和田屋(わたや、夕食)/白山(石川)

創業は江戸時代、150年以上の歴史を誇る料理旅館「和田屋(わたや)」。白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)の真隣で営業しており、駐車場が共用なのが面白い。ミシュラン1ツ星を獲得しており、ゴエミヨにも掲載されています。
宿泊するお部屋とは別に食事処を提供してくれます。当館は全てのお部屋に囲炉裏が用意されており、その場で川魚を焼いて食べるのが特長です。釣果にも拠りますが、6月~10月は鮎、10月~5月は岩魚が中心となるようです。
せっかくなので地元のお酒の限定品を頂きました。手取川のスパークリング日本酒で、綺麗な米の甘味が特徴的な銘酒です。
先付に滝川豆腐。涼しげな味覚であり、先の日本酒にピッタリです。
お椀は当館の地下から湧き出る地下水を用いているそうで、何とも繊細な味わい。ただし私は多少パンチのある味覚を好むので、もう少し攻めてくれても良かったです。
岩魚の昆布締めとウニ。川魚は海の魚に比べると生食に適さないことが多いですが、これは抜群に美味しいですねえ。川魚のポテンシャルを再確認したひと皿です。
ツキノワグマのルイベ。上質な脂がしっとりと旨く、これは鍋でたっぷり食べたいなと思わせるクオリティでした。
囲炉裏の準備が整いました。塩を振って焼くだけというシンプルな調理ではありますが、炭の爆ぜる音や脂の香りなどが心地よく、まさに五感で楽しむ料理です。
こちらは鮎素麺。干した鮎を軽く炙って、素麺と共に頂きます。素麺の清らかな味わいと鮎の苦みが良く合う。
主役の鮎の塩焼き。金沢は犀川の鮎に富山は神通川の鮎。神通川の鮎が抜群に美味しいですねえ。天然でここまで大きくなるものかと驚くサイズ感であり、それでいて身はフワフワとエアリー。先日の琵琶湖の動物的な味覚の鮎も良かったですが、今夜の鮎の中の鮎とも言うべき味覚に思わず目を細めてしまいます。
八寸が涼しげ。グリーンを基調に旬の味覚を詰め込んでおり、何ともセンスの良いプレゼンテーションです。
こちらは茶碗蒸し的な料理であり、スッポンのエキスとその肉がたっぷり詰まっています。生姜の風味もきいておりコクが強いのに爽やか。量もたっぷりで食べ応えのあるひと品です。
ステーキは鹿肉。鉄分を感じさせるパワフルな味覚。ちなみに当館は山の珍味推しであり、秋冬はジビエをたっぷり楽しめるそうです。次回は季節を変えて訪れてみよう。
お食事は鮎ごはん。
鮎が旨いのは当然として、ごはんそのものがめちゃんこ美味しいですねえ。味噌汁の味覚についても基本動作に無駄がなく、やはり名店と言われるお店はベースの味わいがしっかりしているのだ。
2杯目は自慢のお出汁でお茶漬け風にどうぞ、なんて言われるともう最高。当館の思想や哲学を余すところなく堪能しました。
〆に小菓子を頂きごちそうさまでした。

以上のコース料理が3万円(宿泊代金は別途)。この立地で1食3万円(+酒代)となると流石に気軽にはお邪魔できませんが、それでもあの鮎の旨さは芸術の域に達しており、費用対効果のような野暮な考えを持って臨むべきではないのかもしれません。それほど記憶に残る食事でした。
何より食後はそのまま布団にダイブできるのが良いですね。もちろん食事だけして帰るという選択肢も無くはないですが、酒抜きであの鮎を食べた後に運転なんてのは私のロマンチシズムに反する。贅沢な週末の舞台として泊りがけでどうぞ。

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「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。