長江SORAE(ソラエ)/屋島(高松)

源平合戦の舞台、讃岐屋島に佇む孤高の中華料理店「長江SORAE(ソラエ)」。西麻布で隆盛を誇った「麻布長江」のシェフがその店を弟子に譲り、ここ屋島の海辺の高台にリニューアルオープンです。
土地柄か非常にゆとりのある空間設計で、余裕のある円卓がいくつかに個室。音楽は流さず風の音や波の音、鳥のさえずりなどが当店のBGMです。

中華料理界のレジェンド長坂松夫シェフはホテル系の中華料理店で頭角を現し、高松を制し東京に進出し、高松へ凱旋。
私は運転があったのでアルコールはパス。様々な種類の中国茶が用意されており、そのいずれもが千円前後と良心的。ちなみに隣客が楽しんでいた自家製のジンジャエールなども美味しそうでした。
前菜はカニなのですが、土台の白いペーストはヤマイモとヨーグルトを混ぜたもの。うひょー、そんな組み合わせなんてあり得るんだと驚き、ありよりのありではないかと二度驚き。ピンクペッパーの華やかな香りもオシャレです。
前菜盛り合わせ。これまで大箱中心の道を歩んで来られたシェフが、20席ほどのゲストのために、これだけ手の込んだ料理を多品種用意されていて胸熱です。左上の棒棒鶏ふうの、だがしかし複雑な旨味のあるややこしいソースが心に残りました。
この料理は何て言うんだろう、豚肉とクワイの取り合わせであり、豚肉の脂のコクとクワイのシャキシャキ感が実に良く合う。味付けは酸っぱさがベースにあって、ところどころピリっと辛い。ありそうでない、新発見の味覚でした。量もたっぷり。
フカヒレの煮込み。フカヒレにつき、天下一品のスープ的な白湯で攻めるお店が殆どですが、当店は酸味を感じる爽やかな味わいです。先の料理もそうですが、当店は酸味を大切にしているのかもしれない。大振りのホタテも芯のある味わいです。
鶏肉をスパイシーに揚げ、北京ダックのようにクルクルと巻き込んで頂きます。万人受けする味覚であり、また、生地の質感を感じながらセルフで完成形まで持っていくのが楽しい。
〆は中華風のカレー。いや、主題はカレーではなく海老団子なのですが、そのカレー風の調味やクミンの香り、可愛らしく添えられたライスを含め、四捨五入するとカレーです。トロンとした食感が意外に胃袋に溜まります。
デザートはグラスに三層構造で、マンゴープリンに豆腐そして杏仁風味のスープ。別々に食べてよし混ぜ込んで食べてよし、わかり易く率直に美味しい甘味です。
食後にコーヒーも用意されています。中華料理店としては珍しい演出。以上のコースが5,500円で、お茶やらサービス料やらでひとりあたり7千円ほど。うわー、これは後悔。こんなにも素晴らしい食後感であれば、1万円の最高値コースにしておけば良かった。
何よりこの眺望が何よりのごちそうですね。この日は生憎の天気でしたが、それでも小豆島あたりまでは良く見え、天気の良い日は対岸の岡山まで見通せるそうです。昼に眺めを楽しみながら食事をするも良し、夜にテラス席で夕焼けに浸りながら食前酒を味わうも良し。様々な楽しみ方のある、素晴らしいレストランでした。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたいかた必読の書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。客に日本人は殆どいないのですが、コロナ禍で海外に行けない今、ある意味では海外旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。