くりゑンテkawabata(くりえんてカワバタ)/ひがし茶屋街(金沢)

金沢屈指の観光地、ひがし茶屋街にある「くりゑンテkawabata(くりえんてカワバタ)」。公共交通機関でのアクセスは意外に悪いので、観光客は金沢駅からタクシーで訪れると良いでしょう。10分で千円程度です。
大正時代の町家を改装した建屋であり照明は暗め。2階は個室になっており貸切もできるようです。雰囲気のある内装だけでなく、家具やアート作品、食器に至るまで哲学を感じさせるインテリアです。
最初に「kawabata最中」。パリっとした外皮の内側にはスモークしたマスやきたあかりのマッシュポテトが詰め込まれており万人受けする美味しさです。色とりどりのお花やフルーツも組み込まれており、料理人の美意識を感じさせるアミューズでした。
続いてロワイヤル(洋風茶碗蒸し)なのですが、恐らくは人生で一番美味しいロワイヤルかもしれません。かきたま風に卵黄の風味が支配的な生地に地物のハマグリやアワビ、新ギンナンといった珍味が百花繚乱。トリュフの風味も正しい用途でありパーフェクトな美味しさです。
前菜と言うべきか八寸と言うべきか、魅力的なプレゼンテーションで小鉢がズラり。ちなみに川端員意宜シェフはスペインで仕事をしていたこともあるそうで、このあたりのセンスはその経験が活きているのかもしれません。
能登牛のローストビーフ。裏側にはゴボウやら何やらのリエットも置かれており、このほんんの小さな小鉢のためにそこまで手をかけるのかと舌を巻く。
ニンジンはスープというべきか密度の高い泡状のペーストというべきか、甘くすれば前衛的なスイーツのような舌ざわりです。
アワビはその肝のソースと共に頂きます。主役級の食材をこんな脇役ポジに置いてしまうだなんて贅沢の極みです。
タコは和食で言うところの柔らか煮といったところでしょうか。極太の足にじっとりと味が沁みており堪らない美味しさ。先のアワビと共に日本酒が欲しくなる逸品です。
何とお造りまで出てきました。ヒラメにアジにボタンエビ(だっけ?)。それでも盛り付けて出したというわけでなく、発酵(だっけ?)やら何やら欧米系の工夫を加えており、east meets westといったひと品です。
お魚料理は甘鯛。白身魚ながら厚みのある味覚であり、またそれを凌駕するほど濃厚な甘海老のビスクソースが特長的。ムース状態となった部分もたっぷり仕込まれており、様々な食感と味覚を楽しむひと皿です。
パンも美味しいですねえ。左はクルミ、右はミニサイズのフランスパンといった仕様であり、クルミのパンなどそれ単品で食べて充分に料理として成立するクオリティです。
メインディッシュはA5和牛のフィレ肉。備長炭でじっくりと炭火焼きしており、穏やかな火の通りとそのスモーキーな風味が食欲を掻き立てます。付け合わせの野菜たちにも愛情が感じられる旨さがありました。
デザートはピスタチオを生地に練り込んだバスクチーズケーキにフランボワーズのアイスクリームと細部に拘った逸品。ただし味覚の構成要素が多く人に拠っては難解に感じてしまう人もいるかもしれません。
食後の小菓子も当然に手作り。中々にどっしりとした食べ応えであり、すっかり満腹です。
以上のコース料理が2万円弱で、ふたりで1本ワインを飲んでお会計はひとりあたり2.5万円といったところ。ベースはフランス料理ですがどことなく和のニュアンスも感じられ、ある種のフュージョン料理にも感じられました。それでも巷間に流布する見てくれだけのなんちゃってフュージョン料理とは別格の美味しさなので、フュージョンやイノベーティブなどチープな言葉で分類するのは避けた方が良いかもしれません。

いずれにせよ、何料理かはさておき、純粋に美味しい食事でした。

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