世界的建築家、ムッシュ坂茂が設計を手掛けたホテル「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」。庄内地方の水田に浮かぶホテルとして話題となりました。立地はバリ不便で車でしか訪れることはできず、鶴岡駅からもタクシーで10分近くを要します。
共用棟から入り階段を上がってすぐがロビー階。なるほど屋根に円みを持たせたフォルムは金沢の「レ・トネル(Les Tonnelles)」と同様にムッシュ坂茂らしい雰囲気です。
客室数は100をゆうに超えるのですが、レセプションカウンターがふたつしか無くチェックイン・チェックアウト時には行列必至。それでもハコありきのホテルなのでカウンターを増設するなどといった無粋な行為に出ることは難しいかもしれません。
いちばん安い部屋を予約していたので、客室は至って簡素。それでも一般的なビジネスホテルほどの機能性は有しています。
基礎部やコア部分以外は木造といった特殊な構造に由来するのか、足音や物音が異常に響くのが難点。気になる方は上階の角部屋を予約すると良いでしょう。クローゼット兼イス兼テレビ台兼の、効率的な収納を誇る家具。エアコンも冷蔵庫もセーフティボックスも何もかもこの箱に収納されており忍者屋敷のようです。
ウェットエリアは小綺麗な単身者マンションのそれといったところ。簡素で機能的であり、清潔。アメニティは東横インほどのものしか用意されていないので、肌ケアセットは必ず持参しましょう。お手洗いは独立型。80-00年代に完成したホテルはバストイレ一体型が多いので、なるほど今風といった印象です。
テラスはあるにはあるのですが、ちょうど料飲施設の排気口が目の前で何やら臭いしゴウンゴウンうるさいしで、けっきょくこの時しか窓を開けることはありませんでした。これはあまりにロマンに欠けるので、多少の追加料金でも水田ビューをしてしたほうが良いでしょう。
部屋は簡素ですが、共用設備のデザインはさすがの一言。例えば共用棟にあるテラスは庄内平野の水田を一望することができ、無駄にweb会議をしている出張族が何人もいました。ちなみにネット上の口コミでは「wifiが繋がらない!」と発狂している方が散見されましたが、私は自室でも共用部でも普通に下りで30Mbpsは確保できていました。また当館は本に凝っているのが特長的であり、その選書をブックディレクターなる方にお願いしているそうです(そういう職業があることを初めて知った)。
共用棟のライブラリ以外にも何部屋か用意されており、ヒマを持て余すということはまずありません。
ショップ(土産物屋)もスタイリッシュで、山形庄内の特産品を綺麗にディスプレイしています。酒やツマミも豊富に取りそろえられており価格設定も悪くないので、ここで買って部屋で酒盛りするのも良いでしょう。
スパ棟地階にあるフィットネスセンター。有酸素系のマシンが殆どで筋トレ系のものが少ないのは残念ですが、まあ、100室かそこらのホテルという意味ではこんなものかもしれません。
大浴場は天然温泉で、内湯と露天風呂にサウナも用意されています(写真は公式ウェブサイトより)。私は温泉について全然詳しくないので多くを語ることはできませんが、トロみのないサラサラしたお湯だったので、素人的には「わあ!温泉だ!」という感動はありませんでした。夕食は車で外に食べに出たので、帰投後は酒が足りないと「SAKE LOUNGE」へ。山形庄内の地酒と県産ワインをセルフで楽しむ空間です。いずれの酒も60ミリリットル500円と、まあこんなもんでしょうか。酒にまつわる本が妙に取りそろえられており、ブックディレクターの仕事以上のアルコール愛が感じられます。
朝食はビュッフェスタイルで、地元の食材や郷土料理を意識したものが並んでいます。ラインナップそのものは豊富ではありませんが、1泊1万円で泊まれるホテルという意味ではこんなものかもしれません。
ただ、山形の料理は何やら茶色のモノばっかしで映えないですね。「芋煮会」がエンターテインメントとして成立する土地柄なので、仕方ないと言えば仕方ないかもしれません。ちなみに朝食会場として1階も利用することができるのですが、みんな面倒臭がって(ビュッフェ台から料理を持って階段を下りる必要がある)誰も使用していないので、静かに食事を楽しみたい方は1階がオススメです。
興味深いホテルでした。ネット上の口コミでは「話題のホテルだが部屋そのものは安普請で素っ気ない」のような厳しい意見が飛び交いますが、まあ、1万円台から泊まれるホテルですし、そのあたりは過剰な期待をしないで訪れると良いでしょう。何より当館は水田を含めた全体のランドスケープを楽しむ施設であり、晴耕雨読を楽しむための文化施設ぐらいの心づもりでいるくらいが丁度良いです。
「キッズドームソライ」という全天候型の児童教育施設も隣接していますし、車で20分の「加茂水族館」とセットで訪れるとお父さんの株が上がるかもしれません。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。