二条城 ふる田/京都

烏丸御池から二条城へ向かう途中の住宅街にある「二条城 ふる田」。二条城前駅からも歩いて5分ほど。建物は古い町家を改装したものでしょうか、これからめっちゃ京都で食事する感のある外観です。
無駄が全て削ぎ落された内装で、カウンター5-6席にテーブルがひとつといった陣容。ご夫婦のみで営業されているようで、余裕を持たせた予約の取り方です。

古田幸平シェフは滋賀県出身。「紫野和久傳」や「幸村」、「祇園おかだ」などで腕を磨き、30代の若さで当店を開業。ミシュランでは1ツ星、食べログではブロンズメダルを獲得しています。
ドリンクメニューに価格が記載されていないのでちょっと怖い。当店に限った話ではありませんが、世の和食店(日本料理、鮨、天ぷら等)はどうして酒の値段を明示したがらないのだろう。きちんと書かれていた方が飲む側は予算の限界まで飲むようになるので、結果として売上は増えると思うのだけれど。
まずはホワイトアスパラ。ドーンと素材一直線でわかり易い味覚です。極太サイズでジャックリした歯ざわりも良く、海苔を練り込んだソースもセンス良し。フランス料理的でもある。
続いて山菜と白魚の天ぷらに自家製のカラスミをザリザリと振りかけます。山菜の独特の苦みとカラスミの旨味が溶け合い、酒が進む逸品です。
お椀はハマグリ。西野カナと同じ桑名産であり、独特のメタリックな香りが実に豊か。スープも思い切り良く塩気がきいていて記憶に残る味覚です。
お刺身は明石の鯛に山口のウニ。このタイは美味しいですねえ。ゴールドジムでも通っていたのかと勘繰るほどの歯ごたえを誇り、噛みしめるたびに上品な旨味が滲み出て来ます。
五島列島のイサキは皮目をバリっと炙って半生状態で。程よく焦げた皮目の香りと脂が実にジューシーで、そこから食感と味わいにグラデーションがかかって多層的な味わいです。
琵琶湖の稚鮎に大原野の筍。大原野とは筍の名産地であり、なるほど唸るほどの美味しさです。クリアで雑味の無い味わいながらしっかりと大地の風味は感じられる、存在感のあるひと品でした。
和牛のヒレ肉に花山椒。和牛と言えども決してクドい脂は感じられず、清冽極まりない爽やかな香気を放つ花山椒と併せて食べるにピッタリです。付け合わせの菜の花も春爛漫といった味わいで見逃せない美味しさでした。
「日本酒を召し上がっているので」と、オマケでカラスミをプレゼントして頂けました。気前の良いカマボコサイズであり、酒が進んで仕方がありません。
お魚料理はキンメダイ。やはりフランス料理風のひと皿ですが、ソースは白味噌仕立てであり、香ばしい桜海老が程よいアクセントとなっています。美味しいのですが、若干コッテリしすぎている面もあり、魚の風味が押され気味なのはやや惜しい。
お食事はホタルイカと筍の炊き込みご飯。具材の美味しさはもちろんのこと、ライス部分にもしっかりと下味がついており、オカズなしで何倍でもイケる、もしくは酒まで飲めてしまう旨さです。
デザートは特大のイチゴにレモンのアイス(ジェラート?)にミカン。イチゴは和歌山の「まりひめ」という品種だそうで、成人男性の鼻ぐらいのサイズ感。これはもう、余計な手は加えずかぶりついてそのまま美味しい。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり3.3万円。もうちょっと安いと嬉しいですが、素材感を全面に押し出すためにはある程度の量および質が必要であることを考えるとこんなものかもしれません。

ウニをのせトリュフを削りキャビアをトッピングする港区あたりのアホな自称日本料理店とは対極に位置する芸風であり、質実剛健な味覚。派手派手の映え映えというわけではありませんが、素材に真っすぐな日本料理を楽しみたい際にどうぞ。

このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング


関連記事
京都はとにかく和食がリーズナブルですね。町全体の平均点が高いのはもちろん、費用対効果も良いことが多い。その文化に影響を受けてか、欧米系のレストランにも目が離せない魅力がある。
JR東海「そうだ京都、行こう。」20年間のポスターから写真・キャッチコピーを抜粋して一冊にまとめた本。京都の美しい写真と短いキャッチフレーズが面白く、こんなに簡潔な言葉で京都の社寺の魅力を表せるのかと思わず唸ってしまいます。