VELROSIER (ベルロオジエ)/河原町(京都)

河原町は高島屋お隣のグルメビル「GOOD NATURE STATION」2階に入居する「VELROSIER (ベルロオジエ)」。同フロア「タカヤマ(TAKAYAMA)」のお向かいさんです。ミシュラン1ツ星。
窓は無くお昼でも真っ暗な店内。代官山「abysse(アビス)」的な内装で、せっかくなのでインテリアコードに合わせて黒いお洋服で訪れると良いでしょう。キッチンが舞台のように映えてカッコイイ。

岩崎祐司シェフはホテル系の中華料理店で腕を磨き、独学でフランス料理を学んだのち、2014年に苦楽園に「VELROSIER(ベルロオジエ)」をオープン。芦屋マダムの溜まり場として好評を博したのち、2019年に京都に移転オープン。
私はこの後に運転があったので、飲み物は温かい中国茶を注文。いずれも千円かそこらであり、このクラスの中華料理店としては良心的。ワインリストも見せて貰いましたが、値付けにつき高くも無いが安くも無いといったところでした。
まずは上湯スープから。ゴボウの香りが強く移されており、香り良し味良しの逸品です。ガンモ(?)の中にはギンナンが入っている。
焼売の皮をタルト生地に見立て、栗かぼちゃを詰め込み紹興酒に漬けた甘エビをトッピング。卵黄のソースも面白く、まるでフランス料理のアミューズのようです
こちらは中華風のコロッケ。大和芋を始めとするいろんな芋の中に豚のミンチ肉が組み込まれ、カラっと揚がっています。
土台は大根餅であり、その上に聖護院大根、プーアル茶で燻製したサンマと続きます。マヨネーズで和えた大根おろしも取っ付きやすい味覚であり、色んな味がするものの万人受けする美味しさでしょう。
写真からはわかり辛いですが、底には金時にんじんのムースと生雲丹が敷き詰められ、そこへ牛すじと春菊を伴った、とろみのある上湯スープが流し込まれます。カシューナッツが食感にリズムを与え、鶏のお出汁の泡も気品あふれる味わい。かなりややこしい料理であるはずなのに完璧に味覚が調和しているのが素晴らしい。
スプーンで食べる餃子。ニラの茶碗蒸しに豆板醤で味付けした豚ミンチ肉、揚げた餃子の皮とアイスパウダー状のニラをトッピングと複雑怪奇な料理なのですが、確かに味は餃子であり、しかもかなり旨い餃子であった。
お魚料理はサワラ。低温調理した後に皮目はバリっと炙り、食感に変化を与えます。付け合わせには聖護院かぶらにカリフラワー、景気づけにカラスミ。ソースは2種で、白インゲンを発酵させたものとXO醤のソース。どの味覚を切り取っても美味しく、スケール感のあるひと皿でした。
パンは中華風で、ほんのりと甘くお茶の香りがする(ような気がする)。先の多彩なソースを余すことなく楽しめました。
中華料理っぽく餡かけモノ。白子のフリットに娃々菜(わわさい)という小さな白菜のロールキャベツを並べ、上海ガニの餡かけを流し込みます。これはもう、問答無用に美味しいですね。しかも7千円のランチコースで上海ガニまで楽しめるとは感謝しかありません。
お肉料理は京都ポーク。肉そのものはシンプルな調理で素材をダイレクトに楽しむことができます。ソースはやはり2種で、百合根のソースに胡椒のソース。後者がスパイシーというか何というか、若干ウスターソースっぽい暴力性を感じる味覚で面白かったです。
〆の食事に鴨出汁のラーメン。やはりスープがべらぼうに旨いですねえ。清澄な仕立てながら味覚に奥行きがある。自家製のワンタンやミンチ状のポルチーニなど、スープと麺以外にも見どころの多い1杯でした。
デザートは杏仁豆腐。なのですが、洋ナシやらジュレやらココナッツミルクのパウダーやらオシャレなひと皿です。量もたっぷりで、迫力のある締めくくりでした。
お茶菓子(?)として黒ごま団子。揚げたててアツゥイ。ゴマの豊潤な管理に品の良い餡の甘味。最後の最後まで見事である。
食後のお茶はコーヒーか中国茶の2択で後者を選択。冒頭にお願いした中国茶とはベクトルの異なる風味であり、爽やかにフィニッシュです。

7千円のランチコースに温かい中国茶を注文し(食後のものはコースに込み)、税サを含めてひとりあたり1万円を切りました。これは尊い費用対効果。東京の金満主義的な中華料理店であれば倍近く請求されることでしょう。

加えてヌーベル・シノワとはまた違う、前衛的なフランス料理風のコース仕立てなのが楽しいですね。まさに足し算の料理であり、ここまで味を重ね、それでいてくどくない料理は唯一無二のもの。目黒「サエキ飯店」などとは真逆の世界観ですが大いにアリ。旅行者が京都で中華料理を食べるのは抵抗があるかもしれませんが、話の種に是非。オススメです。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。