フィオリータ (Fiorita)/古町(新潟市)

「自遊人」のムッシュ岩佐十良が新潟に本拠地を移し「里山十帖(さとやまじゅうじょう)」などを展開し始めて久しいですが、彼のグルメな日々の集大成とも言うべき本がコチラ。新潟を訪れる機会がある際は必ず予習するようにしています。
さてこの日は新潟市の繁華街にある「フィオリータ (Fiorita)」にお邪魔しました。店名は「花が咲く」の意味なのですが、その名に似つかわしくない雑居ビル感に少し不安になる。ちなみにミシュランガではビブグルマン(安旨店)を獲得しています。
店内は素敵。白をベースに渋い木目調がしっくりくるシックな空間。テーブル間隔も広々としており、スタッフの女の子たちも感じが良く、適度に空いているスタバのような居心地の良さがあります。

田村崇シェフは東京の「カルミネ・コッツォリーノ」のもとで経験を積み、Uターンで新潟に開業。「新潟の郷土イタリアン」を標榜し、食材の約9割は県内産だそうです。
酒が安い。グラスワインはいずれも千円を切り、ボトルワインであっても5千円前後が最多価格帯です。これぐらいの価格設定だと昼から気前よく飲めるというもの。ちなみにディナータイムには飲み放題プランもあり、左党の強い味方です。
まずはサラダ。ワオ、なんと美しい。4,500円のランチコースの前菜とは考えられない凝りようであり、新鮮な地元のお野菜が百花繚乱。ドレッシングもきちんと回っており、ニンジンのソースも程よいアクセント。このひと皿だけでシェフの料理にかける情熱が伝わるというものです。
パンは素朴なものですが、きちんと温めなおしてくれ好印象。イタリア料理としては珍しくソースに力を入れた料理が続くので、パンはこれぐらいシンプルでちょうど良いかもしれません。
続いてズワイガニ。たっぷりのほぐし身を土台に置き、ミョウガやウドを盛り付けます。シャクシャクとした食感とカニの濃厚な旨味がベストマッチ。ほおずきの程よい甘味と酸味がオシャレ感を演出します。
これは前菜のうちのひとつなのだろうか、それともメインの魚料理なのだろうか、そのような疑問が湧いてくるほどハイクオリティ・ビッグポーションなひと皿。低温調理したブリであり、そのへんの定食屋のブリの照り焼きよりも余程サイズが大きく、次元が違う食べ応えです。付け合わせの山菜もたっぷりで、バジルと三つ葉のソースもセンスに満ちています。
パスタはオイルベースでシラスにあさつき、ドライトマト。シンプルな調味で、変な表現ですがお茶漬けのような優しい味覚です。他の料理が派手なので、お口直し兼糖質補給な位置づけなのでしょうか。このお皿が無ければフランス料理のコースを食べたかと勘違いしそうです。
メインのお肉料理は「くびき牛」。新潟が誇るブランド牛で、コシヒカリの稲わら等を食べて育つそうです。そのリブロースにシンプルに火を通し、カシス(?)風味の濃厚なソースで頂きます。白眉は台座となっているジャガイモであり、この濃厚な蜜っぽい風味は何だろう。無限に食べれる美味しさでした。
デザートは抹茶を用いたカタラーナ。ドロっと濃密な生地にパリッと香ばしいキャラメル部分、トッピングの抹茶のクランブル(?)と、ごくごくシンプルですが小気味良いひと皿です。器の色合いとの対比にも光るものを感じました。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、グラスワインを2杯飲んでお会計は6千円ほどと、東京のスポンジ頭なイタリアンであれば倍以上は請求をされそうな満足度です。お金の話はさておき、料理ひとつひとつを取ってもセンスがあり、また地元の食材を多用するという点でも旅行者にとっては胸熱な哲学です。富山「ひまわり食堂」しかり、地方にはイタリアンの良い店が沢山あるなあ。

シェフの郷土愛と新潟のポテンシャルにただただ圧倒されると共に、東京は何でもあるけど料理については嘘っぽい街になってしまったな、と、寂寥感すら覚えたランチでした。

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