アル・ケッチァーノ(Al che-cciano)/鶴岡(山形)

庄内で一番のイタリアンと言えば「アル・ケッチァーノ(Al che-cciano)」。奥田政行シェフはテレビにも引っ張りだこのイタリア料理人であり、2022年夏に6,000平米もの敷地を有する物件へと移転オープンです。駐車場が超巨大で、何と観光バスが3台も乗り着けることができるそうです。
しかしながら、そこそこの大箱であり客席数も多いはずなのにダイニングはシーンとしています。平日のディナーとは言えゲストは2組のみというのは少し寂しすぎるのではなかろうか。厨房にいるスタッフたちの世間話のほうが余程賑やかです。照明はバリバリに青白い蛍光灯色で、よそ行きの風情の欠片もありません。

飲み物につき、私は運転があるのでノンアルに留めましたが、ビールやワインは千円を切る価格設定であり、この手のレストランとしては良心的な価格設定でしょう。
まずはグジェール。イタリア料理店ながらフランス料理におけるアミューズの代表選手からスタートです。早速これが激マズい。言葉のあやではなく、本当に不味い。生地はコンビニのシュークリームの生地のように冷え切っており作り置き感満載。ゲストが少なすぎてキッチンはヒマしているのだから、客の到着に合わせて生地を焼き上げるなど、おしゃべり以外にできることは山ほどあると思うのだけれど。
アミューズ4点盛りもやはり作り置き感満載で、ダメな結婚披露宴2次会のダメなフィンガーフードのような味わいです。イオンのオードブルセットのほうが余程レベルが上でしょう。
カペッリーニはイシナギという地元のお魚と合わせて供します。イシナギそのものは美味しいのですが、調味がイマイチですね。塩味が決まっておらず、ピントのズレたボケボケな味わいです。
柳カレイとピーマンなのですが、黒焦げで見てくれが最悪です。魚は骨だらけピーマンは種だらけでどこが可食部なのかと困惑しました。けつあな確定である。
「椎茸のペペロンチーノ」ということですが、格式ばったリストランテでお茶漬け的なポジションの料理を出すというのはどうなんだろう。そういえば、バリっと真っ白なテーブルクロスを張っておきながら、カトラリーレストでずっと同じフォークとナイフを使わせる意図もわかりかねました。食器もヤマザキのパン祭りでもらえるような皿ばかりである。
マリネしたフグのピルピル。こちらもテトリスの上の方で適当に詰めたような味わいです。そもそもピルピルってスペイン料理とちゃうの。ぽい雰囲気を出そうとしているのか発想が浅すぎます。
キジハタは蒸して熱を入れ、ニンニク風味を移したオリーブオイルならびにバーニャカウダソースと共に頂きます。当店の味付けの方向性から覚悟はしていましたが、やはり虚無ってる味覚であり、お魚が気の毒です。
お口直しに「だし」という山形の郷土料理が出て来ました。キュウリやオクラなど水気の多い野菜にミョウガやシソなどのハーブを加え、醤油などの調味液でサっと漬け込んだ夏の定番料理です。しかしながら、この「だし」までも調味が殆ど感じられず、もしかして私がコロナに罹患して味覚障害に陥っていたのかもしれません。
メインは地元の羊肉なのですが、恐ろしく筋ばっていて歯に詰まりまくりまくりすてぃで難儀しました。ちなみにコチラについては塩気がズバっと決まっており、私の味蕾がイカれていたわけではないことが判明したのが唯一の救いです。
デザートひと皿目は和梨。たっぷりのブヨブヨは鳥海山(山形と秋田に跨る火山)の湧き水を用いたジュレとのことですが、これもまたぽい雰囲気を出そうとしているだけで、食事にはまるで役に立っていません。
メインのデザートはキャラメル風味のアイスムースとのことですが、惚れ惚れするほど盛り付けがダサい。味もスタバのナントカフラペチーノのトッピングのほうが数段上であり、何とも貧相な締めくくりでした。
以上のコース料理が7,700円。極めてやばたにえんな店でした。私は運転があるのでアルコールは楽しめませんでしたが、今となってはそれはそれで良かったと思います。なんでこんな店が鶴岡で一番とされているんだ。「虎のいない里では狸が虎になる」という諺が身に沁みたディナーでした。

大御所のオヤジがやってるフレンチは「北島亭」にせよ「ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)」にせよ時代を超越した本質的な美食を提供してくれることが多いですが、イタリアンの大御所は当店にせよ「リストランテ カノビアーノ (RISTORANTE CANOVIANO)」にせよ、どうしてこんなにもアレなのでしょう。

グルーポンのおせちのように、どこに出しても恥ずかしい料理です。賭けてもいいですが、目隠しして食べれば100人中98人はロイヤルホス

(…日記はここで途絶えている)

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