すし、太郎。/御供所町(福岡)

中州の川沿いの屋台「紀文(きぶん)」の大将に勧められてお邪魔した「すし、太郎。」。呉服町駅から歩いて5分ほど、冷泉通り沿いにあるミシュラン星付きの鮨屋です。
店内はカウンター7-8席のみ。鮨屋にしては珍しくかなり照明を絞っています。それでいてイヤラシイ雰囲気にならないのはシェフの気風の良い雰囲気からでしょうか。

藤井太郎シェフは割烹料理店を経てバルセロナの日本料理店で経験を積み、帰国後は福岡市内で腕を磨き、2013年に当店を開業。店名からしてモーニング娘。世代なのかもしれません。
飲み物メニューは無いのですが、最終支払金額から逆算するに、ビールは千円程度、日本酒は1合千円強といったところでしょう。日本酒に併せて出されるやわらぎ水にも拘りがあって、超深いところから湧き出る天然水だそうです。
名刺代わりに赤身のにぎりがやって来ました。この日は沖縄のもので、瑞々しくも味わいはネットリ、それでいて余韻はサッパリ。出会って4秒で食べるに最適な爽やかさです。
続いて中トロ。程よく脂と溶け合い思わず笑みがこぼれる旨さです。私は1年のうち延べ3ヵ月以上を沖縄で過ごしているのですが、こんなに美味しいマグロは食べたことがありません。
ガリは大振りなカットでシャクシャクとした歯ざわり。シャリは赤酢をベースに色んなお酢をブレンドした上で、タネによってシャリを使い分けているそうです。
鮎。これは干物っぽくしているのかな?ここのところ塩焼き一辺倒で食傷気味だったので、また違ったアプローチには心躍ります。
白ウリのカミナリ干し。「カミナリ切り」といって、白ウリの芯を抜いて螺旋に切り、形が稲妻マークになるからそう呼ぶとのこと。世の中知らないことがいっぱいあるなあ。
ウミタケ。有明海の珍味とのことで、漁業期間が短く試験的に獲られるほどの量しか流通しないそう。軽く炙って頂くのですが、なるほど深みのある味わいで日本酒にピッタリです。
イサキの白子。これも初めて食べる食材。トロリとした舌ざわりで後を引く美味しさです。
赤ピーマンムースに毛ガニ。チーズをたっぷり振りかけて、鮨屋としてはかなり踏み込んだ料理です。しかしながら赤ピーマンの主張が強く、もう少し塩気や旨味が前面に出た方が私は好きかもしれません。
アンキモと長芋の手巻き寿司。シャクっとした長芋の歯ざわりにネットリとしたアンキモの味覚が追いかけて来る。
オコゼ特集。正肉(?)を中心に湯引きした肝やら何やら内臓がごちゃ混ぜに配置されており、ポン酢(?)でさっぱりと頂きます。これは抜群に美味しいですねえ。魚料理という範疇を超えている。本日一番のお皿です。
穴子はバリっと炙って程よく水分を飛ばし、パリパリサクサクと心地よいスナックです。脇に添えられた山ゴボウの味噌漬けも乙な味。
白子で活躍したイサキ。脂が乗っており霜降り状態で、脂の甘味を楽しむ逸品です。
ヤリイカはフレッシュながら舌に絡みつくような味わいであり美味。
煮蛤は煮汁なのかツメなのかが変わっていて、独特なオリエンタルな味わいを奏でます。これはこれでありよりのあり。
甘エビ。甘エビそのものの美味しさは当然として、これは焼いた殻を粉砕して散らしているのかなあ。かっぱえびせんを凝縮したような香ばしさが感じられました。
マアジ。かなり肥満した個体であり、まさに餅肌。でっぷりどっぷりと心から旨い。
藍島の赤ウニ。北九州が誇るブランド品であり、こんなに気前よく楽しめるのは地元ならではといったところでしょう。濃厚濃密な味わいであり、絶品としか言いようがありません。
シャコ。食感つよつよな個体であり、ムシャムシャとまるで肉を食べているかのよう。味わいにも奥行きがあり、長く長く咀嚼したくなるひと品です。
ヤイトガツオ。藁で軽く炙って香りが良く、やや滲み出た脂が食欲をそそります。舌の上で脂の甘さを楽しみ、思わず目を閉じてしまいます。
エビは現代アートのような造形で登場。背中側にシャリが詰まっており見た目も味わいも独特のバランス感覚です。
煮穴子は食べた側から消えてなくなる柔らかさ。先のバリっと焼いた穴子も良いですが、しっとりフラフワパターンも見逃せない美味しさです。
ギョクは甘味を抑え、卵の美味しさを前面に主張します。品質の良い卵を用いるからこその芸当でしょう。
お椀はシンプルに三つ葉・おあげ・じゅんさい。優しい味わいで胃袋がしっとりと落ち着いていきます。

以上を食べ、それなりに飲んでお会計は2万円強。地元の美味しい部分を堪能してこの支払い金額はリーズナブル。一斉スタートでもなく、何回転もすることもなく、本来レストランとはかくあるべしという居心地の良さがありました。

2時間以内に収まるので、滞在最終日に18時スタートでもワンチャン最終便に間に合います。福岡旅行の〆にどうぞ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。