天草屈指の観光地「大江天主堂」と「カトリック﨑津教会」の間にある「平野屋旅館」。本館・新館に加え、食事を摂るレストラン棟があり、そのレストラン棟は「辨(べん)」としてビジターも受け入れています。何気に食堂として50年近い歴史があるそうな。
宿泊の我々は特別室(?)として金庫の中へと案内されます。何でもこの建物は昔、JAの支所だったようで、その名残として金庫が現存しているようです。そこを倉庫にするのではなく、そこで食事をさせようという斬新なアイデアです。
中に入ると、テーブルの上にはちょっと信じられないサイズの舟盛りが鎮座していました。これで2人前。東京だと20人の宴会でもこんな立派な船盛は出て来ないでしょう。お魚はオキサワラ・タイ・シイラ・ネリゴ。ネリゴとはカンパチの仲間とのことですが、その説明が「レリゴ、レリゴ」に聞こえ、食事のあいだアナ雪のテーマ曲が脳内で流れっぱなしになりました。
こちらは魚を湯通しし、ブロッコリーと共に甘酸っぱく食べるもの。舟盛りの単調な味わいから味覚に変化があってとても嬉しい。
焼魚はコウコダイ。さすがに2人で1匹ですが、その1匹が座布団みたいに大きいので、A面しか食べることができませんでした。それでも翌日の朝食にB面を味変したものが供されたので、罪悪感が上手に溶けていきます。
お口直しに長芋の酢の物。なるほどさっぱりとした味覚であり、味蕾が休まります。ちなみにネット上の口コミで「口直しにちゃんぽんが出てきた(ちゃんぽんは天草の名物)」という喜劇も散見されたので、この地域では口直しの定義の幅が広いのかもしれません。
どういうロジックなのか、冒頭の生ビールとこの白ワイン1本をサービスでお出し頂けました。これだけ飲み食いして、小綺麗な部屋にステイして、翌日の膨大な朝食も堪能して1泊3万円(ひとりあたり1.5万円)というのは破格。老後は天草で暮らすことも視野に入れたいと思います。
「料理宿やまざき」の夕食では度肝を抜かれましたが、当館の夕食はまた違ったベクトルの驚きです。ショッキングと表現してもいい、そんな旅館のディナーでした。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。