すし初/湯島

春のすし初。ここのところ「すし初連れて行ってよ」とのリクエストが多く、季節ごとに訪れていたのが月ごとになり、場面で隔週で訪れる機会もあったりと、すし初漬けな日々を送っております。
お酒はもちろん大将にお任せ。この日のラインナップもお祭り騒ぎ。酒と酒を掛け合わせるカクテル的な試みもあり、意欲的なペアリングです。
まずはシイタケ。ギュっと熱を入れた後にシャリをのせイクラをトッピング。キノコの香りとイクラの塩気が酒を呼びます。
こちらは玉ねぎ。じっくりと熱を入れ甘味を増強した後に、ペコリーノ・ロマーノを摺り下ろします。羊乳由来のミルキーで塩気の強い味覚。
お刺身に入ります。甘エビにアオヤギにホタテ。表面を軽く炙っており、とりわけ肉厚なホタテのトロっと感とバリっと感が楽しかった。
タコにタイにヒラメ。こちらはタコが抜群ですねえ。グニグニコリコリとした強い食感に思わず食欲が刺激されます。
カツオはドーンと、ステーキかと見紛うほどのサイズ感で頂きます。ムッシャムッシャとした咀嚼音。旨い刺身を腹いっぱい食べることほど幸せなことはありません。
メジマグロにブリ。マグロも厚いカットであり、カツオに続いて肉のような食べ応えです。ブリは脂たっぷりのメタボ体質であり、炙って溶けた脂で自身が揚がったようなニュアンスがあり香ばしい。
メバルはサッパリとした調味。瑞々しい味わいのタケノコや磯の香りたっぷりのワカメと共に、洗練された酒飲みにとって最良の玩具です。
カキ酢。この上なくシンプルな仕様ですが、フランス料理のグラニテ的というか何というか、味蕾を整える役割に適任です。
このアンキモは最高だ。厚揚げサイズの大ボリュームであり、アクセントにガリとカンピョウのみじん切りがトッピングされています。味が濃く、脂質が多く、要するに酒が必要である。
にぎりに入ります。即本番で車エビ。やはり肉厚でムッシャムッシャとした食べ応え。
マツカワガレイ。言わずと知れた高級魚であり、その味わいは並のヒラメのそれを凌駕します。白身魚ながら不思議とファットを感じられコッテリとした味覚。
シメサバ。優しいタッチの締め方であり、サバ本来のメタリックな風味が心に残りました。
メカジキ。こざっぱりとした味覚であり、身体にスっと染み渡る綺麗な美味しさがあります。
中トロ。赤身部分とトロ部分がグラデーションしており、ひと口で2度美味しい。
カキを炙って軍艦で。カキの凝縮的な味わいに海苔の磯の香り、炙り由来の香ばしさ。香りを楽しむ逸品です。
フィナーレは鰻で。やはりバリっと炙って香ばしさを増強し、ちょっとしたスパイスに奈良漬けを潜ませます。強い脂と旨味と共にややアルコールを感じるアダルトな風味。これは旨いぞ。当店のスペシャリテと化すのも時間の問題かもしれません。

よく飲んだ。翌日私は二日酔いのため使い物になりませんでした。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。