御料理 古川(おりょうり ふるかわ)/博多

2018年7月に暖簾を掲げ、翌年のミシュランで2ツ星を獲得した「御料理 古川(おりょうり ふるかわ)」。博多駅から徒歩15分、キャナルシティから徒歩10分に位置し、駐車場を抜けたマンションの1階という珍しい環境です。
店内はカウンターが6-7席に個室がふたつ。個室であれば子連れでもOKとのこと。

古川誠シェフは太宰府出身。大阪の「味吉兆」などで経験を積んだのち、福岡では「俺の割烹 博多中洲」の料理長を経て当店を開業。物腰が柔らかくゲストに緊張を強いない素敵な接客です。
飲み物には値段入りのメニュー表が用意されており、ビールは千円を切り日本酒も千円強ほどから始まります。このクラスの飲食店としては控えめな価格設定と言えるでしょう。
まずはキンキンに冷えた料理から。お出汁の風味たっぷりのジュレに毛ガニやナス、ずいき等が含まれています。たいへん暑い中「グランドハイアット福岡」から歩いてきたためホットホットだったのですが、このひと品で生き返りました。
お椀はハモにじゅんさい、葛切り。スープが美味しいですねえ。先のジュレの時点で私好みかもしれないと考えていたのですが、その予感が確信に変わりました。葛切りも魅力的。私は甘いタレでしか食べたことのない食材だったのですが、こういった食べ方も乙なものです。
お造りはアマダイにアオリイカ、ノドグロ。いずれも近海物であり旅行者としては嬉しくなる瞬間です。ノドグロの溶けるような脂が最高に美味しい。
お凌ぎは鰻の蒲焼の手巻き寿司風。甘味強めのバリっとした調味で単刀直入な味わい。シャリはもう少しハッキリした酸味があったほうが私好みかもしれません。
八寸がクール。私の腕前では上手く写真におさめられないほど立体的でクールなプレゼンテーション。このとき私の胸は潮が満ちるように高まりました。
琵琶湖の鮎を塩焼きで。マキノの「湖里庵(こりあん)」で「琵琶湖の鮎は動物性のプランクトンを食べて育つので、苔を食べて育った青っぽい爽やかな味わいと異なる」と説明を受けましたが、なるほどその通りコッテリと迫力のある味覚です。
茶碗蒸し?と思いきや、上質な湯葉が満ち満ちています。中にはたっぷりの万願寺とうがらしにナス、対馬の煮穴子。具材それぞれの味覚を湯葉の風味で上手に取りまとめています。
〆のお食事は宮崎のゴールドラッシュを用いたトウモロコシごはん。粒の食感がハッキリしたトウモロコシであり、シャクっとした食感と強い甘味を楽しみます。そのままでとても美味しいので、お新香と和牛のしぐれ煮は日本酒のお供として楽しむという贅沢。
甘味も凝っていて、とりわけイチヂクのシャーベット的な氷菓が絶品。八女の抹茶にお茶菓子という締めくくりも日本料理店として素晴らしい演出です。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は2万円を切りました。わおー、これは大変お値打ちですねえ。銀座あたりであれば倍近く請求されてもおかしくない食後感です。ランチなんて6千円でやってるんだぜ。

また料理が美味しいのは当然として、お店の雰囲気が大変良いですね。物腰柔らかな店主に元気いっぱいのジュニアたち。みなテキパキと動き皿出しのテンポも完璧。何とも居心地の良い食事でした。

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