かつ丼 ちよ松 道頓堀本店/難波

元力士の店主が作り「日本一分厚い」と主張する道頓堀「かつ丼 ちよ松」。2022年春にオープンし、その絵面がSNSを中心に話題となりランチタイムでは大行列。私は平日の11:30頃に通りがかり待ち人が2-3人だったのでこれはチャンスと勢いで入店しましたが、それでも30分近く待ちました。
店内は厨房をぐるりと取り囲むコの字型カウンターで12席(写真はPR TIMESにおけるプレスリリースより)。ってあれ?中で食べてるの3人だけじゃん。他の9席空いてるし。従業員は2人なので片づけに手が回っていないだけかもしれませんが、行列偽装とは言わないまでもあまり感心しない運用です。
オーダーシートに記入して提出して注文するシステムです。小料理屋ならまだしも、なぜ町のトンカツ屋で値段が書かれていないのでしょうか。もちろん立てかけてあるメニュー表とにらめっこして読み解けば価格は判明するのですが、色々と違和感を覚えました。
私は「上5センチとじないかつ丼(国産豚肉約350グラム)」に卵を1つ追加しピクルスを大盛りに。併せて「お口さっぱりミネストローネスープ」も注文し、お会計は2,260円です
。豚肉は事前に低温調理し熱を通しているので、注文からものの5分で提供されました。
主題の「上5センチとじないかつ丼(国産豚肉約350グラム)」。「日本一分厚い」と主張するだけあって分厚いことは分厚いのですが、これ、本当に5センチもあるかなあ。私の親指の長さはちょうど5センチなのですが、それと比べても明らかに短く見えました。もしかしたら厚さじゃなくて縦方向に5センチって意味なのかもしれません。
トンカツは不味くもなく旨くもないといったところ。筋と脂が多い一方で、長時間の加熱がたたってか肉そのもののジューシーさは失われており、まるで保存食を食べているかのようです。

もちろん価格設定を考えれば妥当な味わいとも言え、むしろ350グラムのカツが乗ったカツ丼が1,750円というのはかなりの企業努力でしょう。しかしながら同じ費用を投じれば「かつや」や「大戸屋」でも似たような費用対質量は実現できるという意見もあります(話は逸れますが「大戸屋」のトンカツは値段を考えれば大変おいしい)。
豚肉の下に玉子エリアがあります。そう、当店のかつ丼は玉子でとじるのではなく、いったん玉子丼を作った上にトンカツをトッピングするという仕様です。
「お口さっぱりミネストローネ」は150円とお値打ち。おそらくトマト缶をザザっと煮込んだだけのものでありフラットな味覚ですが、酸味は豊かなのでトンカツの油脂をマスキングするにちょうど良かった。
「ピクルス大盛」は追加で200円なのですが、なんとも貧相な大盛がやってきました。これで大盛ですかと念のため確認すると、デフォルトで1本のところ大盛にして3本になるとのことでした。
インスタ映えの申し子とも言えるカツ丼でした。個人的には同じお金を払って大阪でトンカツ食べるなら断然「とんかつ マンジェ」だなあ。もちろん味の好みは人それぞれですし、あの分厚いトンカツがドーンと出てくる瞬間の高揚感は何ものにも代え難いので、SNS時代におけるエンターテインメントとしては成立しているでしょう。性能の良いカメラを持ってどうぞ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。