ア・カント(a canto)/谷町四丁目(大阪)

大阪城の南西、谷町四丁目駅と谷町六丁目駅の間にあるイタリアン「a canto(アカント)」。ミシュラン1ツ星。店名はイタリア語で「傍ら」を意味します。
ハコそのものは広いのですが、カウンター6席に小さなテーブルがひとつとゆとりのある空間設計(写真は公式ウェブサイトより)。厨房は客席数の割に超広いのが印象的。

村田卓シェフはイタリアの名だたる名店で腕を磨き、帰国後も数々のレストランのシェフを歴任した後、2018年に当店を開業。坂東さん級のジェントルマンで、前世は執事かもしれません。
酒が安い。グラスワインは千円~で、しかも結構たっぷり注いでくれます。こちらのフランチャコルタも1,300円とお値打ち。目黒のケチ臭いフランチャコルタ専門店の倍以上は注いでくれました。
先付はホワイトアスパラガスのサラダ。ほう、ホワイトアスパラを生で食べるのは初めてかもしれません。シャクシャクとした歯ざわりに独特の土っぽさ。削ったパルミジャーノの塩気と旨味が心地よい。
左はムール貝。オレンジ風味のソースが親しみやすい味わい。右はサワラの卵のプリンでしたっけ?サワラの卵を食べるのは初めてであり、またプリン的に形を変えて登場と興味深いひと皿でした。
ヨモギを練り込んだ麦パン。なるほどヨモギ餅のような濃厚な緑の風味が感じられ面白い味覚です。
フリットはアーティチョークに稚鮎、エゾアワビなど。まさに揚げたての軽やかな逸品であり、衣にチーズが練り込まれているのか旨味が強く、ビールが欲しくなりました。
カツオは分厚くカットしたのちに表面を円やかに炙ります。付け合わせも凝っていて、炊いた白インゲン豆に牛のアキレス腱。素材感が正面に出ており美味。色んな意味でアツイひと品です。
スペシャリテのパスタ。こちらは手打ちのロングパスタ「バヴェッティーニ」であり、まさに今、目の前で麺を伸ばして手打ちします。ムチムチもちもちした食感が素晴らしく、麺そのものが抜群に旨い。香草パン粉のカリカリ感との対比もグッド。これまた自家製のカラスミで旨味を強化しひいては削ったライムの爽やかさも良く合う。2022年上半期において最も心に残ったパスタかもしれません。
続いてアニョロッティ。ラビオリ的なパスタですが、こちらも生地を伸ばしての上、詰め物も今まさに詰めています。中身は滑らかなジャガイモにタレッジオ(チーズ)の奥ゆかしい味わい。鹿のラグーの迫力ある味覚に空豆のヘルシーな青っぽさ。この店のパスタ料理は本物オブ本物です。
メインは伊勢の赤鶏。骨を抜いたモモ肉をくるりと巻き上げ軽快に仕上げました。多彩な味覚のパスタから一転、どストレートな味わいであり饗宴の締めくくりにピッタリのスマッシュです。
デザートはチェリーのクラフティ。果物入りカスタードプディングのようなお菓子です。ジェラートはかなりの種類が用意されており、好きなものを何種類でもリクエストできるのですが、結構な腹パンぶりだったので2つに留めました。もっと食べたかった。
小菓子もしっかり用意されます。パスタに始まりパン・菓子類と、ワンオペで全てを作り切ってしまう職人力。料理人の鏡です。
以上、お料理だけだと税サ込で1万円を切ります。これは控えめに言って奇跡。寄せ書きでも贈りたいぐらい感激しました。もちろんワンオペではあるので場面でテンポが悪くなることはありますが不満は一切ありません。本物の美味しさは全ての課題を解決するのだ。料理の方向性や料理に対する取り組み姿勢を含め、外苑前「プリズマ (PRISMA)」にベクトルが似ているかもしれません。いずれも私の大好きなイタリアン。オススメです。

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