店内は本気を出せば30人席ぐらい作れそうなキャパですが、ゆとりを持った設計であり、厨房を取り囲むL字型のカウンター席だけに留めています。光源は蝋燭の灯りのみで秘密結社の秘密の会合のようです。
ちなみに当店で用いる調味料は塩のみと、蛮勇とも言える試み。食材の可能性を極限にまでディグる調理法であり、ニューヨークの最先端の先端のようなコンセプトです。
さっそくスペシャリテのトマト。ゲストの来店日時にあわせて美味しさマックスとなるよう熟れさせているそうで、なるほどトマトそのものの味が濃く、フランスでは果物と捉えられている向きも納得です。
イカスミのカナッペ。調味料は塩だけですが旨味つよつよの食材なので物足りなさは微塵も感じさせません。ちなみに土台のパンやチーズも自家製だそうです。
ガザミのスープ。地元のカニだそうで、独特の泥臭い風味に敬遠されることも多いそうなのですが、当店のそれは質も良く下処理もしっかりとなされており、カニの美味しいところだけを堪能することができます。
自家製のパンにはジャガイモが練り込まれており滋味あふれる味わい。先の濃厚なスープを拭って食べるに最適です。
ニシンのフライ。ひとり100グラムはありそうな大判サイズであり食べ応え抜群。ライムで和えたリンゴの爽やかな酸味と共に、思いのほか軽々と食べ切ることができます。ちなみにシェフのご実家は鮮魚店だそうで魚の取り扱いについてはお家芸といったところでしょう。
夜光貝。言わずと知れた沖縄の高級食材であり、ダイバーが海中で見つけて黙って持って帰ろうかと盛り上がる貝です(けっきょく持って帰らないけど)。このお皿はべらぼうに美味しいですねえ。夜光貝の複雑な旨味と甘味に濃縮されたバジルの風味が良く合います。メインは牛肉の煮込み。首あたりの部位を丁寧に煮込みました。パッションフルーツも併せており酸味が強く、酢豚のパイナップル的な郷愁を誘うひと皿です。量もたっぷり。
〆にレバーのテリーヌを炙る。表面がバリっとキャラメリゼされており、ワインにも良く合い、おつまみともスイーツとも捉えられるひと品です。
デザートは桃のシャーベット。こちらも砂糖は用いておらず、桃の糖度のみで勝負します。桃よりも桃の味がする。罪悪感ナシにスイスイ食べることができるので、樽ごと買って自宅の冷蔵庫に常備したいくらいです。
以上を食べ、ワインを楽しんで2万円。ワインはジャンジャン注ぎ足ししてくれるので実質飲み放題であることを考えると、良く飲む方にとってはお値打ちかもしれません。一方で、やや客に緊張を強いるコンセプトでもありお酒が飲めない人には厳しい環境でもあるので、紹介制とする意義のあるお店に感じました。
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