CAINOYA (カイノヤ)/四条河原町(京都)

鹿児島で国内外のフーディーを集めるレストラン「CAINOYA (カイノヤ)」が京都に移転。新進気鋭のレストランが集まる四条河原町「GOOD NATURE STATION」の2階に入居します。このレストランフロアが凄くって、当店に加え「タカヤマ(TAKAYAMA)」「VELROSIER (ベルロオジエ)」もミシュランの星を獲得しています。
店内への通路を何とかウェイティングバーっぽく仕立て上げ、開演までの間はウェルカムドリンクを楽しみます。西麻布「81」のようなアプローチと言えばイメージし易いかな。厨房のある店内からはBGMがガンガンに響いて来、何だよ超ちゃれえじゃんと思いきや、流れているのはエヴァの新劇場版のサントラで好感が持てました。
店内は厨房を望むカウンターが1列のみ。個室もあるようですが(要個室料)、カウンターで過ごしたほうが絶対に楽しいです。

塩澤隆由シェフは鹿児島県出身。おじい様が「甲斐乃家食堂」を、お父様が「かいの家」とう名で飲食店を続けてきており、シェフの代でイタリア料理店「CAINOYA (カイノヤ)」へと衣替えし、2019年12月にこの街へ。現在は「イノベーティブジャパニーズ」をテーマに気炎を吐きます。ルブタンのスニーカーがトレードマークです。
ディナーはお料理だけで4万円、ペアリングを付けると6万円を余裕で超えてくる強気の姿勢です。なのですが、緊急事態宣言中のランチショートコースが好評を博したため、宣言解除後も金・土・日・祝のランチ限定でドリンクペアリング付き3万円程の試みが続いています。やっぱ6万円超はどんなに美味しくたって躊躇する金額だよなあ。
シェフは「ガストロバック」という減圧加熱調理器を多用するため、その仕組みを理解してもらえるよう、最初に1枚のレタスが供されます。何でも減圧して加熱することで水分が一旦抜けて細胞がパカっと開いてそこに出汁とか投入するとシュっとスポンジみたいに吸い込むみたいです。詳しいメカニズムはぐぐってください。
続いて安納芋と菊芋のスープ。芋のカリっとした食感と若干の土臭さが魅力的。トリュフの香りもわざとらしくなくてちょうど良い。
こちらは京芋のスープ。中にはホタテが沈んでいるのですが、ガストロバックを用いてベーコンの塩気と旨味を注入しています。かといって企画モノというわけでは決してなく、上手に香ばしさが演出されていました。
スペシャリテの「ガストロバック手毬SUSHI」。減圧加熱調理のテクニックを駆使した鮨なのですが、これはもう鮨というか鮨の形状をした料理ですね。右からフグ、エビ、コハダ、マグロなのですが、いずれも明文化するには情報量が多すぎるため割愛。ひと言で述べれば「奇抜だがどれもきちんと美味しい」です。
ブリのエキスを一旦抜いて、再び戻してというややこしい工程を経て作られるブリ大根。文句なしに美味しいのですが、一旦抜いて再び戻すことに何かメリットはあったのだろうか。
スペシャリテの「クリスタルサラダ」。このサラダは素晴らしいですねえ。何よりもまず、見た目が美しい。また、野菜のひとつひとつのポーションが大きくて、いま何を食べているのかがハッキリ理解できるのが良い。ブラスのガルグイユも素敵なのですが、ひとつひとつの野菜が小さすぎて正直何食ってるかようわからんくなって来るもんな。
メインはステーキ。島根の経産牛推しの牧場の肉を用いているそうで、なるほど深みというか渋みというか、しっかりとした赤身の食べ応えが感じられます。脂も適度に入っていてシリアスすぎないのが良いですね。付け合わせの野菜も絶品で、先の「クリスタルサラダ」の延長戦とも言うべき美味しさでした。
〆の炭水化物にピチ。トスカーナの郷土料理であり、讃岐うどん的な麺です。それを圧力鍋で茹でまさに讃岐うどん状態。モッチモチの食感で咀嚼に咀嚼を重ねても弾力が残る食べ応え。ソースは仔羊のラグーのアマトリチャーナ。すげえ旨い。
デザートはイチゴ特集。イチゴにも減圧加熱しているのかなあ、向こうが透けて見えそうな外観です。鮮やかな色合いと食感が失われているように感じたので、イチゴはイチゴのままのほうが私は好きかもしれません。
トンカ豆をきかせたチョコと鏡餅に見立てたお茶菓子。シェフは料理に集中しているというか何というか、結構な強面で若干ピリついた雰囲気なのですが、こうした諧謔的な面もあるのです。
マイティーリーフのお茶で〆。ごちそうさまでした。

前述の通りお会計は3万円。イノベーティブだしスニーカーはルブタンだしガストロバックだしで企画モノのレストランかと斜に構えながらお邪魔しましたが、どストレートにすげえ美味しかった。これはいい、すごくいい。これだけ美味しくアルコールのペアリングもついてこの支払金額はリーズナブル。あまりに食事としての完成度が高すぎてもうランチでいいじゃんと満足してしまうのが玉に瑕。でもなあ、やっぱフルパワーのディナーも試してみたいなあ。

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