祇園 呂色 (ぎおん ろいろ)/京都

祇園のど真ん中のビル5階にある「祇園 呂色 (ぎおん ろいろ)」。芦屋「コシモ・プリュス(Koshimo Plus)」で成功を収めた小霜浩之シェフの第2章であり、オープン初年度でいきなりミシュラン1ツ星を獲得。食べログではブロンズメダルを受賞し、百名店に選出されています。
「コシモ・プリュス(Koshimo Plus)」は結構な大箱であり、場面でオペレーションがグダグダでしたが、こちらはカウンター10席のみの小さなお店であり、厨房とサービスの息もピッタリ。司会進行につきパーフェクトです。ひと皿ごとにシェフが「どう?美味しい?」「見てよこの百合根、すごいでしょ?」と、楽しそうに仕事に取り組んでいるのがとても可愛い。

ワインはペアリングでソムリエにお任せ。シャンパーニュも含んで8千円ほどであり、この手のレストランとしては良心的な価格設定です。
「温石」ということで、お凌ぎ的なポジションのひと皿。与謝野米というありがたいお米を用いたリゾットであり、白米ながらコクの深い味わい。的矢かきの旨味にトマトやレモンの酸味が調和し、先頭打者ツーベースヒットです。
粒の大きいキャビアを豪快に盛り付けます。塩味は抑えられておりシャンパーニュにとても良く合う。百合根の円みのある甘さにサワークリームの優しい酸味と、シンプルなひと皿ながら完璧とも言える構成です。
サバは済州島より。脂がノリノリでありジューシーな味覚。その脂が茄子の土っぽさにもよく合って艶っぽい美味しさです。
鰻はカリっと焼き上げて、セルフでクレープに巻き巻きします。空心菜にショウガのソース(?)やたっぷりの木の芽などジャンルレスな立ち振る舞いですが、旨けりゃなんでもいいじゃん的な開き直りを感じる美味しさです。
パンはアオウミガメの甲羅のようなサイズのものを10席皆で分け合います。バターたっぷりのブリオッシュであり、乳製品のコクがビンビン。
ウニは菊芋のペーストと共に。シンプルな組み合わせですが文句なしに美味しい。イマドキのフレンチは何でもかんでもゴッテゴテにしがちですが、当店は緩急織り交ぜながら味覚を組み立てていくのが上手いです。
3日間かけて作る和牛のダブルコンソメスープに、目の前でサイフォンを用いてトリュフの香りを移します。やんごとないスープであり、旨味というか何というか、フランス料理のロマンが詰まった液体です。自宅の冷蔵庫に常備したい。
アマダイのウロコ焼き。パリっとサクっと耳に残る心地よい食感。ペースト状にした紅芯大根やフランボワーズ風味のビネガーなど色んな味がするオシャレなひと皿です。
スダチのグラニテでお口直しをしつつ、、、
メインは石垣牛。思ったほど和牛和牛しておらず脂も軽快で、終盤であってもスイスイと食べ進めることができます。白眉は赤カブ。桃やリンゴのようなニュアンスがあり、これがカブなのかと衝撃を受ける美味しさです。
〆のラーメン。スープには京都のブランド鴨「七谷鴨」を用いており、エレガントでありながら旨味が爆発し、肉そのものは存在しないのに肉よりも肉の味がします。先のコンソメに引き続いて自宅に常備したい。
デザートはアップルパイにアールグレイのアイスクリーム。素朴な組み合わせではありますが、いずれも王道の美味しさです。
もうひとつアイス。チョコレートのアイスクリームにトリュフの風味を与え、ホワイトチョコレートをエスプーマしてハイカラな味わい。
お茶菓子は焼きたてのフィナンシェ。見た目は地味地味ですが正統派の美味しさであり、フィナンシェとして最高峰のクオリティでしょう。
ハーブティーで〆。ごちそうさまでした。

お料理が税サ込で2.4万円にワインペアリング8千円を加えてお会計はひとりあたり3.2万円ほど。これだけの食事とワインを楽しんでこの支払金額はリーズナブル。料理の素晴らしさはについては既に述べましたが、ワインのペアリングも練られており、まるで料理の一部かのようにしっくりきます。お酒を嗜む方は必ずワインのペアリングも併せて注文しましょう。

何より皆、楽しそうに仕事をしているのがいいですね。「naoto.K(ナオトケイ)」然り、円熟味を増した料理人は儲けよりもゲストの笑顔を直でゲットする方向に向かうのかもしれません。

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