ビストロ ド ラ シテ(BISTRO DE LA CITE)/西麻布

東京、いや日本のフランス料理を語る上での必修科目、西麻布「ビストロ ド ラ シテ(BISTRO DE LA CITE)」。フランス料理が好きと言いながらこの店を知らない輩はモグリです。開業は1973年で50周年も目前という老舗のビストロ。食べログでは当たり前に百名店に選出されています。
開業当初から殆ど変わらないと言われる内装の店内。メニューに並ぶ料理もこれぞフランス料理というものばかり。品の良いオーナー夫妻(私の両親よりも年上だ)の説明に耳を傾けながら、古典への誘いに期待を膨らませましょう。

「カレシと別れるかもしれない」えー何この展開超楽しい。そうだ別れろ別れろ。あんな大谷のホームランを数えることだけが生き甲斐の男なんてやめちまえ。「なんかね、もう、価値観というか、そもそもの文化的背景が違うんだよね。料理とかレストランとかに全然興味ないし、旅行にも興味を示さない。泊まるホテルも『寝れればいい。アパホテルでいい』とか言っちゃうわけ」確かにそれはもうダメだね。愛し合うというのは、見つめ合うことではなく、同じ方向を見ることだから。
6千円台のものからファジーな値付けのものまでワインは幅が広い。若輩者の我々は手ごろな白1本赤1本で、新しい自分を発見する冒険の旅へと向かいます。

「あたしの誕生日祝い、カレに任せていたらとんでもないことになりそうでしょ?だから自分で素敵なホテルを予約して、行程から何から何まであたしが全部アレンジしたの。それなのにカレ、お金は1円も払うそぶりが無くて、結局あたしが全額払ったんだから」
パテドカンパーニュ。ピスタチオがたっぷりでザクザクとした食感が特長的。しっとりとした脂の甘味が蠱惑的で、これぞフランス料理という逸品です。

え、普通に『あたしの誕生日祝いなんだからごちそうしてよ』とか『せめて半分負担してよ』って言えばいいじゃん。「そんなこと言えない。そんなこと平気で言う人って信じられない」そうかねえ、少なくとも目の前に一人いるけどね。ちなみに今夜は割り勘だからね。 
スペシャリテの「サラダ・シテ」。いわゆる葉物野菜にハム・砂肝・レンズ豆・ポテトサラダ・ミミガーが配置されています。サラダというよりも酒のツマミに近いものがあり美味しいのですが、これでひと皿4千円近く(税サ込)するのは割高です。

じゃあさ、カレが自分の誕生日にセルフでガンダムのプラモデルふたつ買ってきて、『一緒に作ろうよ!どっちが上手くできるか勝負だ!』みたいに一緒に作って、しばらく後にカレが『ウチの嫁、一緒にガンダム作ったくせに金払わねえんだよな』って同僚にグチってたらどう思う?それと同じだよ。「ごめんそれ全然違う」確かに違う。私は例え話が下手なのだ。
メインはカスレを選択。羊のソーセージにピリ辛のチョリソなど肉がドッサリ含まれており食べ応え抜群。動物性の油膜の厚さにも迫力があり、それぞれの旨味を吸ったお豆さんたちも含め、冬の味覚の代表格です。

いずれにせよ、今さら他人の価値観なんて変えれないよ。幸い君は自立していて、ラグジュアリーホテルの2泊や3泊の代金なんて難無く支払えるじゃないか。自分の意思で泊まりたいホテルに自由に泊まってると思えばいいんじゃないの?ひとりで泊まってもふたりで泊まっても代金は同じなんだから、運転手と荷物持ちが無料でついてくるだけ儲けものだと割り切った方が精神衛生上良いよ。

ちなみにこの話に特にオチはない。
もう少し食べるかということでスパゲッティを追加注文。自家製のカラスミがたっぷりトッピングされており、〆の炭水化物ながら酒の進むひと皿でした。

以上をシェアしながら食べ、安めのワインをひとり1本づつ飲んでお会計はひとりあたり2万円弱。どの料理もひと皿3~4千円は当たり前で、そのへんのビストロの倍近い価格設定。うーん、ちょっと高いなあ。

もちろん当店は東京におけるフランス料理の必修科目でもあるので、歴史を食べるという意味では宜なるかな。フランス料理ひいてはフランス料理文化に理解のある紳士淑女と共にどうぞ。

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