2022年ベストホテル&レストラン

本年もご愛読ありがとうございました。毎年恒例、年末の総仕上げとして、ベストホテルとベストレストランを3つづつ挙げることとしましょう。


【ホテル第3位】
パーク ハイアット ニセコ HANAZONO
「コロナ禍は鎖国しているのでニセコに外人が溢れておらず快適」との噂を聞きつけ早速お邪魔したのが「パーク ハイアット ニセコ HANAZONO」

僻地のウィンターリゾートとしては考えられないほどダイニングの質が高く選択肢も豊富です。ロッカールームにはスタッフが常駐しており、ゲレンデに出る準備を手伝ってくれるのも快適。雪に囲まれた中での水泳もイカしています。

従業員のレベルやそのオペレーションのクオリティについては他のハイアットに比べると低いですが、その欠点を補って余りある土地のパワー。ウィンタースポーツラヴァーとしては一度は経験しておきたいところ。「家族でスキーに行きたいんだよね、どこがいい?」と尋ねられれば積極的にオススメしたいホテルです。


【ホテル第2位】
ザ・テラスクラブ アット ブセナ(The Terrace Club at Busena)/許田(沖縄)
沖縄サミットが開催された「ザ・ブセナテラス」の敷地の外れにひっそりと佇む子連れNGホテル「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(The Terrace Club at Busena)」

目玉は「タラソプール」で、多様なジェット刺激を楽しみつつ水中歩行に励みます。スマホを含め電子機器の持ち込みは一切禁止されているため、パパ活ギャルがインスタでマウンティングができない→スポンサーの黒光りオヤジが来ない→客層が安定する、という素晴らしい流れが完成していました。これはレストランの客層を向上させる際のヒントにもなるかもしれません。

ブセナテラス側のプールやレストランも利用することができるので、多様な過ごし方に対応できます。大人カップルに超オススメ。下手な海外旅行よりも余程満足度が高いですよ。


【ホテル第1位】
ROKU KYOTO LXR Hotels&Resorts(ロク エルエックスアール)/洛北(京都)
ヒルトンのラグジュアリーブランド「LXR Hotels & Resorts」がアジア太平洋地域に初進出。「ROKU KYOTO」として洛北の風光明媚なエリアに開業し、1年が経ちました。

敷地内一面に張られた水鏡に脇を流れる天神川、緑の木々。京都の中心からタクシーで15分かそこらで全くの非日常。オススメは天然温泉を使用したサーマルプールで、冬でも屋外で水泳が楽しめます。

価格はお隣の「アマン京都」の半額、「パークハイアット京都」や「リッツカールトン京都」に比べてもひと回りお手頃。季節を変えて何度でも訪れたいなと感じさせてくれる居心地の良さでした。


【レストラン第3位】
割烹 新多久(しんたく)/村上(新潟)
創業は1867年と、ちょっと暗算が難しくなる程の歴史を誇る「割烹 新多久(しんたく)」。ミシュラン1ツ星。使用する食材は全て村上産で、料理人が地元の漁師や生産者と直で繋がっています。

いわゆる肉料理は殆ど口にしていないのにこの食後感。魚介類のパンチ力とその存在感を思い知った一夜でした。私は運転があるのでノンアルコールに留めましたが、次回は絶対に村上に泊まってお酒と共に楽しむんだからね。


【レストラン第2位】
オトワ レストラン(Otowa restaurant)/宇都宮
「2021年ベストホテル&レストラン」でレストラン第1位に挙げた「オトワ レストラン(Otowa restaurant)」。昨年に比べて質が落ちたというわけでは決してなく、今年の第1位の印象がとりわけ鮮烈だったので当店は第2位としました。

変わらずハードもソフトも高いレベルを安定的に維持し、組織的にフランス料理ひいてはフランス料理文化の体現に取り組み、地元から愛されているレストランは日本では当店ぐらいでしょう。港区の予約困難店は5年もすれば消えてなくなるのが常ですが、オトワは100年先も変わらず存在し続ける。これが本当のサスティナビリティだ。

東京から日光旅行で栃木を訪れた際、帰りのディナーは必ず当店に立ち寄りましょう。人生が豊かになります。私が保証します。


【レストラン第1位】
Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目
https://www.takemachelin.com/2022/06/lato.html
「OSTERIA ORIERA(オステリア・オリエーラ)」で腕を振るったシェフが新宿の地に凱旋し、伊勢丹近くの雑居ビル4階にオープンした「Il Lato(イル ラート)」。目玉は魚介類であり、その取り扱いについてはイタリアンというジャンルを超えた魅力があります。

食材の本質を突き詰めた往生際の良い料理であり、食べて全く疲れない、お魚料理のひとつの究極系。魚介類が自慢のイタリアンレストランは、そう自称する前に当店を訪れ身の程を知っておくべきでしょう。


それでは来年も変わらずお付き合いして頂ければ幸いです。それではみなさん酔いお年をお迎えください。Bon appétit !

昨年の結果はコチラ⇒ https://www.takemachelin.com/2021/12/2021.html

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2022年レストラン備忘録

毎年恒例、個別記事にすることなくお蔵入りとなったお店につき、一挙掲載。

■ROBERT'S COFFEE(ロバーツ コーヒー)/麻布十番
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13261230/
フィンランドを代表するコーヒーチェーンが日本上陸。「イート・モア・グリーンズ (eat more greens)」の跡地であり、内装などはあまり変わったという印象を受けません。他のチェーンよりはやや高めですが、その分テーブル間にゆとりがあり、(十番に限っては)スタバなどに比べると空いている気がします。コンセント席もあってPC作業もOK。


■クリスプ サラダ ワークス(CRISP SALAD WORKS)/麻布十番
雨後の筍のごとく出現するサラダ専門店の中では味が圧倒的に良い「クリスプ サラダ ワークス(CRISP SALAD WORKS)」。一時期は調子に乗ってすげえ感じの悪い店になってましたが、同じ十番内で移転し注文システムも接客姿勢も改められ、再び素晴らしいチョップドサラダ専門店へと返り咲きです。こんなに満足感のあるサラダは中々無い。


■Vegetable base TOKYO(ベジタブル ベース トーキョー)/神楽坂
サラダ専門店の中では前述の「クリスプ サラダ ワークス(CRISP SALAD WORKS)」が圧倒的に美味しいと思うのですが、当店も中々のものです。クリスプ~と方向性はかなり違っていて、葉物野菜を主食にオカズを食べている印象。野菜しか食べていないのに満腹感。スープとドリンクを付けると2,000円近くするのがネックかなあ。 


■ジャンティーユ(gentille)/中目黒
中目黒駅から15分ほど歩いた住宅街にある人気のパン屋「ジャンティーユ (gentille) 」。コロナ的に店内には2名までしか入店できないので、行列が生じることもしばしば(2Fのカフェは現在休業中)。
あまり深く考えず総菜系のパンを3つ買ったのですが、お会計が1,200円近くも要しぶったまげました。いや、もちろん美味しいは美味しいのですが、パンが1つ400円というのはちょっとなあ。気のきいたビストロであれば千円かそこらでパン付きのランチを楽しめることにつき、色々と考えこんでしまいました。


■頑固蛸(がんこだこ)/目黒
髙嶋政宏が一番好きなタコ焼きとして挙げていた店。目黒駅から権之助坂を下ってもう少し歩く必要があり、「目黒寄生虫館」のちょうどお向かいにあります。なるほど外皮はカリっとしタコも大きく美味しいのですが、デフォルトで600円近いのはちょっと高いなあ。もちろんこれは当店に限った話ではなくタコ焼き業界全体の課題なのかもしれません。


■目黒五十番 本店/目黒
先の「頑固蛸(がんこだこ)」の並びにある老舗の肉まん屋さん。基本的には買って帰っておうちで温めて食べることを想定したお店ですが、すぐ食べると言えばその場で温めてくれます。味は1個499円にしてはイマイチ。生地はボソボソで餡はジューシーさに欠けます。551は半値ながらもっと美味しいぞ。


■バー ラランジャ(Bar Laranja)/武蔵小山
武蔵小山駅から徒歩数分の場所にあるショットバー「ラランジャ(Bar Laranja)」。すぐ近くのDining&Bar Veggの系列店です。地元の常連がかなり溜まっておりアウェー感はありますが、スタッフの方は満遍なく愛想よく接客してくれます。チャージも酒も安いので、大人のスタバとしてどうぞ。


■1dL(イチデシリットル)/恵比寿
恵比寿ガーデンプレイスのブリックエンドにオープンした「1dL(イチデシリットル)」。気軽なワインバーで、15:30~開いているので使い勝手良し。ガッツリお食事というよりかは0次会や2次会に使うと良いでしょう。


■ヘイメル ミヤマス (Hemel Miyamasu)/渋谷
表参道で食事した後、もう少し飲もうと立ち寄ったお店。ベルギービールとワイン、シャルキュトリが自慢のお店で、遅い時間にお酒だけ、のような使い方もOK。シェフはロワールでシャルキュトリの修行を積んだ本格派。次回はきちんとした時間帯に訪れ、しっかり食べてみよう。


■魚屋 小次朗 (こじろう)/新橋
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13032687/
新橋・虎ノ門・内幸町の重心あたりにある海鮮居酒屋。2階にいくつか個室があって会食に最適。お造りは良かったのですが、お魚の鍋に焼き物・蒸し物が中ぐらいだったので、どうしたんだろう。次回はランチもしくはアラカルトを試してみようと思います。


■山内農場
たまにはチェーンの居酒屋でも、とお邪魔しました。多種多様な料理をアラカルトで好きなだけ注文できるのは嬉しいですが、いずれもびっくりするほど量が少ないですねえ。おなかいっぱい食べればひとりあたり7-8千円は必要であり、であれば気の利いたビストロでも行った方が良くない?というお気持ちです。

私は知人から「いつも良いお店でゴハン食べているよねえ、贅沢だ」と揶揄されることが多いのですが、いや寧ろチェーンの居酒屋に日常的に出入りするほうがよっぽど贅沢やろと思います。


■マサニ コーヒー(maSani coffee)/佐渡(新潟)
佐渡の両津港のターミナルにあるカフェ「マサニ コーヒー(maSani coffee)」。船の出発待ちで利用するカフェであり、つまりは島外客が殆どです。佐渡牛乳を用いたラテの味は悪くないのですが、wifiがあると告知しておきながら接続できるIP数を制限しているのか使いものになりませんでした。ガッツリ作業したい方は同じ建物の3階にあるシェアオフィスを利用したほうが良いでしょう。あそこはあそこでドリンクバーも無いので微妙っちゃ微妙ですが。


■夢菓房たから(ゆめかぼう)/春日(高松)
高松市は春日町にあるフルーツ大福で有名な「夢菓房たから(ゆめかぼう)」。週末の午後ともなれば数十台の余裕がある駐車場が満杯、ブツを買うだけでも整理券が必要となる人気の和菓子店。食べログでは百名店に選出されています。

なのですが、あまりの混雑ならびにフードコート的ガヤガヤ感のある店内の雰囲気は賛否の分かれるところ。誰かの差し入れで食べるには悪くありませんが、自分で買いに行くのは平日に留めたいなあというお気持ちです。


■雪苔屋(ユキゴケヤ)/屋久島
屋久島空港から車で5分ほどの距離にある「雪苔屋(ユキゴケヤ)」。飛行機待ちのゲストが半分、移住者の溜まり場として半分と言った印象。緑に囲まれた一軒家で雰囲気良し。コーヒーやハーブティーが主力で食べ物はスイーツのみ。現金しか使えないのが玉に瑕ですが、これはまあ、離島(地方)の飲食店の宿命かもしれません。


■浮島ブルーイング/牧志(那覇)
https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47022606/
牧志は浮島通りと市場中央通りが交差する辺りの雑居ビル3階にある「浮島ブルーイング」。マイクロブルワリーが運営するビアバーです。お食事メニューは少なくあくまでタップルームという位置付け。クラフトビールの種類はかなりのものなのですが、1杯800円ながら量は少なくやや割高。そのためか客層は安定しており、コンセプトの割に静かなお店かもしれません。牧志あたりで落ち着いた2次会を求める場合にどうぞ。


■ザ コーナー(The Corner)/牧志(那覇)
https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47026262/
那覇は浮島通り沿いのビアバー。マンボウ中も時短なしの強気のお店です。唐揚げとビール推しであり、それらのセットメニューが800円とお値打ち。ボックスシートにテーブル席、カウンターと様々なタイプの客席が用意されており、グループでもお一人様でもOK。夜遅くまで営業しており那覇では使い勝手の良いお店です。


■琉球ドリンクラボ/牧志(那覇)
牧志の新天地市場本通りにあるカウンター4席のみのバー。「スペシャリティ珈琲と泡盛がテーマのmixology cafe & bar」という面白いコンセプト。ややこしいカクテルを3杯飲んで3千円程と大変お値打ち。食器も沖縄の作家のものを用いており拘りが感じられます。小さすぎるバーなので、必ず予約して訪れましょう。


■フィンカ ラ ビヒア沖縄 (FINCA LA VIGIA OKINAWA)/おもろまち(那覇)
西麻布のシガーバー「コイーバアトモスフィア東京」の沖縄支店。しばらく前は国際通りの2階で営業していたのですが、このたびおもろまち駅を出て数分、叙々苑が入った飲食ビルに移転オープン。

ラウンジやサロンといった大人な雰囲気。テラス席もあり、そこから公園を望むことができます。飲み物は1杯千円かそこらであり、ややこしいカクテルを2-3杯飲んでも5千円を超えることはありません。使えるお店です。


■bar living (バーリビング)/美栄橋(那覇)
https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47007457/
美栄橋の雑居ビル5階にある超かっこいいバー。メゾネットタイプの空間で、メインは上階のカウンター席なのですが、その後ろ側にはフロア席に、下階には怪しげなリビングルーム。エロさマックスバリューですが不思議と居心地が良く、那覇の善男善女が静かに酒を傾けています。間違いなく那覇でトップクラスに素敵なバーでしょう。


■El Lequio(エルレキオ)/安里(那覇)
https://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47028764/
新進気鋭のバーテンダー、ムッシュ後閑信吾が手掛けるSG Groupの新店舗は那覇。店名は「ザ・琉球」という意味であり、何でも大航海時代から琉球と南米は交易があったそうです。南米のお酒をベースにしつつ沖縄のニュアンスを採り入れており(沖縄そばをイメージしたカクテルも!)、何とも面白いお店です。のんびり3杯飲んで5千円ほどと、バーにしてはそんなに高くないのもグッドです。


■The Cheese Guy in Okinawa/南城市(沖縄)
https://tabelog.com/okinawa/A4704/A470403/47018238/
沖縄の料理人から「南城でチーズ作ってる変な外人がいるんすよ」と紹介を受け、早速お邪魔しました。農協のスーパー(?)に間借りした極小店舗であり、その割に神谷町「フェルミエ」顔負けのラインナップで何だ、君、一体?
気前よく試食を勧めてくれ、気に入ったものをいくらか購入。これは凄い。ちゃんとしたナチュラルチーズだ。もちろん南城市は生乳の名産地であり理論上はチーズを造ることはできるはずですが、いやはや、こんなにレベルの高いものができるとは。しかも異国の地で。チーズケーキやヨーグルト、チーズせんべいなど取っつき易い商品も沢山売られているので、南城を訪れた際は是非どうぞ。


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蘇州(そしゅう)/店屋町(福岡)

中州で創業し、何度かの移転を経て冷泉公園近くに落ち着いた「蘇州(そしゅう)」。開店直前にはシャッター組が列をなしており、人気の程が伺えます。私は夜遅くに通りがかった際、たまたま空いていたのでこれ幸いとばかりにお邪魔しました。
階段で2階に上がると開けるには躊躇う扉が待ち構えています。これは私の入店ルートがヘンだっただけで、エレベータを使って入店するのが王道らしいです。
閉店間際だったのでゲストもまばらです。私が注文を済ますと大将が「カンバン返しといて~」と指示を出していたので、まさに滑り込みセーフでした。
ビールは中ビンで赤星を選択。さあ何をつまもうかとメニューを眺めていると「お客さんは初めてだよね?オススメはコレとコレだから」と気持ちの良いガイダンスがありました。何も話していないのにどうして一見とバレたんだろう。やはり入店ルートがヘンだったのでしょうか。
まずは「水餃子(魚)」。つるんとした生地の中には肉汁(魚汁?)たっぷりの餡。魚肉のほか、白菜や生姜などの薬味がたっぷりと入っており、タレなどは不要でそのまま食べて美味しい。
続いて「水餃子(肉)」。こちらは豚肉のミンチ主体であり、不思議と酸味が感じられ、深夜近いというのにスルスルと食べ進めることができます。ハーフサイズにしましたが、フルサイズで注文すれば良かったかな。
ビール1本に餃子のハーフサイズを2皿頼んで1,500-1,600円程度。いいですねえ。次回はきちんとお腹を空かせた状態で、グループで訪れ旨そうな料理を片っ端から頼んでみよう。焼き餃子も旨そうなんだようなあ。

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サムズセーラーイン 国際通り店(SAM'S SAILOR INN)/牧志(那覇)

2022年11月に「サムズアンカーイン イーアス沖縄豊崎店」という鉄板焼専門店でパフォーマンスの炎が客に燃え移り、大火傷させてしまうという事故が起こりました。可燃性のある液体(酒?油?)を定められた容器を用いて管理しなかった点や、技量が未熟なアルバイト店員が調理を担当していたことが原因として挙げられているようです。
運営元企業の親会社(?詳しい資本関係は知らん)である「株式会社フジオフードグループ本社」は公式ウェブサイトにお詫びに言葉を掲載した上で、「この度の原因となりましたフランベにつきまして、長年サムズで実施しておりましたが再発防止の観点から中止し、二度と行わないことといたしました」と宣言しています。
さて、事故の現場となった「サムズアンカーイン イーアス沖縄豊崎店」は何日かは休業したようですが、同じサムズレストラングループの他店舗は全く変わらず営業を続けていました。私の感覚だと一旦は全店舗を休業し安全点検を行い、安全が確保されたと認められた店舗から順次営業を再開するものだと考えていただけに、かなり神経が図太い企業体のようです。
一体どういうつもりで営業しているのだろう、と、怖いもの見たさで「サムズセーラーイン 国際通り店(SAM'S SAILOR INN)」にお邪魔してみます。

客船を模した内装はクオリティの低いディズニーシーのよう。ソファはビリビリに破れスポンジが剥き出しになっており、なるほど意識低い系であることを隠そうともしていません。
従業員の殆どは外国人であり日本語があまり通じず、ハワイの「田中オブ東京」に来たかのような異国感を覚えます。衛生状態が心配なので瓶ビールを注文するのですが、「瓶ビールハ無イ、ボトルビアーシカ無イ!」と謎かけのようなセリフを浴びせられ面喰らいます。じゃあそのボトルビアーをお願いします、グラスは2つでとオーダーすると、ボトルが2本・グラスが2つでやって来ました。
さて何を食べようかとメニューを開くのですが、メニュー表がボロボロに破れ油が跳ねており、なるほどこういうところだなと得心します。事件となった炎のパフォーマンスについてはマジックで黒塗りされているものの、何とも雑な検閲です。どうせ黒塗りするなら火柱の部分もそうするべきだと思うのだけれど。
コースに付随する「東インド風カレースープ」。たしかにスパイスの風味は感じるのですが、全体的にモッタリとした口当たりであり、全然美味しくありません。クノールのカップスープのほうが余程上質でしょう。
サラダも付帯しドレッシングを4種から選ぶことができるのですが、日本語での説明が覚束ないため、いったい何味がやって来るのかヒヤヒヤものです。なお、サラダの品質については写真から察して下さい。
そうこうしているうちに調理担当のニイチャンがやって来ました。入れ墨が首までバリバリです。やはり日本語が不確かで注文内容も間違って把握しており、改めてメニュー表を用いて指差し確認する必要があります。

途中、フレアバーテンディングよろしくコショウを放ったり回転させたりするのですが、何度も何度も失敗しガチャガチャと床に落としたりするので衛生的とは言えません。またこのニイチャンだけが下手というわけではなく、他のテーブルの調理担当も似たり寄ったりの技術なので、冒頭の事故も起こるべくして起こったと妙に納得してしまいました。
覚悟していた通り調理技術もゴチャゴチャで、タマネギは黒焦げでした。ただし黒焦げ部分を選抜して私のほうに寄越してきてたので、レディファーストの理念は浸透しているようです。
私は衛生面を心配して「ミディアム」を要求したのですが、連れは攻めて「ミディアムレア」でオーダー。2人分をごちゃ混ぜに焼き始め、先に盛り付ける側を「ミディアムレア」、後に盛り付ける側を「ミディアム」とする管理のようで、ラーメン屋で麺カタメを注文する感覚に似ています。
肝腎の味わいですが、これが結構イケます。スープとサラダと焼き野菜、エビが5匹にステーキが150グラムで5千円程度という価格設定からすればリーズナブル。都心のホテルの鉄板焼は客単価数万円があたりまえということを考えると悪くないディールかもしれません。
さて冒頭の事故現場であるガーリックライス。「火山焼き」については「二度と行わない」と宣言されていたので、鉄板の上でグズグズと混ぜ合わせるだけです。出来損ないのガーリックピラフですが、ニンニクの風味と肉汁を吸ってそこそこ美味しい。まあ、ニンニクを多用した料理は何でもそれなりに美味しくなるものです。
衛生面や日本語が通じにくい点など不安を抱えながらの食事でしたが、5千円かそこらの食事としては悪くないクオリティに感じました。少なくとも観光客を相手にする一度きりの関係としては良心的とも言える食材選びでしょう。

残るは安全性ですね。冒頭に記した事件につき、責任を負うべきなのは店舗ひいては運営会社であることは議論の余地はありません。しかしながらSNS全盛の現代、もっと派手な料理を、もっと過激なパフォーマンスを、もっと刺激的な絵面を、という風潮が強まっていることも否定できないことも確かです。スカイダイビングやバンジージャンプのように、食事前に一筆書かせるレストランが出現する日も近いかもしれません。

もうインスタ映えとかやめようぜ。プレゼンテーションも大切だけど、美味しいことには敵わないのだから。

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