店内は結構広く、カウンター席が10席ほどに個室がふたつ。広々としている上にアクリルボードが設置されているため、コロナのコの字も感じさせません。
佐藤大介シェフは2代目で、「祇園 川上」や「京都菊乃井」で腕を磨いたのち、28歳の若さで当店を継いだとのこと。
アルコールにつき、ビールなどは千円やそこらでしょうが、日本酒が1合千円を切るものから1万円に迫るものまで幅が広い。後から料理を振り返ると、しっとりとした白ワインを合わせても良かったかもしれません。先付はタケノコ。シンプルに炊いたものとタケノコしんじょう。このタケノコしんじょうは美味しいですねえ。フワフワと泡のように軽いのにタケノコの滋味あふれる風味はきちんと使わっています。
白魚の天ぷらに海老しんじょう。こちらも海老しんじょうが抜群ですねえ。シェフは新潟のしんじょうの魔術師ひいてはBIG BOSSと呼べるかもしれません。八寸は酒のツマミ特集。中央のタイの白子でトロンとし、佐渡産のコッテリとしたアワビで酒が進み、奥のインパクトのある鴨肉でタンパク質を補給します。
お椀はアイナメは葛たたき。お椀のタネとするには中々のポーションであり食べ応え抜群。これはスープ料理というよりもお魚料理と呼んでも良いかもしれません。お造りに入ります。まずはチャイロマルハタ。淡白そうな外観ですが、口に含むと弾力があって、どことなく土っぽい風味。白身魚ながら脂も感じられパワフルな味覚です。
続いてバイガイに太刀魚、サヨリにクエ。先のチャイロマルハタと同様に白身ながらコッテリと印象的な味わい。手前の赤いのは南蛮海老の昆布締めで、程よくミンチにされており、無限に食べ続けることができそうです。
焼き物は桜マスの幽庵焼き。もうそれだけでも旨いのに、たっぷりのふき味噌が全面的に美味しい。お魚そのものも肉厚で、まるでステーキを食べているかのようです。
お食事は佐渡のモズクのお雑炊。ちょっとヌメっとした舌ざわりが印象的で、卵のフワフワ感も見逃せません。美味しいだけにお代わりが欲しかった。
食後の甘味はわらびもち。スライムのようにベチョーンとしており楽しいひと皿です。
スイーツもうひと皿。丁寧に炊かれた小豆を軽く揚げており、サクっフワっと新たな味覚です。これ専門の甘味処があっても面白いかもしれません。
以上を食べ、軽く飲んでお会計は2.4万円ほど。東京の日本料理店で同じものを食べることを考えれば実にお値打ちです。一方で、兎にも角にも地元の食材に拘ります、という芸風ではなく良いものは全国から取り寄せるスタイルなので、新潟を欲した県外客向けというよりも、地元のグルマンの会食向きかもしれません。新潟に長く滞在する際、一度はお邪魔したいお店です。
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日本料理は支払金額が高くなりがち。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの日本料理ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い日本料理なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
- 乃木坂しん ←肝臓を整えてからどうぞ。
- かどわき/麻布十番 ←トリュフ!トリュフ!トリュフ!
- と村/虎ノ門 ←季節を切り取る、究極の旬を楽しむエンターテインメント。
- しのはら/銀座 ←予約困難となって当然だ。
- いち太/外苑前 ←フランス料理のように多層的な味わい。
- おぎ乃/赤坂 ←赤坂にミラクルな店が爆誕しました。
- 一本杉 川嶋(いっぽんすぎ かわしま)/七尾 ←能登半島にゴールデンルーキー現る。
- 御料理 一燈(いっとう)/福井 ←福井に来る機会があれば必ず予約を入れましょう。
- 比良山荘(ひらさんそう)/湖西(滋賀) ←鮎をたらふく食べ、熊肉に舌鼓を打ち、マツタケをザルのように食べてこの支払金額はお値打ち。
- 木山(きやま)/ 丸太町(京都) ←京都で一番好きなお店。
- カモシヤ クスモト/福島(大阪) ←独学でもトップに立ててしまうのか。
- 島之内 一陽/難波 ←カジュアル日本料理の最高峰。
- みつき/鳥取駅 ←この質のカニをこの価格で提供できるのは地の利。
- 馳走 卒啄一十(ちそう そったくいと)/広島市 ←中国地方、いや日本全体を含めてもトップクラスに好きな日本料理店。
- 御料理 まつ山/黒崎(北九州) ←北九州の旅程に是非とも組み込みたいお店。
- 日本料理 幸庵 ←こちらも費用対効果が素晴らしい。ミシュラン三ツ星って実はお買い得?