鮨結う 翼(すしゆう つばさ)/恵比寿

六本木「鮨由う」が若手育成のためのセカンドラインとして恵比寿に「鮨結う 翼(すしゆう つばさ)」をオープン。最初ちょっと店名の読み方がわかんなくて「右翼なの?」と戦慄しましたが、「すしゆう」の「つばさ」です。
変わった構造のテナントで、ウェイティングルームが無いため予約時間ピッタリに訪れることを心がけましょう。カウンターのみ10席ほどであり、木の芳香が強く部屋風呂の付いた温泉旅館のような香りがします。

お店のコンセプトや価格設定(後述)のせいか、客層につき、FAXとフロッピーディスクの違いも知らなそうな若者や、40代のキャバ嬢と50代の係長といったしっとりしたカップルが多いのが印象に残りました。
コース料理は税サ込一律の13,200円。ただし、信じがたいことに、この金額の中に飲み物の飲み放題料金も含まれています。しかもケチな飲み放題ではなく、ビールや日本酒はもちろんのこと、シャンパーニュを始めとするワインなどもラインナップに加わっており、大酒飲みであれば酒代だけでモトを取ってしまいそうな勢いです。
2回転と時間が限られているためか、テンポ良くツマミが並びます。右下のは「峯岡豆腐」と言って、生クリームやトウモロコシで作ったものだそうで、豆腐というよりもスイーツのようなニュアンスが面白い。また、三陸のワカメが地味に美味しく、おかわりもドンドン盛ってくれ、精神的にヘルシーになれた気がします。
穴子の茶碗蒸し。卵の生地というよりも出汁が支配的であり、スープのようなひと品です。食べ進めていく途中に自家製の海苔醤油を投入してくれ、パンチのある風味へと味変です。
メヒカリのから揚げ。シンプルな仕様でありシャンパーニュに良く合います。
こちらはコース外のオプションで、白エビとバフウンウニ。シンプルな仕様ですが、最終支払金額から逆算するにプラス1,500~2,000円というのは良心的。
にぎりに入ります。まずは春子鯛。おぼこいアタックに初々しい味覚です。
ガリは塊で漬けたものを乱切りしたもので私好み。強めの酸が味蕾をリセットしてくれます。
ヒラメは昆布締めで。エンガワがトッピングされているのがオシャレです。恵比寿っぽいです。
シマアジ。美味しいのですが、回転寿司のアタリと比べて大差あるかというとコメントは差し控える。
総本山、六本木「鮨由う」のスペシャリテ「プリン巻き」。甘く炊いたアンキモをシャリに混ぜ込み、キュウリと共に頂きます。なるほどコッテリとして日本酒が進む味わい。名前の由来はプリン体が多いからだそうです。何なら鯛と合わせて「プリンタイ」を次回よろしく。
サワラは軽く炙って。脂が乗って、噛みしめるほどに旨味が滲み出てきます。
毛ガニとバフンウニ。この組み合わせですら食傷気味なのに、さらにオプションでキャビアもトッピングできるとのこと。周りのゲストは嬉々として課金していましたが、うーん、それは組み合わせとしてどうなんだろう。当店もそっち方面のお店なのかと少し体温が下がりました。
赤身のヅケ。酸味がきいて爽やかな味覚です。
大トロは核心部分は悪くないのですが、スジが多く食感を邪魔します。思い切ってスプーンでこそげとって、ネギトロにでもしたほうが良かったかもしれません。
追加でカマトロ巻。マグロステーキだと言わんばかりにバリリと炙られており、脂カタブラとオイリーな逸品。先の大トロに比べると筋が溶けておりジューシーな味わいです。
コハダ。強めに締められており、これまでの脂質をスカっと洗い流してくれます。
ホタテを煮たもの。悪くないのですが、プリン巻きにカニにウニに大トロにカマといった重量級の選手の続きとしては荷が重く感じました。
アオサ入りのギョク。焼きたてで心温まるひとときです。
アナゴは若干旨味が抜けているというか何というか、まあ、この価格帯なら仕方ないかもしれません。
ラストは「福巻」。残り物には福があるとのことで、今日のタネの切れ端などが全て巻き込まれています。これは色んな味がして食べ応えがある。SDGsな欧米でウケそう。
こちらのお椀も本日のお魚から取ったエキスより。ごちそうさまでした。
基本のコースにいくらか追加して、お会計はひとりあたり1.6万円ほど。飲んだ酒の量を考えれば大変お値打ちです。シェフも盛りあげ上手で、「照寿司」よろしく全ゲストにシャッターチャンスを繰り返すメンタル黒帯っぷり。20代であっても緊張せずに楽しめる、ある種の入門編的な鮨屋です。酒飲みのお友達とどうぞ。

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