西荻マダム御用達のフレンチ「サン・ル・スー(SANS LE SOU)」。1995年オープンの老舗であり、長年に渡って地元に愛されているお店です。食べログでは百名店に選出。店名はフランス語で「一文無し」という意味であり、シェフとマダムがフランス修行中に一文無しになるまで食べ歩いたことが由来だそうです。
商店街(?)の2階にあるテナントなのですが店内は思いのほか広く、厨房に面したカウンター席が4席にダイニングは20席近くありそうです。立ち位置としてはビストロですがバリっとクロスが張られているのが印象的。
金子淑光シェフは福島県出身。実家は洋食屋であるため自然と料理の世界に入り、都内のいくつかのレストランで腕を磨いたのちマダムと共に渡仏。フランスじゅうを旅しながら様々なレストランで経験を積んだそうです。
ワインが安いですねえ。モノによっては酒屋で買うのとそう変わらない価格設定です。グラスであっても1杯千円程度であり、シェフがフランス料理大好きマンであることがひしひしと伝わって来ます。コースは7千円ほどの、前菜とメインをそれぞれ選ぶプリフィクススタイルなのですが、それに加えてアミューズもきちんと供されます。いずれも手抜きの無しの逸品であり、グジェールだけでお茶を濁す都心の自称フランス料理店は見習って欲しいところです。
小さなヴィシソワーズも出てきました。ジャガイモ本来の甘味が心地よく、滋味あふれる味わいです。私は前菜に「ズワイガニと帆立のタルタル」を注文。帆立の清らかな甘味にカニのどっしりとした旨味が組み合わさってベリーナイス。スパークリングワインにピッタリです。
パンは自家製のものが4-5種類も用意されていました。いずれも凝った味わいでありパン単体で美味しい。退店時にはお土産としても持たせてくれ、ココめっちゃええ店やん。メインディッシュにはカスレをお願いしました。ビストロ料理の王道であり、たっぷりの動物性脂肪が白いんげん豆に沁みわたり、背徳的な味覚です。お肉もソーセージに鴨のコンフィ、豚足・豚耳と迫力のある味覚が続き、ワインが進むのなんのって。
連れはロッシーニをオーダーしたのですが、これは直ちに憧れるサイズ感ですねえ。牛フィレ肉の分厚さに加え、見るからに濃厚なソースとお祭り騒ぎなひと皿です。
デザートにはクレープ・シュゼットをお願いしました。オレンジの美味しいエキスをたっぷり吸ったクレープにヘーゼルナッツ風味のアイスクリームが染み入る旨さです。量もたっぷりで食べ応えがありました。
お茶菓子も気合が入っていて、ラデュレもかくやというサイズ感のマカロンに圧倒されます。素晴らしいビストロでした。クラシックで正統的なフランス料理がビシっとオンリストされており、そのいずれもが文句なしに美味しい。ワインも良心的な価格設定で、ビストロの鏡と言えるお店でしょう。フランス料理文化を愛するグルメ仲間と共にどうぞ。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- naoto.K(ナオトケイ)/神田錦町 ←近い将来、当店は必ず超予約困難になります。かけてもいい。
- 銀座 大石/銀座 ←自分が働くならこういう職場。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ)/西麻布 ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- ア・ニュ Shohei Shimono/広尾 ←リニューアルしてリベラルに、旨けりゃなんでもいいじゃん的に。
- ラフィナージュ(L'affinage)/銀座 ←王道中の王道。銀座とは考えられない値付け。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも。
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人。
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- エステール(ESTERRE)/大手町 ←料理もサービスもパーフェクト。外せない食事ならココ。
- ル マルタン ペシュール(LE MARTIN PECHEUR)/吹上(名古屋) ←フランス料理という文化に対する並々ならぬ愛情を感じました。