洋食 おがた/京都市役所前

京都市役所前駅から歩いて5分ほどの住宅街にある「洋食 おがた」。洋食発祥の地とも言われる京都でトップクラスの人気を誇る実力店。ランチであっても予約の1か月待ちは当たり前であり、ミシュランのビブグルマンを受賞。食べログでは百名店に選出されています。
店内は厨房を取り囲むカウンター席が10席ほどに、テーブル席がいくつか。カウンター席といっても非常にゆったりとした席間隔であり、アクリルボードに入店時の手洗い必須と感染症対策は万全です。

緒方博行シェフは熊本県出身。ハウステンボス内の超高級ホテル「ホテルヨーロッパ」などで腕を磨き、京都「ビストロセプト」の料理長として名を馳せたのち、独立。
ランチに付随する野菜スープ。これが旨くって、野菜の甘味がたっぷりの優しい味わい。ミネストローネのトマト抜きと言えば雑過ぎる説明ですが、なんとも滋味あふれる味わいで、身体がポカポカしてきました。
シンプルなサラダも美味しいですねえ。なんでも当店はシェフ自ら足を運んで出会った安心安全な素材を肝としているそうで、こちらのお野菜も地元産。野菜の味が濃くMPが回復しそうです。
一番人気のセットメニュー「滋賀サカエヤさん熟成牛と鹿児島福留小牧場サドルバック豚 特製ハンバーグ」が到着。2,850円です。エビフライとカレーの追加はそれぞれ750円と550円。
主題のハンバーグ。おおー、この肉は美味しいですねえ。ゴリゴリと歯ごたえのある牛肉とジューシーな豚肉が響き合い、唯一無二の美味しさです。ハンバーグというよりも肉そのものを愉しむ歓び。デミグラスソースも絶品で、ほんのりビターでコクがあり、1滴も余さず舐めつくしたいほどのスパチュラ案件でした。
750円で追加したエビフライは3本体制。え、このクラスの洋食店で3本追加で750円って安くない?ハンバーグからは一転、優しい味わいのエビフライであり、中目黒「キッチンパンチ」のそれとはまた違った美味しさです。付け合わせのマッシュポテトやタルタルソースも手抜き無しに高品質。
ライスは大・中・小の3サイズのお茶碗をお持ちくださり、好きなサイズで頂くことができます。この白米も美味しくって、ひと粒ひと粒に存在感があり、八尾「とんかつマンジェ」のライスを思い出し、ああ、やっぱり大にすれば良かったと、色気を出して中サイズを選択した自分を呪いました。
550円で追加したミニカレー。玉ねぎたっぷりで甘味溢れる、と思いきや、途中からピリピリと屹立するスパイスを感じます。それでも肉塊などは含まれていないので、サラっとカレー茶漬け的なノリで追加すると良いでしょう。
食後のお茶で〆。ごちそうさまでした。以上を食べ、お会計は4,250円。ハンバーグランチとしては一見お高く見えますが、支払金額に見合ったクオリティであり、とりわけあの肉とソースは又とない味わいです。

次回はディナーで訪れお酒と共にフルコースでお願いしようかな。いや、アラカルトで好きなものを好きなだけ注文するのも捨てがたい。「サスエ前田魚店」から直送の魚介のフライにも憧れる。

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京都はとにかく和食がリーズナブルですね。町全体の平均点が高いのはもちろん、費用対効果も良いことが多い。その文化に影響を受けてか、欧米系のレストランにも目が離せない魅力がある。
JR東海「そうだ京都、行こう。」20年間のポスターから写真・キャッチコピーを抜粋して一冊にまとめた本。京都の美しい写真と短いキャッチフレーズが面白く、こんなに簡潔な言葉で京都の社寺の魅力を表せるのかと思わず唸ってしまいます。

レガーロ (REGALO)/参宮橋

参宮橋駅から歩いてすぐの「レガーロ (REGALO)」。炭火焼きとパスタが自慢のイタリアンレストランです。客単価4万円の焼肉屋「いぶさな」のお向かいで、緑のアーチをくぐって地下へと降りていきます。ケータイの電波が殆ど通じないのでネット命の方はご注意を。
店内はカウンターが5席ほどにテーブル席が20ほど。客席に比してスタッフの数が多く、快活で体育会系な雰囲気です。

小倉知巳シェフはイタリアで修業の後、「アロマフレスカ」系列などで腕を振るい、2008年に独立。2010年に参宮橋へと移転し、2017年よりミシュラン1ツ星を維持しています。
この手のレストランにしてはアルコールが安く、フランチャコルタなどは7千円から始まります。グラスワインはもちろんペアリングの用意もあり、3杯3,800円と悪くない価格設定です。
まずはフリッタータ。いわゆるオムレツ的なふわふわ素材であり、中にはトラフグがギッシリ。刺身として食べるよりも旨味が強く感じられ、もしかするとフグは熱を入れた方が美味しくなる素材なのかもしれません。
牡蠣のサルタート。焦げ目がつくまで思い切りよく炒められており、旨味がギュウギュウに閉じこもって抜群に旨い。赤玉ねぎのマリネやラルド(脂の生ハム)など、料理というよりも素材に近い組み合わせではありますが、記憶に残る味わいでした。
パンは4種から2種を選ぶことができ、私は2種ともフォカッチャで、片方は玉ねぎ、もう片方はパルミジャーノがトッピングされています。パンというよりもオカズに近い味わいであり、これ単体で料理として成立していました。
白子のスパゲッティ。つるんとした口当たりのパスタとトロりとした白子の組み合わせがナイス。シブレット(ハーブ)の香りも心地よく鼻に抜けていきます。
ウニと九条ネギのタリオリーニ。ウニにつき、イタリアンではドロドロのクリーム系に起用されることが多いですが、当店ではサッパリとした仕上げ。ウニの塩気とネギの青っぽい風味と共に、どことなく和食のような印象を受けました。
お魚料理はヒゲダラのインズィミーノ。お野菜と一緒に煮た(?)料理であり、スープ状態になったトマトの酸味が心地よい。
お肉料理は香川県産オリーブ牛の炭火焼き。シンプルにバリっと焼き上げ、余計な調理・調味の無い、肉そのものの美味しさを愉しむひと皿です。付け合わせのレンコンもシンプルな仕上げであり、素材感を大切にしたメインディッシュでした。
デザートは数種類から選ぶことができ、私は「黒いティラミス」をチョイス。メレンゲとチョコレートアイス(?)がバリバリで、それほどティラミス感はありませんでしたが、スイーツとしては充分に美味しかった。
食後のお茶にはコーヒーはもちろん、紅茶やハーブティー、さらには食後酒まで選択することができ、店主はきっと楽しく飲み食いすることが大好きマンなのでしょう。これは料理人にとって最も大切な才能である。
以上を食べ、ふたりで1本飲んでお会計はひとりあたり1.5万円。食事のクオリティを考えれば悪くない費用対効果です。テンポが悪く間延びする場面もありましたが、あれだけの客席数を一気に回し、それでいてこの価格に抑えてくれているのだから仕方ないでしょう。2019年にはセカンドラインの「AUDACE(アウダチェ)」を中目にオープンしているので、今度はそちらにお邪魔してみようかしら。

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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。

日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。

新三浦(しんみうら)/天神(博多)

博多名物の水炊きをメインコンテンツとして福岡県内に数店舗を展開する「新三浦(しんみうら)」。1910年創業の老舗であり、ランチタイムには行列(ファミレス記帳方式)が生じるほどの人気です。今回はその天神店にお邪魔しました。
我々は予約をしてから訪れたので待つこともなくスイスイです。ただし予約ができるのはコース料理からであり、ランチの定食や親子丼などは当日ウォークインで訪れて注文する必要があります。
今回はランチの「梅コース」を注文。まずは鶏皮の酢の物。酢の物といってもタレが濃厚で、ぐんにゃりとした棒棒鶏のようで美味しい。
蒸し鶏のサラダ仕立て。ご覧の通り美味しいのですが、これはサラダというより鶏肉です。ここまで所要時間5分とオペレーションがちょっぱやです。
主題の水炊き。既に火が通った調理済の鍋がスタンバイ。こちらをリヒートして頃合いを見てセルフで頂きます。
まずはスープのみ。「博多元気一杯!! (はかたげんきいっぱい)」のように真っ白なスープでちょっとビビりますが、味わいは清純そのもの。何でも鶏のガラを10時間以上炊き上げたスープと、新鮮な鶏のぶつ切りを柔らかく炊いた透明のスープを混ぜ合わせて作り上げるそうです。
肝腎の鶏肉は火が通り過ぎているのか、ボソボソであんまり美味しくありません。ケンタッキー・フライド・チキンのように骨が多く食べづらく、誤って噛みこんで歯が折れてしまわないかヒヤヒヤしてしまいました。
肉よりも野菜のほうが美味しいですね。コラーゲンたっぷりの白濁スープに野菜の甘味が溶け込んでよりマイルドな味わいに。
当該スープで雑炊にするのですが、これは絶品。畢竟、水炊きとはスープであると思い知らせる味わいです。
お会計は食事だけでひとりあたり3,700円。うーん、ちょっと高いかなあ。その支払金額であればもっと美味しい食事はあるでしょうというのが正直な感想です。一方で2千円かそこらの「水だき小鉢定食」や「親子丼」にも看板のスープが付帯するので、無理に鍋コースにする必要は無いのかもしれません。ランチタイムにウォークインでどうぞ。

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東京豚饅(とうきょうぶたまん)/恵比寿

大阪土産としてカルト的な人気を誇る「551蓬莱」。その創業者である羅邦強の孫、ムッシュ羅直也が直伝のレシピを再現し、2021年秋に豚饅専門店を恵比寿の地にオープン。ちなみにムッシュ羅直也とは恵比寿中心に飲食店事業を展開する「MERCER OFFICE」の代表とのこと。「マーサーカフェ」とか「マーサーブランチ」とかの会社ですね。
開店当初は行列の長さがとんでもないことになりパニック状態だったそうですが、今は整理券方式に落ち着き、割とスムーズに購入できるようになりました。私もたまたま通りがかった際に、20分後受け取りのタイミングだったので、20分ぐらいならアトレで時間でも潰すかと即購入。元々は豚饅だけでなく様々な種類の点心やイートインなども企画していたそうですが、あまりの人気沸騰ぶりに現在は豚饅のみの提供です。
無事購入。なるほどロゴというか何というか、色々「551蓬莱」に酷似しています。ところで色々調べたところ、当店は「551蓬莱」とは何の関係も無く、平たく言うとパクり疑惑が強いそうです。例えば当店の電話番号の末尾は「551」なのですが、これについても全くの偶然だそうです。ちなみに「551蓬莱」の由来は創業当時の店の電話番号が「551」だったからですこれ豆な。
おお、見た目は「551蓬莱」そのものであり実に美味しそう。価格は1個200円で、「551蓬莱」が1個190円であることを考えると誤差と言って良いレベルでしょう。「551蓬莱」と同様にネタ(皮)の鮮度に拘り、発酵の度合いなどに色々と気を使っているようです。
味につき、食べ比べれば多少の違いは感じられるかもしれませんが、ひとつだけ出されてさあどっちの店のでしょう?と問われれば全くわからないレベルであり、つまりそれぐらい美味しいです。カヤク(餡)においては豚肉と玉ねぎだけでどうしてこんなにも美味しくなるのかと不思議に思えるほど旨かった。
当店の出店以前に「551蓬莱」は「蓬莱本館」や「蓬莱別館」とも権利関係で揉めており(ルーツは同じ)、つまるところパテント管理がウィークポイントな会社なのかもしれません。私もこの豚饅をリバースエンジニアリングして埼玉あたりに出店してみようかしら。

いずれにせよ、東京でこのクオリティの豚まんが1個200円で食べることができるのは大いにアリですね。色々と揉める部分はあるのかもしれませんが、私は美味しく頂けました。私の正義感や味覚などその程度である。

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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
恵比寿を中心に話題店が整理されています。Kindle Unlimitedだと無料で読める。それにしては圧倒的な情報量。スマホやタブレットに忍ばせておくと出先で役立ちます。

かに道楽 本店/心斎橋

2020年末の親族会は「網元(あみもと)」という「かに道楽」グループの中でワンランク上の扱いをされる店舗を訪れましたが、2021年末の会は「かに道楽」グループの総本山である本店にお邪魔しました。
道頓堀沿いにある7階建てのビル全部が「かに道楽」。300を超える席数を全て予約で埋めるという驚くべきカニ料理専門店です。掘りごたつ式の個室もあり広々として快適(写真は公式ウェブサイトより)。それでいて個室料を取らないという気前の良さです。
酒が安い。ビールや焼酎、日本酒、ハイボールなど殆どが1杯500円かそこらです。せっかくなので当店オリジナルの焼酎をボトルで注文。1本1,700円と良心的であり、セット代なども取ったりはしません。きっと当グループの経営陣は酒飲みの心がわかる酒飲みなのでしょう。深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いているのだ。
即本番でカニ。「網元(あみもと)」では全国に展開するグループ40店舗の中では取り扱えない最上位クラスのカニを用いていましたが、なるほど「かに道楽」のクオリティは中くらいに感じました。中くらいというのは決して悪口ではなく、冬に温泉旅館に泊まると出てくるカニ品質という意味です。
お造りは脚の焼霜、むき爪の霜降、肩肉、白醤油浸しの4種。これはめちゃんこ美味しいですねえ。カニの甘味と旨味が直線的に伝わって来、わかりやすい仕様です。殻を持ってホジホジしなくて良いのも便利です。
茶碗蒸しにもたっぷりのカニが。カニあんかけチャーハンの美味しい部分だけを食べるかのような背徳感。
具足煮。あたりまえですが、ずっとカニです。ちょっと飽きてきた。福井「川㐂(かわき)」のデジャビュな感覚。
かにしゃぶは小鍋での提供であり(コロナのせい?)、温泉旅館感が強まります。
天ぷらはイマイチ。油が傷んでいるのか、衣がうげぇと胸に焼ける。一万円を超えるコース料理でこれは無い。料理人の怠慢と言って良いでしょう。
かに寿司は殻をホジホジする必要はなく、その割にたっぷり身が詰まっているので嬉しい。
アイスクリーム(?)もイマイチで、乳脂肪のコクに乏しい。バイトの女の子がその場で抹茶を点てソースとしてアイスにかける謎パフォーマンスも闇が深い。

以上のコースで税込12,100円。サービス料は無し。これに前述の酒代が乗って来ます。うーん、1万円を超える料理としては完成度が今ひとつに感じます。もちろんカニという高級食材を多用しているので割高になってしまうのは仕方がありませんが、それにしてもあの天ぷらに係る調理はカニに対する愛を感じられず、単なる作業に陥っているように思えました。

カニに、愛を。

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