おたる政寿司 本店(まさずし)/小樽

戦前に創業し今や80-90年の歴史を誇る「おたる政寿司 本店(まさずし)」。小樽すし屋通り発祥の地で暖簾を掲げ、小樽を代表する鮨屋となりました。大阪の「かに道楽」よろしくビル全体が鮨屋であり、1階ロビーに総合会計があるなど世界一大箱な鮨屋ではなかろうか。
しかしながら、1階入って左のカウンター席は凛とした雰囲気。ズラっと並んだカウンター席のゲスト相手に職人たちが全速力で仕事を捌いています。先輩も後輩も分け隔てなくチームの勝利に徹するというOne for all, All for oneな職場は見ていて気持ちが良い。
酒は安くビールは600円で、日本酒も似たような価格帯から始まり、東京の居酒屋よりも値付けは良心的でしょう。我々は地元のお酒を中心に頂くことにしました。
まずはヒラメのエンガワから。熟度があってコッテリとした脂身が美味。いきなり日本酒を進ませる悪い奴です。
続いてホタテ。分厚くムッチムチなホタテを口いっぱいに頬張る心地よさといったらない。甘味たっぷりで文句なしの美味しさです。
生のニシン。北海道ならではのタネであり、ジュブジュブとした舌ざわりがジュブナイルな味わい。程よく脂も乗っていて、高級食材を差し置いて本日最も記憶に残ったかもしれません。
ミズダコ。こちらもやはり北海道ならでは。赤子の腕ほどもありそうな足から切り出して、丁寧に包丁を入れ食べ易く処理してくれます。クニクニとした食感に透き通るような味わい。
ボタンエビ。ゆうべのブツほどではありませんが、それでもこの地ならではの大迫力。ブリっ、プティっ、ムシャっとオノマトペが激しい。もちろん味覚についても申し分なく、6千円のにぎりのコースでこのタネが出るなら大喜びです。
先のボタンエビの味噌。これこそ海老の一番美味しい部分であり、当店はエビの気持ちを良くわかってらっしゃる。
解禁されたばかりの毛ガニ。君の足、何本分だい?と問いたくなるほどギュウギュウ詰めでバリ旨い。この旨味は日本酒に良く合う。
ホッキ貝。ついさっきまでウヨウヨ動いていた個体であり、残酷ながら美味しく頂きました。
派手派手なタネとは裏腹にお椀は澄んでおしとやか。なぜか給仕の方が「こちらはサービスでぇ!」とドヤアピールしてきたのですが、別にそんなん言わんで自然にスっと出せばいいのに。
キングサーモン。いやあ、蝦夷前の美味しところが全部詰まって嬉しくなるなあ。回転寿司のサーモンとは比べ物にならない味の濃さであり、まさにサーモンの王、王のサーモン。
イクラ。粒が大きくツルっとしなやか。綺麗な塩味であり海苔の磯の香りと良く合います。
ウニも出ます。赤潮で獲れない獲れないと大騒ぎですが、あるところにはあるのですね。しっとりとした甘味に思わず笑みがこぼれます。
大トロ。以上ココまで12カンで6千円。え?これ安ない?ヤバない?
でも折角なのでドンドコ追加しちゃいましょう。こちらはソイ。やはりこの地の自慢の食材であり、コリコリつんつんと迫力のある弾力です。
ツブガイ。赤潮の被害はウニだけでなくツブガイにまで及んだそうで、コチラも苦労しているそうです。だがしかし生き残った個体こそゴリゴリヅンヅンと大迫力の食感。
キンキは軽く炙って香ばしさを引き出します。気前の良い厚切りサイズでバイシクルシュートを決め込む火勢です。
〆にカンピョウを細巻きで。いやあ、満腹満腹ごちそうさまでした。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1万円ポッキリ。何と懐に優しい価格設定なのでしょうか。東京の馬鹿みたいに高い鮨屋とは一体何なんだと問い詰めたくなる満足度の高さです。若干は観光地化された飲食店ではありますが、それが却って気楽で良い。小樽観光の際には是非どうぞ。ランチであっても予約は忘れずに。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。