店内は厨房を取り囲むカウンターが10席ほどにテーブル席がいくつか。2階にはお座敷もあるようで、天ぷら店としてはかなり大きいサイズでしょう。
「まずはおなかを温めて」と、キノコのすり流しがやってきました。複数のキノコを用いており滋味豊か。お出汁も結構きいていて食べ応えあり。
グジ(甘鯛)とナスを揚げて甘酢あんかけに。軽い揚げ衣に優しい酸味がよく合う。ホクホクのグジの身とジューシーなナスの取り合わせもグッドです。
お造りはフグにイカにカツオ。フグとイカは3日間熟成させており、じっとりと旨味が増しています。
サワラは皮目をバリっと炙って厚切りに。ムシャムシャとした食感にグラデーションを感じる火入れがセクシーです。
お椀もお出汁がかなりしっかりとしており「京料理は薄味」なんて誰が言い出したんだ。ひろうすには解禁されたばかりの松葉ガニが詰まっており、箸を入れるとカニの旨味が炸裂。本日一番のお皿でした。
蒸し物(?)としてネギトロのお寿司(?)がやってきました。もちろん美味しいのですが、なぜここでネギトロを蒸すのかという困惑モード。
せいろは二段重ねになっていて、下段には鰻のお寿司。もちろん美味しいのですが、なぜここで(ry茶碗蒸しは冷製で。コッペガニ(セコガニ)がたっぷりと盛り付けられており、茶碗蒸しというよりも四捨五入するとカニかもしれません。日本酒に良く合う。
さてお待ちかね、天ぷらに入ります。まずはエビにレンコン。いずれも軽い衣で素材が活きるタイプです。
続いてタラの白子に安納芋。白子はドロッドロのトロトロでありアチチでクリーミー。安納芋はまったりとした舌ざわりで濃密な甘味が特長的です。
以上、天ぷら終了です。え!?これだけ!?いや、確かに天ぷらに至るまでの品数は多かったですが、まさか天ぷらがこれだけとは。。。ネット上の口コミを確認すると、確かに皆、「天ぷらの出ない天ぷら屋」と苦笑いしていました。
〆の炭水化物は天丼、ではなくヨモギうどんでした。美味しいのですが、コースの〆が天丼やら天茶やらでない天ぷら屋は初めてで困惑する。
炭火で炙った自家製のみたらし団子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1.5万円ほど。おお、これだけ色々食べてこの支払金額はお値打ちです。もちろん天ぷら屋なのにあまり天ぷらが出ないという戸惑いはありますが、最初から日本料理のつもりで訪れれば何も問題はありません。にぎりの出ない鮨屋「玉寿司」を思い出したランチでした。
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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
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- 板前てんぷら成生(なるせ)/新静岡 ←清濁併せ呑んで天ぷら業界の未来を指し示す。
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- 天冨良よこ田/麻布十番 ←大将しゃべりすぎ。味は確か。リーズナブル。
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- 楽亭/赤坂 ←我が心の天ぷらランキング1位。惜しくも他界。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。