鮨 いくた/片町(金沢)

金沢屈指の繁華街、片町に開業した「鮨 いくた」。オープンは2020年9月と新しいお店です。場所はB級グルメの王者「宇宙軒食堂」のはす向かいであり、フーディーな方には「一献(いっこん)」の跡地と言えばわかり易いでしょうか。
店内はと「一献(いっこん)」変わらずL字型のカウンターで、壁の色やら調光やら何かと明るく健康的になった印象。生田崇シェフは金沢が誇る「みつ川」グループで長年腕を磨いた方であり、気さくなニイチャンといった居心地の良い接客です。
まずはツマミでマハタ。たいへん脂がのった個体であり、軽く炙って香ばしいかおりと凝縮感を楽しみます。
タイラガイも軽く炙って海苔で挟んで磯辺焼き風味に。タイラガイとは巨大すぎる貝であり風味も大味になりがちですが、薄切りにして炙って海苔で挟むとは、このタネを食べる手法としては正解のひとつかもしれません。
富山は新湊のボタンエビ。目を剥くような特大サイズであり、プリップリのムッチムチ。とろけるような甘味があり、卵の風味がそのコクを後押しします。ボタンエビとは北海道の専売特許ではないのだ。
タコはじっくりと煮て、もちろん日本酒と共に頂きます。ワサビとカラシの2パターンで食べる仕組みが面白い。
千切りしたカボチャ(?)をアオリイカでくるんと巻いて、オリーブオイルに浸して頂きます。カボチャの食感とイカの甘味、オリーブオイルの香りが良く合う。
毛ガニ。ギッチギチに身の詰まったワガママボディであり、甲殻類アレルギーであればプッツンしそうな濃い味覚。
にぎりに入ります。まずはマダイ。コリコリとしっかりした歯ごたえながら旨味も熟しており、日本酒が進む進む。
ガリは塊をその場でスライスし皿に並べるオシャレ仕様。シャリは赤酢を感じるコクのあるスタイルであり私好み。ちなみに大将は釣りキチでもあり、自ら海に出て釣ったその場で処理をするという最強の仕入れ先です。
アカイカ。いわゆる剣先イカなのですが、同じ魚種とは思えないほど奥行きのある味わい。細かく包丁を入れた上で紫蘇を挟みこんでおり、にぎりというよりもひとつの完成した料理に近い1カンです。
ソウダガツオはフレッシュにして濃厚。やや焦げた皮目の香りも食欲をそそります。
カワハギが美味しいですね。身のコッテリとした味覚は当然として、その身のジュブジュブとした味覚にすっかり酒が進んでしまいました。
メジマグロは酸味が穏やかで、アニョードレを彷彿とさせるクセのない味わい。
コハダは酢の酸味を感じつつも身は厚く脂も多いので、全体としてバランスよく感じました。
シマエビ。北陸が誇る珍味であり、アマエビほどクドくなくエレガントな甘味が特長的です。
トリガイ。それほど好きではないタネなのですが、この個体は別格。特有の臭みなどは一切なく、また、軽く炙って甘味が増しており、何とも艶っぽい味覚です。
巻物はうなきゅう。コッテリとした鰻の風味と爽やかなキュウリの味覚が見事に調和しています。
お椀は先のアマエビのヘッダ部をスープ仕立てに。エビの一番美味しいところを上手に表現しており、余韻の長い味覚でした。

以上を食べ、軽く飲んでお会計は1.8万円ほど。東京で同クオリティのものを楽しめば倍請求されても文句の言えない質および量でした。

まだまだ新しいお店なので、このタイミングで出逢えた私は幸せ者だ。近い将来、金沢屈指の予約の取れない鮨屋になること間違いなし。オススメです。

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「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。