みが多いお店でもあり、その武器のひとつにタイ料理や食材が加わるのは実に興味深いです。
毎度のことながら個室での利用かつワインは全て持ち込みであるため、この記事が誰かの参考になるかどうかは自信がありません。少なくとも費用対効果という概念とは距離を置いた食事会であることは確かです。
まずは本マグロ。白トリュフの香りが大変よろしい。核に白玉を用いており、にっちゃりした食感も楽しい。
海老芋のフリットに白子。ソースには西京味噌を起用しており、このワンシーンだけを切り取ると日本料理のようです。
フォアグラにオレキエッテ(耳たぶ型のパスタ)。オレキエッテのタレがバリ旨い。緻密にして濃厚。もうこれだけで腹を満たしてしまいたいほどの魅力がありました。
ローストビーフにツブ貝。ありそうでない斬新な組み合わせであり、互いの食感が互いの風味を刺激します。加えてネギのシャクシャク感に和のニュアンスを感じました。
カワハギとその肝のソース。コッテリとした味わいで日本酒が欲しくなる。やはりカワハギの主役とは身でなく肝なのだ、フォアグラと同じように。ウニもたっぷりとトッピングされており贅沢なひと品です。
手羽先には何と海老のすり身が詰まっています。もうそれだけでも美味しいのに、ソース・アメリケーヌのみっちりとした味覚に酔いしれる。うーん、こればっかり10本ぐらい食べたいなあ。
パンもいくつか頂いたのですが、何度食べても美味しいですね。素朴な味わいであり普通は普通なのですが、凄い普通の味がします。私の簡素で清潔な日常生活にしっくりくる。
コンソメを土台にフカヒレとカニを頂きます。これ以上無いというほど旨味が詰まっており、ワインが進む進む。底には牡蠣も忍んでおり、この時わたしは恋する乙女のような潤んだ瞳をしていたかもしれません。
メインはラカン産の鳩を選択。香ばしい皮目の食感にジューシーな脂、綺麗な身、正確にして巧妙なソース。これ以上は無いというクオリティの鳩料理です。プレゼンテーションが実に潔いのが良いですね。パフォーマンスも大事だが美味しいことには敵わないのだ。
〆のお食事にカペッリーニ。ぷるぷるムッチムチの黒アワビが導入されており、その肝のソースと共にリッチなヌードルです。今夜は色んな種類の肝を口にしたでござる。
デザートは栗をメインに添えたもの。栗そのものの味が濃く、モンブランとはまた違った魅力があるひと皿です。抹茶の心地よい苦味との組み合わせもいとをかし。
カリっとしたカヌレでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
やはりと言うべきか、流石というべきか、どの料理も議論の余地無しに美味しかった。もちろん値は張りますがこれらの料理は当店のシェフにしか創ることのできないものであり、まさに唯一無二。今後、海外でスパルタンな環境に身を投じるのもANTIFRAGILEを見込んでのことであり、このセンスをもってすればどの舞台に立っても人気者間違いなしでしょう。幕は開けたばかりだ。

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