恐らく日本で最も鰻屋が集中する地域、成田。約800メートルの成田参道に鰻屋が60店も並んでいるそうです。ちなみにこの辺りに鰻料理専門店が異常に多いのは、もともと印旛沼で獲れた川魚料理、特に鰻料理が名物の地域であり、江戸時代に成田山詣でとセットで訪れるのが流行ったからだそうです。
その中でも「駿河屋(するがや)」と並んでトップクラスの人気を誇る「川豊 本店(かわとよ)」。1910年創業の老舗であり、建物は国の登録有形文化財に登録されています。当店が本店でゲストの大半は旅行者。地元民は大きな駐車場のある別館か西口館に行く事が殆どだそうです。「駿河屋(するがや)」に比べると営業時間が長いのが良いですね(夏季は18時ラストオーダー)。
入店時に注文し食券を手渡され、席に着くと食券と引き換えに食事が届くというシステマティックなオペレーション。従業員はテキパキと動き一分の隙もないのですが、丁寧ではあるものの温かみは感じられず非常にビジネスライクに感じました。一方で、待ち時間は「駿河屋(するがや)」よりも短いので、そのあたりはトレードオフの関係なのかもしれません。
まずは「上白焼」。1尾を用いており3,400円という価格設定。「駿河屋(するがや)」のそれに比べると蒸しの時間が長いのか、良く言えばフワフワとした食感、悪く言えば旨味のエキスが抜けています。このあたりの好みは人それぞれでしょう。
お新香はイマイチですね。沢庵の妙な黄色から察するに自家製ではなく仕入品なのかもしれません。ちなみに肝吸いは鰻重に付随せず別料金でした。主題の「特上うな重」は1.5尾を用いて5,100円。いわゆる関東風の調理であり、蒸しの工程の影響が支配的です。柔らかくふっくらと香ばしいのですが、やはり私は関西系、例えば「う嵐」のようなムキムキマッチョな弾力を好むので、白焼きと似たような感想でした。
ただし同じ関東系の調理という意味では大変良心的な価格設定であり、都心のミシュランを取るような高級店よりも全然美味しいです。
当店に興味はあるものの成田へ行くのは空港までで精一杯という方は、千葉県成田市のふるさと納税を活用し、返礼品として当店の鰻をゲットするのも一案かもしれません。バリっとした食感で勝負しているわけではないので、家庭でのリヒートでも問題ないでしょう。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。