草庵 鍋島(そうあん なべしま)/鹿島市(佐賀)

「鍋島」で有名な富久千代酒造が手掛けるオーベルジュ「御宿 富久千代」のメインダイニング「草庵 鍋島(そうあん なべしま)」。築230年の茅葺き屋根の建屋が大迫力。
店内はモダンなジャパニーズといった風情であり、大きな窓から望むお庭のグリーンが目に優しい。カウンター6-7席にテーブルが1卓の小箱であり、基本的には宿泊客が優先ですが、空きがあればビジターでの予約も受け付けています。

西村卓馬シェフはあの「神楽坂 石かわ」で腕を磨き、故郷のフレンチ「Restaurant Sola」で経験を積んだ後、当店へ。電話一本で何でも仕入れることができた東京時代とは一転、九州全域を西へ東へ仕入れに周る生活に大忙しです。
飲み物は当然に「鍋島」のペアリング。トータル2合で6千円と結構高いですが、ここでしか飲めない激レア品がポンポン登場し、また「もしお好きであればコチラもお味見どうぞ」と色々飲ませてくれるので、結果的には大満足の日本酒尽くしでした。
お食事は地元のトウモロコシから。糖度が高くスイーツを食べているかのよう。地元のウニで旨味を補完し魅力的な出だしです。
鮎とタラの芽を天ぷらで。いずれもほろ苦い味覚が心地よく大人の味わいです。
オコゼとタケノコのお椀。オコゼの身が水餃子かと思う程の特大サイズでありスープというよりも魚料理と表現したほうが良い食べ応え。サクサクとしたタケノコの歯ごたえも格別です。
お造りはカレイにイセエビ。イセエビは軽く昆布締めしており、より甘味を感じます。海苔醤油との組み合わせもバッチグーです。
続いてタイラギにイサキ。このイサキは美味しいですねぇ。ムキイとした歯ごたえに心地よい旨味が感じられ、また、炭を押し当てて少し焦がした風味も魅力的。
蕎麦も出ます。ムチムチと歯を押し返す食感が逞しく、また、ネッチリとした自然薯の舌ざわりも堪りません。自家製のカラスミをたっぷりと摺り下ろして乙な味。
焼き物はアマダイ。バリっと思いきりの良い火入れであり、酒盗の独特の香りが酒を誘います。身そのものにも凝縮感がありゴハンが欲しくなります。
やはり地元のトマトでお口直し。かなりの甘さなのですが、お出汁のジュレが全体を取りまとめ食中にも楽しいひと品です。
続いてはウナギ。筋肉と脂肪が入り混じったボブ・サップのような個体であり、バリ・ムチ・ジュワの三重奏。原木シイタケの深みのある味わいや黄ニラの爽やかな食感とも良く合います。
トリには佐賀牛。かぶらと共にお出汁に浸してセルフで熱を通していきます。たっぷりと花山椒もトッピングされ、実に贅沢なひと品です。
お食事に入ります。自家製のお漬物たちが地味に旨く、酒がますます進みます。
お食事は桜海老ごはん。お出汁で炊いたゴハンにサっと揚げた桜海老を大量にぶちまけます。蓋を開けた瞬間に立ち込める甲殻類の香り。これはもう、美味しくないわけがありません。
お味噌汁にはお造りで用いた伊勢海老でお出汁をとっており、桜海老ごはんと甲殻類ドレスコードが一致する味わいでした。
デザートは近所の農園のマンゴーに自家製のヨーグルトアイス。ご近所さんから直接買うメリットを最大限に活かし、糖度の高い個体を上手くピックアップされていました。
我々は1泊2食付きでの滞在であり厳密な内訳は不明ですが、ビジターだとポケットコンシェルジュからの予約で食事のコースが2.2万円と、東京で同クラスのものを食べることを考えれば大変にお値打ち。スタッフは若くスタバで働いていそうな感じの良い方ばかりであり、また、社長杜氏自らの酒の解説もあり、日本酒ラヴァーにとっては堪らないシチュエーション。是非とも1泊2食付きで滞在し、日本酒との組み合わせを心ゆくまで堪能したいところです。

食べログ グルメブログランキング

関連ランキング:割烹・小料理 | 肥前浜駅


関連記事
日本料理は支払金額が高くなりがち。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。