デリー(DELHI)/銀座

「ボンベイ」など都内のシャバシャバ系激辛カレーの総本山「デリー(DELHI)」。オープンは1956年と日本におけるカレー専門店の草分け。創業者は戦前にインドやパキスタン、スリランカなどに駐在し味覚を鍛え、帰国後にインドからスパイスを取り寄せカレーを再現し人気を博しました。食べログでは当然に百名店に選出されています。
創業の地、上野店とは異なり小綺麗な内装。グループ客が前提でテーブル席が多く席間にゆとりがあり、宴会で利用しても良いかもしれません。公式ウェブサイトには「お客様との距離が1cmでも近い方が、お客様の声を聞けるので、どの調理人にも必ずホールスタッフを経験させています」と記されており、オーナーの意識の高さが伺えます。
カレー以外にも少しつまもうと「チキン65」を注文。南インドのチェンナイのレストランが開発したとされる料理であり、マリネしたチキンの唐揚げです。揚げたてのアツアツでバリっとした食感が心地よく、鼻腔に満ちるスパイスの風味が堪りません。これが750円って安ない?銀座だぜ?ちなみに料理名の由来は1965年に発売されたこと、また、その店の65番目のメニューだったなど諸説様々です。
人気のバターチキンカレー。バターがたっぷりでマイルドな味覚ですが、その奥底から滲み出るスパイスの複雑な辛味が後を引く美味しさ。ヨーグルトやトマト由来の酸味も心地よく、複雑極まりない味覚でありつつも上手くまとまった味わいです。
デリーの代名詞である「カシミールカレー」。限りなくブラックに近いブラウンであり、スープのようにとろみがなくシャバシャバとした舌触りが特長的。しかしながらその味覚は「辛い」を通り越して「痛い」ほど刺激的で(そもそも辛味は味覚ではなく痛覚だ)、瞬間湯沸かし器のように頭が沸騰してきます。それでも単に辛いだけでなく果物や野菜由来の甘味も感じられ、スパイスの香り高さと相俟って、まさに絶品と評するに相応しいカレーです。
ライスも美味しい。甘味の強いお米であり、カシミールカレーの辛味を緩和させるに相応しい味覚です。デリー盛りとも言うべき、お皿に平べったく盛り付ける独特のプレゼンテーションも印象的で、カレーソースが温度以上に熱く感じるので、少し冷えたぐらいの盛り付けが丁度よいのでしょう。
銀座の小綺麗なインド料理店で絶品のカレーを食べて千円チョイ。なんと尊いお店でしょうか。上野店はハードボイルドすぎる雰囲気で女の子ひとりで訪れるには躊躇するかもしれませんが、銀座店は老若男女分け隔てなく楽しめる空気感なので(六本木ミッドタウン店は閉店。コロナ許すまじ)、まずは銀座店から始めてみると良いでしょう。オススメです。

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