Peter Luger Steak House Tokyo(ピーター・ルーガー)/恵比寿

ニューヨークで、いや世界で最も有名なステーキハウスと言って良いでしょう。1887年にブルックリンで創業した「ピーター・ルーガー(Peter Luger)」。日本のステーキ業界を席巻した「ウルフギャング」や「ベンジャミン」、「エンパイア」などのステーキハウスのルーツは全てピーター・ルーガーにあり、その総本山がついに日本上陸。パートナーは「バルバッコア」「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」「ユニオン スクエア トウキョウ」などの海外ブランドの誘致で成功を収めたワンダーテーブル社です。
「ピーター・ルーガーっていうかさ、(マンハッタンの)ミッドタウンのステーキハウスっぽい雰囲気だよね」とは連れの談。彼女はニューヨークでバリバリに働くバリ野キャリ子であり、私がニューヨークへ訪れた際には本店に案内してくださり、日本の当店においても幾度の訪問を重ねているので、日本屈指のピータールーガー専門家と評しても過言ではないでしょう。そういえば確かに当店はブルックリンのワイガヤ感はなく、どこかシュっとした高級ファミレスのニュアンスがあります。
食事の値付けに比べると酒の価格設定は控えめです。ビールは千円前後だし、このPBもボトルで1.5万円。チョコレートを溶かしたような骨格のある赤ワインであり、ブラインドで飲んだとしても脊髄反射でナパと回答できるストレートな味わいでした。
アイスバーグレタスのウェッジサラダ。当店のシグネチャー・ディッシュのひとつであり、レタス・ベーコン・ブルーチーズが雑に盛り込まれています。見た目通りの雑な味わいなのですが、これはきっと総本山に忠実に、あえての雑さ加減でしょう。
パンは3種で塩とオニオンと何だっけな。味はまあ、ステーキハウスのそれだよねというレベルではありますが、無駄に同伴者と手でちぎってシェアさせる方式は時節柄いかがなものか。私と彼女のような真の濃厚接触者であれば別段気になりませんが、会食とか微妙な距離感の食事会では微妙オブ微妙かもしれません。
お待ちかね、スペシャリテの「STEAK FOR TWO」がやって来ました。米国農務省によって格付けされた最上級のプライムビーフを用いており、チルドで空輸されたのち1階に設けた熟成庫でドライエイジングされます。

私がブルックリンにお邪魔した際(2019年)は109.90ドルでしたが、当店では29,000円。サイズも一回り小さく感じ、つまるところ倍以上の価格設定ですが、まあ、一風堂のラーメンがあちらさんでは20ドルすることを考えればお互い様といったところでしょう。
しっかりと熟成され香りと旨味の強い牛肉。和牛とは全く異なる方向性の素材であり、ガガガと表面を思いきり焼き、溶かしバターをぶっかけており、噛めば噛むほど旨味が連続的に滲み出る。再現性、という表現はヘンかもしれませんが、本店のクオリティに勝るとも劣らず。付け合わせのクリームスピナッチやジャーマンポテトに至っては、日本人の丁寧気質が威力を発揮し、本店を凌駕する味わいに感じました。
以上を食べ、ビールを飲んでワインをふたりで1本空けてお会計はひとりあたり3万円弱。前述の通り、肉の値付けは本店の倍以上ですが、ドリンクや付け合わせ、サイドメニューについては同程度。これはもう、お肉は輸送費とか考えるとどうやったって高くついてしまうんでしょうね。客単価2-3万円と考えれば直感的に高く感じてしまいますが、ライセンスフィー含め割高になる要素は沢山あると理解した上で、温かい気持ちで訪れると良いでしょう。ちなみに本店と違ってネット予約やクレカ決済も利用でき便利な面もある。
ステーキはさすがの美味しさであり、雰囲気や話題性もあることを考えると、謎に高価な鉄板焼き屋などに行くよりは食後感は遥かに良いでしょう。個室もあって接待にもピッタリ。即本番の「ビーフステーキ専門店 ひよこ」とはまた違うロマンチシズム。お腹を空かせてどうぞ。

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