「東京三大居酒屋」のひとつとして知られる湯島「シンスケ」。もともとは江戸時代に創業した酒屋ですが、関東大震災で大ダメージを受け、その復興に尽力したムッシュシンスケへのオマージュとして屋号に掲げ、1925年に居酒屋としてリニューアルオープンしたそうです。ミシュラン1ツ星。
1階はカウンター席とテーブル席で予約不可、2階は予約前提のテーブル席(細かいルールは知らん)。座席配置がちょっと変わっていて、いわゆるカウンター席の後ろ側にもう一列カウンターがあり、スタジアムのVIPシートのような印象を受けました(写真は公式ウェブサイトより)。
正面装備は秋田の「両関」のみ。戦後の物資が乏しい時期に、この蔵元だけが変わらず取引を続けてくれたそうで、その恩義に報いるよう未だに両関一本足打法で臨みます。前述のムッシュシンスケにせよ両関にせよ、ストーリーがある酒場っていいですな。
席料は440円でお通しがついてきます。これは何だろう。節分の豆のようなものに味噌ピーナッツの味噌みたいな味噌が塗布されており、酒場へようこそとでも言いたげな味の濃さです。しめ鯖。脂が強く、またその〆も強い。美味しいのですが、1,430円ってのは高ないか?質・量・店の雰囲気からすると私的には780円に感じました。
名物の「イワシの岩石揚げ」。こちらも2粒で1,100円と高ないか?が第一印象なのですが、なるほど美味なるイワシのすり身がギッチギチに詰まっており納得の旨さです。そのまま食べても良し、ちょっと醤油を付けても良し。必食の一皿です。
やりいかのやわらか煮。その名の通り柔らかな食感であり、これがイカかと仰天するソフトなタッチです。タレ(?)は円みのある甘さがあり、オカンの手料理を思い出す優しい味わい。アナゴの天ぷら。むっちりとした食感のアナゴがカラっと揚がっており美味。付け合わせのお芋さんはホックリとした歯ごたえが印象的。白眉は菜の花あんで、春の味が濃密な菜の花がたっぷりと含まれており、私はすこです。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり7千円。うーん、ちょっと高いなあ。味は悪くないのですが、カジュアルな雰囲気や接客、立地や客層を考えると少し割高に感じました。もちろん「東京三大居酒屋」というブランドは強烈で、ある種の骨董品的な魅力のある酒場であることは間違いありません。みんなでワイワイというよりはひとりでしっぽり愉しみたいお店。近くに来たらちょっと覗いてみましょう。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。