新潟浦島 小平(にいがたうらしま こへい)/新潟駅

新潟駅の南口から歩いてすぐの場所にある「新潟浦島 小平(にいがたうらしま こへい)」。佐渡のスモールラグジュアリーホテル「Ryokan浦島」で腕を振るった料理長が暖簾分けという形で独立です。
店内は床にもカウンターにも畳が用いられており身体によく馴染みます。なのですが、飲み物が入った冷蔵庫が青白く光っており、クラブのバーカウンターのように見えなくもありません。ちなみにお店には靴を脱いで上がるので、冬のゴッツイ靴を脱ぐ手間や裸足などはアレなのでご注意を。
アルコールは1杯千円前後から始まります。生ビールのグラスが薄張りでサイズが大きくめちゃんこ美味しい。佐渡の日本酒は1合千円強といったところでした。
先付にトウモロコシのゼリー(?)。ミンチにしたトウモロコシの絞り汁を固めたものだそうで、悪くはないのですが、ここは普通にすり流しで良いと思う。「お味はいかがですか?」と大将からコメントを求められるのですが、1回の表から荒れるのも何なので無言で作り笑いを浮かべる私。
魚介類は佐渡から直送。キジハタと南蛮エビのお造りであり、とりわけキチハタの力強い食感とにじみ出る旨味が心に残りました。「お口に合いましたか?」と大将から感想を問われ、ここは大きく頷く私。
続いて佐渡沖で獲れたマグロにアカイカ。美味しいのですが、ちょっとこのあたりから「お味はいかがですか?」と、いちいち感想を求められるのが苦痛になってきました。その料理が美味しいかどうかなんて、作ってる本人が一番わかってるんとちゃうの?
お椀は焼きアスパラにエビしんじょう。スープにつき、我々が入店してからマシンで鰹節を削り始めるという意識の高さなのですが、またしても「お味はいかがですか?」。しかも聞いて来るタイミングが変で、私が連れと楽しくバチェロレッテの話で盛り上がっている最中に「いかがですか?」とカットインしてきたので、尾崎美紀に対してのコメントを求められているのかと一瞬固まってしまいました。
八寸。左上のトマトの中にはカニがギッチギチに詰まっており豪華。やはりここでも「お口にあいますか?」と問われるので、これはもう美味しいですと言わないと開放してもらえないと判断し、結果、「美味しいですね」と言わされました。
焼き物はタカナバチメ。このあたりで食べられる魚だそうで、色んな呼称があるそうです。先ほど「美味しいです」と声に出して告げたしこれでようやく食事に集中できる、と思いきや、今度は我々が何処から来て何処へ行くのか、新潟に来た動機や当店を知ることとなった情報入手経路などの事情聴取が始まります。うんざりだ。私はデートに来たのであって、初対面の他人にお世辞を言ったり、ましてや取り調べを受けに来たわけではない。

あと連れの女性のことを勝手に「奥さん」呼ばわりするのはどうなんだろう。我々がキャピュレット家とモンタギュー家の関係であり、これが結ばれぬ恋の最期のデートだったら泣いていたかもしれません。
煮物という扱いでしょうか、佐渡の豚肉を蒸し煮(?)したお料理。これは素直に美味しいですね、クッキリと輪郭のある調味であり、深みのある豚肉の味覚に良く合います。「お味はいかがですか?」と、何でこのタイミングでは聞いて来ないっ!いま来いよ!
ゴハンは佐渡産のお米だそうですが、こちらについては「お味はいかがですか?」とコメントを求められました。前衛的でチャレンジングな試みについてであれば感想を聞かれるのもまだ理解できますが、白米についてあれこれ聞かれてもメンディーです。
杏仁豆腐調のデザートを流し込み、逃げるように退店。お食事だけであれば5,500円と悪くない価格設定ですが、それを超える精神的苦痛が続いたため、あたしちょっともう無理かもしれません。悪夢とも言えるランチでした。
私の外食の目的は、同伴者との会話と食事そのものを楽しむことであり、お店の方や隣客など赤の他人に話しかけられるのを好みません。基本的に放っておいてもらって、何か用があってこっちからお願いすれば対応してもらえるという、深夜便のCAぐらいの距離感を最も好みます。

一方で、お店の方や隣客に話しかけることを一丁目一番地としているゲストが存在することも事実であり、「客に何か話かけなければならない」といった強迫観念に囚われているサービス業従事者が多いことも理解はしています。今回はそれらの歯車が上手くかみ合わなかった結果に基づく悲劇でしょう。

客と店は運命共同体。だがしかし、心中は御免だ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。