八寸(はっすん)/祇園(京都)

祇園の日本料理店「八寸(はっすん)」。積極的にメディアに出ることはないのですが、ミシュラン1ツ星、食べログではブロンズメダルと百名店に選出されており、知る人ぞ知る名店です。渋いお店なのでインスタ女子が寄って来ず、結果として予約が取りやすいのが良いですな。
店内は厨房に面したカウンター席が10席ほどで、掘りごたつ式の個室もあるようです(写真は食べログ公式ページより)。一斉スタートなどという無粋なことはなく、ゲストの訪れるタイミング・食べるペースに合わせて料理が提供されます。

久保田完二シェフは京都府出身。目白の2ツ星「和幸」で腕を磨いたのち(トンカツじゃないよ)、お父様の後を継いだ2代目。ざっくばらんな雰囲気の方で、親戚のおじさんと世間話するような居心地の良さを提供してくれます。
ビールは瓶ビールのみで、この日の日本酒は3種と種類は少ない。最終支払金額から逆算するに、ビールは千円の日本酒は1合1,500円ぐらいでしょう。
入店してすぐに作業に取り掛かり瞬で供される先付。モッチリとした胡麻豆腐にウニをトッピング。間に忍ばせた岩海苔の磯の風味が乙な味。
八寸はコンパクトなプレゼンテーションですがセンスが良く、味もきちんと美味しい。レンコンに隠れていますがサーモンと卵黄(?)をコラボさせたひと品が記憶に残りました。チマキは鯛のお鮨です。
走りのハモ。湯洗いしてシンプルにサッパリと頂きます。シャリシャリと小気味いい骨切りサウンズと共に、ああ京都に来たなあとしみじみ。
お造りはカツオ、タイ、イカ。シンプルなプレゼンテーションですがいずれも最高品質。とりわけタイのクオリティが抜群で、歯を弾き返すような弾力に上品な旨味が心に残りました。
鮎はシンプルに塩焼きで。適度な旨味とほろ苦さがさけを誘います。付け合わせの行者ニンニクも香りが良く名脇役です。
炊き合わせはシイタケ、タイの子、ひろうす。シイタケの風味が強く官能的な味わい。ひろうすはお出汁をたっぷりと吸って実にジューシー。
山形からやってきた「しどけ(モミジガサ)」をおひたしで。初めて耳にする山菜であり力強い味わい。けっしてしどけないわけではありません。
甘鯛。バリっと炭火で焼いて、皮目の焦げたニュアンスと皮と身の間のジューシーな部分が魅力的。脂が甘いんだ。
端正な顔立ちの白ごはんでフィニッシュ。東京の派手派手な〆の炭水化物とは異なり、大人な締めくくりです。
食後は水菓子でお口を整えごちそうさまでした。以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり2.6万円。いずれの料理も実直な味わいであり、また、実直な価格設定と言えるでしょう。

何よりお店の雰囲気がいいですね。大将をはじめスタッフは皆きさくであり、一見であっても緊張感とは程遠い食体験。観光客が祇園で日本料理デビューするにはうってつけのお店です。ランチは1.1万円とさらにお値打ちなので、次回はお昼にお邪魔してみようかしら。

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