慈華(itsuka)/外苑前

今風のチャイニーズ「慈華(itsuka)」。2019年12月にオープンした比較的新しいお店ながら2年連続1ツ星、ゴ・エ・ミヨにも掲載されています。場所は南青山で、バスケが弱そうなフレンチ「L'EAU(ロー)」のすぐ近く、ナリサワのバーと同じビルです。
黒を基調としたスタイリッシュな店内。河原町「VELROSIER (ベルロオジエ)」然り、最近の中華はこういう内装が流行っているのかもしれません。

田村亮介シェフはそのキャリアの開始から中国料理一本で、その道では有名な方。最近では麻布長江「香福筵」の厨房を長く預かっていました。
アルコールはよくわからんすね。ペアリングもあるのですが方向性がバランバランで哲学が感じられず、さすればボトルで注文しようとしてもスタッフに商品知識は無いに等しい。ワインリストを用意するのであれば、それなりに説明できるようになってから掲載すべきでしょう。
本題のお食事に参ります。まずは当店のシグネチャーディッシュである「運気の上がる前菜盛り合わせ」。縦置きの珍しいプレゼンテーションで、下から上へと昇り龍。ガラスの器に入った烏骨鶏とホタルイカをどないかしたムース(?)がバリ旨かった。
スープは清らかな味わいで心が洗われ、また底には菜の花のペーストが仕込まれており味の変化を楽しみます。ワンタンには特大のハマグリがインされており、こちらの旨味もナイスです。
サクラマスはお茶でスモークした上で頂きます。オリエンタルな薫香に発酵ピクルスの円やかな酸味が心地よく、味は多いものの完璧に調和した美味しさです。黄ニラのシャキシャキ感もいいですな。
釣りのアマダイ。禍々しい色合いのソースに後ずさりしますが、お料理そのものはエレガントな味わい。カレーっぽい風味も食欲をそそります。
ついさっきまで生きていた伊勢海老を豪快に頂きます。エビそのものの美味しさは勿論のこと、豆鼓や胡麻の風味がきいておりオシャレな味わい。花山椒をたっぷり散らして贅沢なひと皿です。
真打登場、気仙沼産は毛鹿鮫のフカヒレです。コッテリとした味わいで当然に美味。白米が欲しいなと思っていたところ本当に白米がやってきて、この時わたしは絶頂に達しました。
メインは木下牛という希少なブランド牛とのことですが、連れがお手洗いに行っている間の空席にポンと放置しそのあと説明に来ることも無いという、文永の役ぐらいキツい仕打ちを受けました。サービス料を10%も取るのであれば、テーブルをウォッチして厨房に状況を告げるぐらいのことはして欲しいものです。
〆の炭水化物は6種からの選択であり、いずれも美味しそうなのですが、ここは王道に担々麺を注文。濃厚でクリーミーなスープに、思いのほか太く歯ごたえのある麺が良く合う。安心安定の美味しさです。
デザートはシンプルですが、オレンジピール的に皮をドライさせたものがアクセントとして面白かった。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり5万円弱。料理については文句なく美味しく、高級食材も続いたため食事代が高くなるのは構いません。しかしながら、サービスの実力がそれに全く追いついていないのは問題ですね。飲んで食べて1万円程度の気楽な中華であれば私もうるさいことは言いませんが、このクラスのレストランで、この給仕の質でサービス料10%を取るのは図々しいと言わざるを得ません(総額10万円だからサービス料は1万円だ)。
グーグルで店名を検索すると、臆面もなく「青山の中華 接待に最適」と宣言されているのは大草原。このサービスレベルでは間違っても接待での利用は難しく、ランチに訪れ飲み物は水でいいです、みたいな使い方がベストなお店に感じました。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたいかた必読の書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。客に日本人は殆どいないのですが、コロナ禍で海外に行けない今、ある意味では海外旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。